[池袋] 生前贈与加算の7年ルールと申告実務の注意点#相続税#税理士#池袋
相続税の計算にあたっては、亡くなった方が生前に行っていた贈与についても、一定の範囲で相続財産に加算して考える仕組みが設けられているとされています。これがいわゆる生前贈与加算と呼ばれるルールで、暦年課税による贈与を活用した相続対策を検討するうえで欠かせない知識のひとつだといわれています。とりわけ2024年(令和6年)の税制改正では、この加算の対象となる期間が相続開始前3年から7年へと段階的に延長されるとされ、実務への影響が大きいと考えられています。この記事では、生前贈与加算の基本的なしくみから、今回の改正のポイント、加算の対象となる財産・ならない財産、加算対象者の範囲、評価方法、そして申告実務や対策の考え方に至るまで、順を追って整理していきます。
目次
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生前贈与加算の基本的なしくみ
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暦年課税とはどのような制度か
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なぜこの制度が設けられているのか
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2024年(令和6年)税制改正のポイント
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3年から7年への延長の経緯
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経過措置と適用時期の考え方
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加算の対象となる財産とならない財産
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非課税贈与や特例贈与の取り扱い
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基礎控除内の贈与でも加算対象になる点
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加算対象者の範囲(相続人以外や孫への贈与)
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相続や遺贈で財産を取得しない人への贈与
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孫への贈与を検討する際の留意点
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相続時精算課税制度との違い(簡潔な対比)
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加算される期間の違い
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制度選択にあたっての基本的な考え方
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加算される贈与財産の評価方法
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贈与時点の評価額を用いる原則
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財産の種類による評価の留意点
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申告実務への影響と対策の考え方
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贈与の記録を残しておくことの重要性
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遺産分割への影響と相続人間の情報共有
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生前贈与加算を踏まえた対策の考え方
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早めに贈与を始めることの意味
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専門家に相談するタイミング
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生前贈与加算の基本的なしくみ
生前贈与加算とは、相続や遺贈によって財産を取得した人が、被相続人から相続開始前の一定期間内に暦年課税による贈与を受けていた場合、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算して相続税額を計算するという仕組みだとされています。贈与そのものは有効に成立しているものの、相続税の計算上は「なかったもの」として扱うのではなく、あらためて相続財産の一部として合算して考えるという点が、このルールの大きな特徴だといわれています。
そもそも贈与税と相続税は、生前に財産を移転するか死亡時に移転するかという違いはあるものの、いずれも財産の無償移転に対して課税するという点で共通していると考えられています。もし相続開始の直前に多額の贈与を行うことで相続財産を圧縮できてしまうと、贈与税と相続税という2つの税制の間でバランスが崩れ、実質的に税負担を回避できてしまう可能性があると指摘されています。生前贈与加算は、こうした駆け込み的な贈与によって相続税の負担が不当に軽くなることを防ぐための調整弁として設けられている制度だと理解されているようです。
この仕組みのもとでは、暦年課税で贈与を受けた財産のうち、加算対象期間内のものについては相続税の課税価格に足し戻されるかわりに、その贈与について既に納めた贈与税額は、相続税額から控除できる仕組みになっているとされています。つまり、同じ財産について贈与税と相続税を二重に負担することにならないよう、一定の調整が図られていると考えられます。ただし、贈与税の基礎控除の範囲内で贈与税が発生していなかった場合であっても、加算対象期間内の贈与であれば相続財産に加算される点には注意が必要だといわれています。
生前贈与加算は、相続人など将来相続や遺贈によって財産を取得する可能性のある人に対する贈与を主な対象としており、まったく無関係の第三者に対する贈与にまで広く適用されるものではないとされています。この点については後の章であらためて整理しますが、まずは「相続開始前の一定期間内の暦年贈与は、相続税の計算上、相続財産に戻し入れて考える」という基本の枠組みを押さえておくことが、この制度を理解するうえでの出発点になると考えられます。
なお、生前贈与加算はあくまで相続税の計算上のルールであり、贈与契約そのものの効力や、贈与を受けた財産の所有権に影響を与えるものではないとされています。贈与された財産は贈与を受けた人のものであり続ける一方で、相続税の計算という場面に限って、被相続人の相続財産に合算して考えるという性質のルールだと理解しておくとよいでしょう。
このように、生前贈与加算は暦年課税による贈与を利用した相続税対策の効果に一定の歯止めをかける役割を持つ制度であり、暦年贈与を検討するうえでは避けて通れない前提知識のひとつだといえそうです。
また、生前贈与加算という名称から、贈与を受けた財産すべてが機械的に相続財産へ組み込まれる厳格な制度だと受け止められがちですが、実際には後述するように加算対象となる期間や対象者、財産の種類には一定の限定が設けられているとされています。制度の全体像を漠然と捉えるのではなく、どのような贈与が、いつ行われたもので、誰に対するものかという要素を一つずつ整理して考えることが、この制度を正しく理解するための近道になると考えられます。特に暦年課税を長年活用してきた家庭ほど、贈与の履歴が多岐にわたることが多く、相続開始後にあらためて過去の贈与を棚卸しする作業が必要になる場面も少なくないといわれています。
暦年課税とはどのような制度か
暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から、一定の基礎控除額を差し引いた残りの金額に対して贈与税を計算する、贈与税の原則的な課税方式だとされています。基礎控除額の範囲内であれば贈与税は発生しないとされており、毎年少しずつ財産を移転していく方法として、暦年課税による贈与は相続税対策の代表的な手法のひとつとして知られてきたようです。
暦年課税による贈与は、贈与者・受贈者ともに特別な手続きを要さず、比較的手軽に始められる点が特徴だといわれています。贈与契約書を作成し、実際に財産の移転(現金であれば振込など)を行うことで、暦年課税による贈与として認められると考えられていますが、形だけの贈与とみなされないよう、実態を伴う形で進めることが重要だとされています。
一方で、暦年課税による贈与を長年にわたって計画的に行ってきた場合であっても、相続開始が近づいた時期の贈与については、生前贈与加算の対象になる可能性がある点を踏まえておく必要があるといわれています。暦年課税そのものの仕組みと、生前贈与加算という相続税計算上の調整ルールは、別々に理解しておくことが大切だと考えられます。
なぜこの制度が設けられているのか
生前贈与加算が設けられている理由としては、贈与税と相続税の負担のバランスを保つという政策的な考え方があるとされています。仮にこのルