[池袋] 相続人の廃除・欠格とは?相続権を失うケースと相続税への影響#相続税#税理士#池袋
相続税の申告や遺産分割を検討する際、家庭裁判所の判断によって相続権を失う「推定相続人の廃除」や、法律上当然に相続権を失う「相続欠格」という制度が問題になることがあります。これらは相続放棄とは異なる仕組みであり、代襲相続の有無や相続税の基礎控除額の計算にも影響すると考えられています。本記事では、相続人の廃除・欠格の要件や手続きの流れ、代襲相続との関係、相続税実務上の注意点について整理します。
目次
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相続人の廃除・欠格とは―相続放棄との違いを踏まえた制度の全体像
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相続放棄との違い
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制度が設けられている趣旨
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相続欠格の要件―法律上当然に相続権を失うケース
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欠格事由の具体的な内容
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欠格は手続きなしに当然に生じる
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推定相続人の廃除の要件―虐待・重大な侮辱・著しい非行
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虐待・重大な侮辱・著しい非行の考え方
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廃除の対象は遺留分を有する推定相続人に限られる
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廃除の手続きの流れ―生前廃除と遺言による廃除
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生前廃除の申立てと審理のポイント
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遺言による廃除と遺言執行者の役割
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廃除の取消しと審判が確定するまでの注意点
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廃除の取消し(民法894条)
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立証の難しさと審理に要する時間
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代襲相続との関係―欠格・廃除と相続放棄の違い
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欠格・廃除の場合は子が代襲相続する
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相続放棄には代襲相続がない
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相続税の計算への影響―基礎控除額と非課税枠の考え方
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法定相続人の数の計算方法の違い
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生命保険金・死亡退職金の非課税枠との関係
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遺留分との関係と相続実務・税務上の留意点
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欠格・廃除された人は遺留分も失う
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専門家との連携が重要な場面
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相続人の廃除・欠格とは―相続放棄との違いを踏まえた制度の全体像
民法は、一定の重大な事情がある推定相続人について、その相続権を失わせる制度を設けています。代表的なものが「相続欠格」と「推定相続人の廃除」です。いずれも、本来であれば法定相続人となるはずだった人が、相続開始の時点で相続人としての地位を持たないことになる点で共通していますが、要件や効果の生じ方には違いがあるとされています。
相続欠格は、被相続人や他の相続人の生命を侵害しようとしたり、遺言に不正な干渉をしたりといった、法律に定められた重大な事由に該当した場合に、特段の手続きを経ることなく法律上当然に生じるものと理解されています。これに対して推定相続人の廃除は、虐待や重大な侮辱、著しい非行があった場合に、被相続人自身が家庭裁判所に請求し、審判によって相続権をはく奪してもらう制度です。
どちらも「特定の推定相続人に遺産を渡したくない」という被相続人や周囲の意向と関わる場面で登場しますが、要件を満たすかどうかの判断は慎重に行う必要があると考えられており、単に関係が悪いという理由だけでは認められにくい制度とされています。相続税の実務においては、こうした制度の存在自体を知らないまま相続人の範囲を確定してしまうと、申告内容に誤りが生じるおそれもあるため、基本的な仕組みを理解しておくことが重要と考えられています。
なお、特定の推定相続人に遺産を渡したくない場合の方法としては、欠格や廃除のように相続権そのものをはく奪する手段のほかに、遺言によってその推定相続人の相続分をゼロと指定する方法も考えられます。もっとも、遺留分を有する推定相続人については、遺言による指定だけでは遺留分侵害額請求権まで奪うことはできないため、遺留分を含めて相続権を失わせたい場合には、廃除の手続きを検討する必要があると考えられています。反対に、そもそも遺留分を持たない推定相続人であれば、遺言による相続分ゼロの指定だけで実務上の目的を達成できることが多く、あえて廃除の手続きを取る必要性は乏しいとされています。
実際の相続税申告の現場では、廃除や欠格が問題となる事案は決して多くはないとされていますが、家族関係が複雑な相続や、生前に深刻なトラブルがあった相続においては、これらの制度の適用が検討されることがあると考えられています。相続人の範囲をめぐる争いは、遺産分割だけでなく相続税の申告内容にも直接影響するため、早期に事実関係を整理しておくことが望ましいとされています。
また、被相続人の生前に、推定相続人本人が「相続をしない」といった意向を口頭で示していたとしても、それだけでは法的な効果は生じず、正式な相続放棄や、欠格・廃除の手続きを経なければ、相続人としての地位は失われないと考えられています。相続に関する話し合いの内容と、法的な手続きの有無とを混同しないよう注意することが重要とされています。
相続税の申告書自体には、廃除や欠格に該当する事実を記載する特別な欄が設けられているわけではないと考えられていますが、相続人の範囲を税務署に対して明確に説明できるよう、廃除の審判書の写しなど、裏付けとなる資料を申告書に添付しておくことが実務上望ましいとされています。
ここでいう「推定相続人」とは、仮に現時点で相続が開始した場合に相続人となるべき人を指す言葉であり、被相続人の生存中に用いられる概念であると理解されています。相続が開始した後は、推定相続人であった人が実際に相続人となるかどうかが、欠格や廃除の有無によって左右されることになります。
相続放棄との違い
相続放棄は、相続人自身の意思で家庭裁判所に申述する手続きであり、放棄をした人は代襲相続の原因にならないとされています。これに対して欠格・廃除は、本人の意思にかかわらず生じる、あるいは被相続人側からの請求によって生じるものであり、後述のとおり代襲相続の扱いも異なると考えられています。放棄は自由に選べる手続きである一方、欠格・廃除は法律上の要件を満たす必要がある点も大きな違いといえます。加えて、放棄はプラスの財産・マイナスの財産のいずれも一切承継しないことを目的として行われることが多いのに対し、欠格・廃除は被相続人や他の相続人との関係性そのものに起因する点でも性質が異なると理解されています。また、放棄をするかどうかは相続人自身が単独で判断できるのに対し、廃除は被相続人からの請求が前提となるため、相続人の意思だけで完結しない点も特徴的であるとされています。実務上、相続人の中に放棄をした人と欠格・廃除に該当する人が混在するケースでは、それぞれの扱いの違いを踏まえて、相続人の範囲を丁寧に整理する必要があると考えられています。
制度が設けられている趣旨
相続は、被相続人の財産を一定の身分関係にある人に承継させる制度ですが、被相続人の生命を侵害しようとした人や、遺言の内容に不正に介入した人にまで財産を承継させることは、相続制度の趣旨に反すると考えられています。また、虐待や重大な侮辱などによって被相続人と推定相続人の信頼関係が著しく損なわれている場合に、被相続人の意思を尊重して相続権をはく奪できるようにすることも、廃除制度の目的の一つとされています。いずれの制度も、被相続人の意思や公平の観点と、推定相続人の身分に基づく期待とのバランスを図るために設けられていると理解されています。被相続人の最終的な意思をどこまで尊重するかという観点と、法律関係の安定を図る観点との調整を図っている制度であるとも整理されています。この点は、遺言によって自由に財産を処分できる範囲(遺言の自由)と、一定の相続人に最低限の取り分を保障する遺留分制度との関係を考えるうえでも、参考になる視点とされています。
相続欠格の要件―法律上当然に相続権を失うケース
相続欠格に該当する事由は、民法に列挙されていると理解されています。代表的なものとして、故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を死亡させ、または死亡させようとして刑に処せられた場合や、被相続人が殺害されたことを知りながら、これを告発・告訴しなかった場合が挙げられます。ただし、是非の弁別がない場合や、殺害者が自己の配偶者・直系血族であった場合には、告発・告訴をしなかったことを理由に欠格とはならないとされています。
このほか、詐欺または強迫によって被相続人が遺言をすること、撤回すること、取り消すこと、変更することを妨げた場合や、逆に詐欺・強迫によってこれらの行為をさせた場合も欠格事由に含まれると考えられています。さらに、被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合も同様です。これらはいずれも、相続に関する被相続人の意思決定に不正に介入する行為であるという点で共通していると理解されています。遺言に関する欠格事由は、被相続人の最終的な意思を歪めることへの制裁という側面と、相続をめぐる公正さを確保するという側面の両方を持っていると考えられています。
相続欠格は、これらの事由に該当する事実が生じた時点で法律上当然に効力が生じるとされており、家庭裁判所の審判などの手続きを経る必要はないと考えられています。もっとも、実際に欠格に該当するかどうかで争いが生じた場合には、裁判所の判断を仰ぐことになるケースもあるとされています。
たとえば、遺産分割協議の場面で、ある相続人について欠格事由に該当する疑いが指摘された場合、他の相続人との間で見解が対立し、協議が進まなくなることもあると考えられています。このような場合には、欠格の有無を確認するための訴訟(相続人の地位不存在確認など)が提起されることもあり、結果が出るまでの間は遺産分割や相続税申告の手続きにも影響が及ぶ可能性があるとされています。
欠格事由に該当する行為は、いずれも被相続人の生命や意思決定の自由を著しく侵害する重大なものであるため、日常的な親子関係のトラブルや、経済的な援助を巡る意見の相違といった事情だけでは、欠格には該当しないと考えられています。欠格に該当するかどうかを判断する際には、刑事事件としての立件や有罪判決の有無なども、重要な手がかりになり得るとされています。
なお、相続欠格は相続に限らず、遺贈を受ける権利についても同様に失われると理解されています。すなわち、欠格に該当する人は、被相続人からの遺贈によって財産を取得することもできなくなるとされており、単に法定相続分を失うだけにとどまらない、広い範囲に影響が及ぶ制度であると考えられています。
なお、相続欠格に該当する事由の多くは、故意による重大な行為を前提としていると理解されています。そのため、過失による交通事故など、故意性が認められない行為によって結果的に被相続人が死亡した場合には、通常、相続欠格には該当しないと考えられています。
相続欠格の効果は、欠格事由に該当した本人についてのみ生じるものであり、他の相続人の相続分や地位に直接影響を及ぼすものではないと考えられています。欠格者がいたことによって生じる法定相続分の変動は、あくまで相続人の数が変わることの結果として生じるものと整理されています。
欠格事由の具体的な内容
相続欠格事由は、生命侵害に関するものと、遺言に対する不正な干渉に関するものとに大別できると考えられています。前者は被相続人や先順位・同順位の相続人の生命を侵害しようとする重大な行為であり、後者は遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿や、詐欺・強迫による遺言への介入が該当するとされています。いずれも故意による重大な非行が前提とされており、過失による行為は欠格事由には当たらないと理解されています。遺言書の一部を書き換えるといった行為も、内容や意図によっては偽造・変造に該当し得ると考えられているため、遺言の保管や取扱いには注意が必要とされています。実務上は、これらの事由に該当するかどうかが刑事手続きの結果と密接に関わることが多く、刑事事件の進行状況を踏まえながら相続関係を整理する必要が生じる場合もあると考えられています。これらの事由は限定列挙であると理解されており、条文に明記されていない事情によって、当然に欠格の効果が生じることはないと考えられています。
欠格は手続きなしに当然に生じる
相続欠格は、廃除のように家庭裁判所への請求や審判を経ることなく、欠格事由に該当する事実が生じた時点で当然に効力が生じるとされています。そのため、戸籍上は欠格者であることが公示されるわけではなく、遺産分割や相続税申告の場面で、欠格に該当する事実の有無が実務上問題になることもあると考えられています。争いがある場合には、訴訟等を通じて欠格事由の有無が判断されることもあるとされています。こうした性質上、遺産分割協議書の作成や相続税申告書への記載にあたっては、欠格に該当する相続人がいないかどうかを関係者間で確認しておくことが望ましいと考えられています。相続税申告の実務では、法定相続情報一覧図の作成時などにおいても、欠格に該当する事情がないかを関係者にヒアリングしておくことが有用と考えられています。欠格に該当する事実の有無をめぐって相続人間で争いがある場合には、遺産分割協議を進める前に、弁護士に相談し、必要に応じて訴訟等によって欠格の有無を明らかにしておくことが望ましいと考えられています。
推定相続人の廃除の要件―虐待・重大な侮辱・著しい非行
推定相続人の廃除は、遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、もしくは重大な侮辱を加えたとき、またはその他の著しい非行があったときに、被相続人が家庭裁判所に廃除を請求できる制度とされています。対象となるのは遺留分を有する推定相続人に限られるため、兄弟姉妹のように遺留分が認められていない者は、廃除の対象にはならないと考えられています。
「虐待」や「重大な侮辱」に該当するかどうかは、被相続人と推定相続人との関係性、行為の態様や頻度、被相続人が受けた精神的・身体的な影響の程度などを踏まえて、総合的に判断されるとされています。「著しい非行」についても、一時的なトラブルや価値観の相違といった程度では足りず、被相続人との家族的な信頼関係を根本的に破壊するような重大な行為が想定されていると理解されています。これらの要件はいずれも抽象的な文言で定められているため、実際の当てはめにあたっては、個別具体的な事情を丁寧に拾い上げていく作業が必要になると考えられています。
実務上、廃除が認められるかどうかのハードルは相応に高いとされており、単に被相続人との折り合いが悪い、疎遠であるといった事情だけでは、廃除の請求が認められにくい傾向にあると考えられています。裁判例の傾向としても、一時的な感情的対立や、被相続人側にも一定の落ち度がうかがえるような事案では、廃除の請求が認められにくいことがあるとされており、廃除を検討する際には、客観的な証拠に基づいて事実関係を整理しておくことが重要と考えられています。
また、廃除の請求が認められるかどうかは、個々の事案における具体的な事情の積み重ねによって判断されるため、類似した事案であっても結論が異なることがあり得ると考えられています。廃除を検討する際には、これまでの経緯を時系列で整理し、被相続人が受けた具体的な不利益や精神的苦痛を客観的に説明できるようにしておくことが実務上重要とされています。
また、廃除の請求は、被相続人自身の判断に委ねられているため、周囲の親族がいくら特定の推定相続人との関係悪化を訴えても、被相続人自身が廃除を望んでいなければ、廃除の手続きが進むことはないと考えられています。廃除はあくまで被相続人の意思に基づく制度であるという点も、押さえておくべきポイントとされています。
廃除の請求ができるのは被相続人自身に限られており、他の推定相続人や親族が、当事者に代わって廃除を請求することはできないと考えられています。被相続人が判断能力を失っている場合や、既に死亡している場合には、生前廃除の請求自体ができなくなるため、廃除を検討する場合には、被相続人の意思がはっきりしている段階で手続きを進めることが重要とされています。
また、廃除の審判が確定する前に、被相続人と推定相続人との関係が改善した場合には、被相続人が請求を取り下げることも可能と考えられています。廃除の手続きは、あくまで被相続人の意思に沿って進められるものであり、途中で方針を変更することも制度上想定されていると理解されています。
虐待・重大な侮辱・著しい非行の考え方
虐待は身体的な暴力に限らず、継続的な暴言や無視といった精神的な虐待も含めて考慮されることがあるとされています。重大な侮辱は、被相続人の名誉や人格を著しく傷つける言動を指すと理解されています。著しい非行には、被相続人の財産を不当に浪費した場合や、犯罪行為によって被相続人に多大な迷惑や損害を与えた場合などが含まれ得ると考えられていますが、いずれも個別の事情に応じて慎重に判断されるとされています。単発の出来事だけでなく、行為の継続性や被相続人が受けた影響の大きさも重要な考慮要素になると考えられています。個々の言動を切り離して評価するのではなく、被相続人との関係全体を通じてどのような影響が生じていたのかという観点から判断されることが多いと考えられています。被相続人自身の言動に問題があった場合には、その事情も考慮されることがあるとされており、廃除の当否は被相続人・推定相続人双方の事情を踏まえて総合的に判断されると理解されています。
廃除の対象は遺留分を有する推定相続人に限られる
廃除の制度は、本来であれば被相続人の意思(遺言)だけでは奪うことのできない遺留分までも失わせる強い効果を持つため、遺留分を有する推定相続人、すなわち配偶者や子などの直系卑属、直系尊属に限って認められていると理解されています。兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、遺産を渡したくない場合には、廃除ではなく遺言によって相続分をゼロとする方法で対応することが一般的とされています。この違いを踏まえずに廃除の手続きを検討してしまうと、そもそも対象にならない請求として扱われる可能性がある点にも注意が必要と考えられています。遺留分を有しない兄弟姉妹に対して廃除に相当する対応を取りたい場合には、遺言の内容や付言事項を工夫することで、実質的に同様の結果を目指すことになると考えられています。配偶者についても遺留分を有する推定相続人に該当するため、婚姻関係にある配偶者からの虐待等がある場合には、廃除の対象となり得ると考えられています。
廃除の手続きの流れ―生前廃除と遺言による廃除
推定相続人の廃除には、大きく分けて被相続人が生存中に自ら家庭裁判所に請求する方法(生前廃除)と、遺言の中で廃除の意思表示をする方法(遺言による廃除)の2通りがあるとされています。
生前廃除の場合、被相続人が家庭裁判所に廃除の審判を申し立て、虐待や重大な侮辱、著しい非行の事実を具体的に主張・立証していくことになります。家庭裁判所は、被相続人と推定相続人双方の言い分を踏まえながら、廃除の要件を満たすかどうかを審理するとされています。審判が確定すると、市区町村役場への届出を行うことで、戸籍にその旨が記載される取扱いになっていると理解されています。届出には、審判書の謄本や確定証明書といった書類が必要になることが一般的とされており、あらかじめ必要書類を確認しておくことが望ましいと考えられています。
遺言による廃除は、被相続人が遺言の中で廃除の意思を示し、遺言が効力を生じた後に、遺言執行者が家庭裁判所に廃除を請求する仕組みとされています。この場合、被相続人の死亡後に手続きが進むため、廃除の効力は被相続人の死亡の時にさかのぼって生じると考えられています。遺言による廃除を選択する場合には、遺言執行者を定めておくことが実務上重要とされています。
どちらの方法を選ぶかは、被相続人の健康状態や、推定相続人との関係の緊迫度合いなどによって判断されることが多いと考えられています。生前廃除であれば被相続人が生きている間に結論が確定するため、以後の財産管理や遺産分割の準備を進めやすいという側面がある一方、遺言による廃除は、被相続人の生前には手続きの負担を避けつつ、死後に廃除の効果を生じさせられるという特徴があるとされています。
いずれの方法による場合も、廃除の請求が家庭裁判所に認められるまでは、対象となる推定相続人の相続権は失われないとされています。そのため、生前廃除を選択した場合には、審判が確定するまでの間、相続に関する重要な決定(遺言の作成や財産の整理など)を並行して進めておくことも、実務上の対応として考えられます。
生前廃除・遺言による廃除のいずれの場合であっても、家庭裁判所は、単に被相続人の言い分だけでなく、対象となる推定相続人の言い分も聴取したうえで判断するとされています。そのため、廃除の請求をする場合には、被相続人側の事情だけでなく、相手方からどのような反論が想定されるかについても、あらかじめ整理しておくことが実務上有用と考えられています。
廃除の効果が生じる時期についても、生前廃除と遺言による廃除とで違いがあると考えられています。生前廃除の場合には、審判が確定した時点から効力が生じるとされているのに対し、遺言による廃除の場合には、その効力は被相続人の死亡の時にさかのぼって生じると定められていると理解されています。
廃除の審判の申立てには、家庭裁判所に納める収入印紙代や郵便切手代など、一定の実費が必要になるとされています。弁護士に手続きを依頼する場合には、別途弁護士費用も発生することが一般的であり、あらかじめ想定される費用感を確認しておくことも実務上有用と考えられています。
生前廃除の申立てと審理のポイント
生前廃除では、被相続人自身が虐待や重大な侮辱、著しい非行の具体的な事実を主張し、それを裏付ける資料を提出する必要があるとされています。診断書や写真、やり取りの記録、第三者の証言などが証拠として用いられることもあると考えられています。家庭裁判所は、双方の事情を丁寧に聴取したうえで判断するため、申立てから結論が出るまでに一定の期間を要する場合があるとされています。証拠が乏しい場合には、廃除の要件を満たすと判断されないこともあるため、日頃から関連する記録を残しておくことが実務上望ましいと考えられています。審理の過程では、被相続人本人の陳述だけでなく、家庭裁判所調査官による事情の調査が行われることもあり、双方の生活状況や人間関係が総合的に確認されると考えられています。申立てにあたっては、家庭裁判所提出用の申立書や事情説明書などの書式を用いることが一般的とされており、記載内容や添付資料について弁護士に相談しながら準備を進めることが望ましいとされています。
遺言による廃除と遺言執行者の役割
遺言による廃除を行う場合、遺言の中に廃除の対象者と理由を明記しておくことが望ましいとされています。遺言が効力を生じた後は、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求を行うことになるため、あらかじめ信頼できる遺言執行者を指定しておくことが重要と考えられています。遺言執行者が指定されていない場合には、家庭裁判所への選任申立てが別途必要になることもあるとされています。遺言執行者が決まるまでの間、手続きが停滞してしまう可能性もあるため、廃除を遺言で行う場合には遺言執行者の指定を忘れないようにすることが重要とされています。遺言執行者には、弁護士など専門家を指定しておくケースも多く、廃除の請求を含めた遺言内容の実現を円滑に進めるうえで有効な備えになると考えられています。遺言の作成にあたっては、廃除の意思表示だけでなく、遺留分を有する他の推定相続人への配慮や、財産の分配方法についてもあわせて検討しておくことが望ましいと考えられています。
廃除の取消しと審判が確定するまでの注意点
いったん廃除の審判が確定した後であっても、被相続人はいつでも家庭裁判所に廃除の取消しを請求できるとされています。廃除の原因となった事情が解消し、被相続人と推定相続人との関係が改善した場合などには、取消しによって相続権を回復させることも可能と理解されています。取消しも、生前に請求する方法と、遺言によって意思表示をする方法の両方が認められていると考えられています。この点は、廃除が被相続人の一時的な感情のみに基づいて確定的に固定されてしまう制度ではなく、その後の関係の変化を反映できる柔軟性を持った制度であることを示していると考えられています。
廃除は、被相続人の一方的な意思表示だけで効力が生じるものではなく、家庭裁判所の審判を経て初めて確定する点に注意が必要とされています。審判が確定するまでの間は、対象者は依然として推定相続人としての地位を有しており、廃除を求める側が虐待や重大な侮辱、著しい非行の事実を具体的に立証できなければ、請求が認められないこともあると考えられています。
また、廃除の審理には相応の時間がかかる場合があるとされ、被相続人の生前に審判が確定しないまま相続が開始してしまうケースも想定されます。このような場合の実務上の取扱いについては、個別の事情に応じて家庭裁判所の判断を仰ぐ必要があると考えられています。
廃除の取消しがなされた場合、対象者は改めて通常の推定相続人としての地位に戻るため、それまでに進めていた遺産分割の準備や遺言の内容についても、見直しが必要になることがあると考えられています。関係の変化があった場合には、早めに専門家に相談し、遺言や財産管理の方針を再確認しておくことが望ましいとされています。
廃除の審判が確定しないまま被相続人が死亡した場合、その時点では対象者はなお相続人としての地位を有していると考えられるため、遺産分割協議への参加資格についても慎重な検討が必要になるとされています。このような場合には、家庭裁判所や専門家に相談しながら、その後の手続きの進め方を確認することが望ましいと考えられています。
廃除や欠格は、あくまで相続人としての地位そのものを失わせる制度であり、遺言の有効性や、特別受益・寄与分の有無とは別の問題であると整理されています。相続関係を検討する際には、これらの制度を混同せず、それぞれの要件や効果を区別して考えることが重要とされています。
廃除の取消しについても、家庭裁判所の審判を経て初めて確定するものであり、被相続人が一方的に「廃除をやめる」と意思表示しただけでは、法的な効力は生じないと考えられています。取消しを検討する場合にも、正式な手続きを踏む必要がある点に留意が必要とされています。
審判が確定する前に相続が開始した場合、その後の遺産分割協議や相続税申告をどのように進めるかについては、個別の事情によって対応が分かれると考えられています。たとえば、係争中の状態のまま申告期限が到来しそうな場合には、法定相続人の範囲について一定の前提を置いたうえで申告を行い、後日、審判の結果が確定した段階で必要な手続きを行うといった対応が検討されることもあるとされています。
廃除の取消し(民法894条)
廃除の取消しは、廃除の請求と同様に、被相続人が生前に家庭裁判所に請求する方法と、遺言によって取消しの意思を示す方法とがあるとされています。取消しの審判が確定すると、対象者は廃除される前の状態、すなわち通常の推定相続人としての地位を回復すると考えられています。関係の修復などによって廃除を維持する必要がなくなった場合には、早めに取消しの手続きを検討することが望ましいとされています。取消しの審判が確定した後は、生前廃除の場合と同様に、市区町村役場への届出によって戸籍上の記載も改められる取扱いになっていると理解されています。取消しの審判にも一定の審理期間を要することがあるため、関係修復後は早めに手続きに着手することが、その後の相続関係を安定させるうえで望ましいと考えられています。取消しの請求も被相続人自身の意思に基づくものであるため、他の親族が取消しを求めることはできないと考えられています。
立証の難しさと審理に要する時間
廃除が認められるためには、虐待や重大な侮辱、著しい非行といった抽象的な要件を、具体的な事実と証拠によって裏付ける必要があるとされています。当事者間の言い分が対立することも多く、家庭裁判所での審理に一定の時間を要する場合があると考えられています。廃除を検討する場合には、早い段階から弁護士など専門家に相談し、証拠の整理を進めておくことが実務上望ましいとされています。審理が長期化した場合には、被相続人の判断能力や健康状態にも配慮しながら手続きを進める必要があると考えられています。審理が長期にわたる場合には、被相続人の意向を記録した書面や、専門家への相談履歴なども、後の手続きにおいて重要な資料となり得ると考えられています。証拠が十分に整わない段階で申立てを行うと、審理が長期化したり、請求が認められにくくなったりする可能性があるため、事前の準備が重要であるとされています。
代襲相続との関係―欠格・廃除と相続放棄の違い
民法は、被相続人の子が相続の開始以前に死亡していた場合のほか、相続欠格に該当した場合や廃除によって相続権を失った場合にも、その子(被相続人の孫)が代襲して相続人になると定めていると理解されています。つまり、欠格や廃除によって相続人としての地位を失っても、その人に子がいれば、その子が代わって相続人となる可能性があるとされています。
これに対して、相続放棄をした場合には代襲相続は生じないと考えられています。相続放棄は、初めから相続人でなかったものとみなされる制度であり、放棄をした人の子が代わりに相続人になることはないとされています。この点は、欠格・廃除と相続放棄との間で効果が大きく異なる部分であり、相続関係を整理する際に混同しないよう注意が必要と考えられています。
代襲相続人となった孫などは、本来の相続人と同様に遺産分割協議に参加し、法定相続分に応じた権利を有することになるとされています。相続税の申告実務においても、代襲相続人の有無によって相続人の範囲や基礎控除額の計算が変わってくるため、戸籍謄本等によって代襲相続の関係を正確に確認することが重要とされています。
なお、代襲相続人がさらに相続開始前に死亡している場合には、その子(被相続人のひ孫)が再代襲相続人となることもあるとされています。欠格や廃除の対象者に子や孫がいる場合には、相続関係が複数世代にわたって広がる可能性があるため、戸籍の確認範囲もあわせて広がることがあると考えられています。
代襲相続は、被相続人の子の代襲(孫、ひ孫)だけでなく、兄弟姉妹が相続人となる場合にも一定の範囲で生じ得るとされていますが、兄弟姉妹の代襲相続は子の代における一代限りとされている点で、直系卑属の代襲相続とは扱いが異なると考えられています。欠格や廃除によって兄弟姉妹が相続権を失った場合にも、その子(被相続人のおい・めい)が代襲相続人となることがあり得ると理解されています。
相続税申告の実務では、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を収集し、法定相続人の範囲を確定させる作業が必要になりますが、廃除や欠格に該当する相続人がいる場合には、通常の確認作業に加えて、廃除の審判書や欠格事由に関する資料の有無も確認する必要があると考えられています。こうした確認作業の漏れは、後日の申告内容の誤りにつながりかねないため、慎重な対応が求められるとされています。
こうした代襲相続の考え方は、遺産分割協議だけでなく、相続税の申告書に記載する相続人の氏名や続柄、取得財産の内容にも直接影響するため、代襲相続人の有無を早期に確認しておくことが、正確な申告につながると考えられています。
代襲相続人になり得るのは、被代襲者の直系卑属に限られると考えられています。たとえば、被代襲者の配偶者(被相続人からみた子の配偶者)は、代襲相続人にはならないと理解されており、代襲相続人の範囲を確認する際には、この点にも注意が必要とされています。
被相続人に子が複数おり、そのうち一人が欠格・廃除によって相続権を失った場合でも、他の子の相続分がそのまま増えるわけではなく、代襲相続人の有無によって相続分の配分が変わってくる点にも注意が必要とされています。
欠格・廃除の場合は子が代襲相続する
民法887条2項は、被相続人の子が死亡、相続欠格、廃除のいずれかによって相続権を失った場合に、その子が代襲して相続人になる旨を定めていると理解されています。欠格や廃除は、本人固有の重大な事情に基づくものであり、その責任をさらに次の世代にまで及ぼす必要はないという考え方が背景にあるとされています。代襲相続人がいる場合には、遺産分割の当事者として加わることになります。実務上は、代襲相続人が被相続人と面識が乏しいケースもあり、遺産分割協議を円滑に進めるための調整が必要になることもあると考えられています。代襲相続人の存在は、遺産分割協議の当事者を増やすだけでなく、相続税申告における必要書類の範囲にも影響するため、早めに関係を確認しておくことが望ましいとされています。代襲相続人が複数いる場合には、被代襲者が有していたはずの相続分を、代襲相続人間でさらに均等に分けることになると考えられています。
相続放棄には代襲相続がない
相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとみなされるため、その子が代襲相続人になることはないと考えられています。たとえば、被相続人の子が相続放棄をした場合、その子(被相続人から見た孫)が代わりに相続人となることはなく、次順位の相続人(直系尊属や兄弟姉妹)に相続権が移ることになるとされています。欠格・廃除との違いを理解しておくことは、相続関係を正確に把握するうえで重要と考えられています。同じ「相続人でなくなる」結果であっても、次に誰が相続人になるのかという点で、欠格・廃除と放棄とでは結論が大きく異なる場合があるとされています。次順位の相続人に相続権が移ることにより、当初想定していなかった親族が新たに相続人として手続きに関わることになる場合もあるため、注意が必要と考えられています。相続人の全員が相続放棄をした場合には、相続人が誰もいない状態となり、家庭裁判所によって相続財産清算人が選任されるなどの手続きが必要になることもあると考えられています。
相続税の計算への影響―基礎控除額と非課税枠の考え方
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という算式で計算されると理解されています。この「法定相続人の数」の数え方について、相続放棄があった場合には、放棄がなかったものとみなして数えるという特則が設けられているとされています。これは、相続放棄が相続人の自由な意思でいつでも行える手続きであるため、放棄によって法定相続人の数を恣意的に変動させ、基礎控除額を操作することを防ぐ趣旨によるものと考えられています。
これに対して、相続欠格や廃除によって相続権を失った人については、相続放棄のような特則は設けられていないと理解されています。そのため、欠格や廃除によって相続人でなくなった人は、原則として法定相続人の数には含まれないと考えられています。ただし、その人に代襲相続人がいる場合には、代襲相続人が法定相続人として数に含まれることになるとされています。
このように、同じ「相続人でなくなる」場面であっても、相続放棄と、欠格・廃除とでは、基礎控除額の計算における扱いが異なると考えられるため、相続税申告の際には、相続人の範囲や法定相続人の数をどのように確定するかを慎重に確認する必要があるとされています。
たとえば、被相続人に子が2人おり、そのうち1人が欠格に該当し、その欠格者にさらに子(被相続人の孫)が1人いる場合、法定相続人の数は、欠格に該当しなかった子1人と、代襲相続人である孫1人を合わせた2人として計算されると考えられます。仮に欠格者に子がいなければ、法定相続人の数は1人となり、基礎控除額も変わってくることになるため、家族構成を丁寧に確認したうえで計算する必要があるとされています。
また、廃除や欠格によって相続人の範囲が変動する場合には、遺産分割協議のやり直しや、相続税申告後の更正の請求・修正申告が必要になることもあると考えられています。相続開始後に廃除の取消しが確定した場合や、欠格に該当するかどうかについて訴訟の結果が確定した場合には、法定相続人の数が変わることに伴い、既に行った相続税申告の内容を見直す必要が生じることもあるとされています。
小規模宅地等の特例など、法定相続人の数そのものではなく、実際に財産を取得した人の属性に着目した特例もあるため、欠格・廃除や代襲相続によって相続人の構成が変わる場合には、こうした特例の適用可否についてもあわせて確認しておくことが望ましいと考えられています。
なお、代襲相続人となった孫は、相続税額の2割加算の対象にはならないと理解されています。2割加算は、配偶者及び一親等の血族以外の人が財産を取得した場合に適用される仕組みとされていますが、代襲相続人となった孫については、一親等の血族に準じるものとして扱われ、加算の対象外とされています。
相続税の総額は、実際の遺産分割の内容にかかわらず、法定相続人が法定相続分どおりに遺産を取得したと仮定して計算されると理解されています。そのため、法定相続人の数や構成が変わることは、各相続人の取得割合だけでなく、相続税の総額そのものの計算にも影響を及ぼすことになると考えられています。
法定相続人の数の計算方法の違い
相続放棄をした人は、基礎控除額や生命保険金・死亡退職金の非課税枠を計算する際の「法定相続人の数」には含めて数えるとされています。一方で、欠格や廃除によって相続権を失った人は、そもそも相続人でなかったものとして扱われ、代襲相続人がいない限り、法定相続人の数には含まれないと考えられています。この違いは、相続税申告書を作成する際の相続人の範囲の確定に直接影響する重要なポイントとされています。申告書の作成にあたっては、戸籍謄本等をもとに、放棄なのか欠格・廃除なのかを正確に区別して整理しておくことが望ましいと考えられています。誤って欠格・廃除者を法定相続人の数に含めてしまうと、基礎控除額を過大に計算してしまうおそれがあるため、申告書作成の初期段階で相続人の範囲を確定させておくことが重要とされています。実務上は、戸籍の確認だけでなく、家庭裁判所の審判書や訴訟の判決書など、欠格・廃除の事実を裏付ける資料もあわせて確認しておくことが望ましいとされています。
生命保険金・死亡退職金の非課税枠との関係
死亡保険金や死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は、相続人が取得した場合に適用されると理解されています。そのため、欠格や廃除によって相続人でなくなった人が保険金や退職金を受け取ったとしても、その部分については非課税枠の適用を受けられないと考えられています。一方、代襲相続人は相続人としての地位を有するため、代襲相続人が受け取った保険金等には非課税枠が適用され得るとされています。保険金の受取人があらかじめ指定されている場合には、その受取人が欠格・廃除の対象になっていないかどうかも、あわせて確認しておくことが望ましいと考えられています。受取人の指定を見直す場合には、廃除や欠格の可能性がある人を受取人としたまま放置しないよう、定期的に契約内容を確認しておくことも実務上有用と考えられています。非課税枠は相続人ごとに個別に計算されるものではなく、相続人全体の人数に応じて算定される仕組みとされているため、相続人の数の確定は非課税枠全体の計算にも影響します。
遺留分との関係と相続実務・税務上の留意点
相続欠格に該当した人や、廃除によって相続権を失った人は、遺留分を請求する権利も失うと考えられています。遺留分は、相続人としての地位を前提とする権利であるため、そもそも相続人でなくなった人には認められないという整理によるものとされています。もっとも、その人に子がいる場合には、代襲相続人としてその子が遺留分を含めた相続人としての地位を承継することになると理解されています。
実務上、廃除や欠格が問題となる場面では、相続関係が複雑化しやすく、遺産分割協議や相続税申告にも影響が及ぶことが多いとされています。たとえば、代襲相続人が未成年である場合には特別代理人の選任が必要になることもありますし、廃除の審判が相続開始時点でまだ確定していない場合には、相続人の範囲そのものが一時的に不確定な状態になることも考えられます。
こうした事情がある相続では、戸籍謄本や家庭裁判所の審判書などによって相続人の範囲を正確に確認したうえで、相続税の申告期限にも留意しながら手続きを進める必要があると考えられています。廃除・欠格に関する判断や立証は法律的な専門性が高いため、早い段階から弁護士に相談するとともに、相続税申告への影響については税理士に確認しながら進めることが望ましいとされています。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内とされているのが原則ですが、廃除の審理が長期化するなどして相続人の範囲が確定しない場合には、いったん法定相続人の範囲について一定の前提を置いて申告し、後日、確定した内容に基づいて修正申告や更正の請求を行うといった対応が必要になることも考えられます。このような手続きの選択についても、早めに専門家へ相談しておくことが望ましいとされています。
廃除や欠格をめぐる問題は、相続人同士の関係が長期にわたって緊張した状態であったことの結果として生じることも多いと考えられています。相続税申告という限られた期限の中で、法的な争点の整理と税務上の対応の双方を並行して進める必要があるため、初期段階から弁護士・税理士がそれぞれの専門領域で連携しながら対応することが、手続き全体を円滑に進めるうえで重要と考えられています。
遺留分を巡る紛争は、相続税の申告内容そのものにも波及することがあり、遺留分侵害額請求の結果によって、実際に財産を取得する人や取得額が変動する場合には、相続税の申告や納税額にも影響が生じ得ると考えられています。こうした場合には、遺留分に関する交渉や訴訟の進捗を踏まえながら、相続税の申告方針を検討していくことになるとされています。
廃除・欠格をめぐる問題は、被相続人の生前における家族関係の在り方そのものに関わることが多いと考えられています。相続が開始してから慌てて検討するのではなく、可能であれば生前の段階から、家族間のコミュニケーションや専門家への相談を通じて、将来のトラブルを予防していく視点も重要であると考えられています。
遺留分の割合は相続人の構成によって異なり、直系尊属のみが相続人となる場合には遺産全体の3分の1、それ以外の場合には2分の1が遺留分算定の基準とされ、各相続人の遺留分はこれに法定相続分を乗じて算定されると理解されています。廃除や欠格によって相続人の構成が変わると、この遺留分の割合や算定の基礎にも影響が及ぶことがあると考えられています。
欠格・廃除された人は遺留分も失う
遺留分侵害額請求権は、相続人としての地位があることを前提とする権利であるため、欠格や廃除によって相続人でなくなった人は、この権利を行使できないと考えられています。ただし、代襲相続人となった子や孫については、代襲相続人自身が遺留分を有する相続人として扱われるため、被代襲者の欠格・廃除にかかわらず、遺留分侵害額請求ができる場合があるとされています。遺言の内容を検討する際には、廃除の対象者に代襲相続人がいるかどうかも踏まえて、遺留分への配慮を行っておくことが望ましいと考えられています。遺言の作成時には、廃除を検討している対象者に子がいるかどうかを踏まえたうえで、遺留分に配慮した財産配分を検討しておくことが望ましいと考えられています。遺留分侵害額請求権は、行使することによって初めて具体的な金銭請求権として発生すると考えられており、時効による消滅にも注意が必要とされています。
専門家との連携が重要な場面
廃除や欠格が絡む相続では、相続人の範囲の確定そのものに法律上の争点が生じやすく、遺産分割や相続税申告の手続きが通常よりも複雑になりやすいと考えられています。廃除の審判の帰趨や欠格事由の有無についての判断は弁護士に相談しつつ、それを踏まえた法定相続人の数の確定や基礎控除額の計算、申告期限管理については税理士と連携して進めることが、円滑な手続きにつながると考えられています。関係者が多い相続や、家族関係に複雑な事情がある相続ほど、早い段階から専門家に相談しておくことが望ましいとされています。特に相続税の申告期限は厳格に定められているため、法律上の争点が解決していない段階であっても、暫定的な対応を含めて期限内にとるべき手続きを専門家とともに検討しておくことが重要とされています。こうした連携は、廃除や欠格が問題となる場面に限らず、相続関係が複雑になりがちなケース全般において、手続きを円滑に進めるうえで有効であると考えられています。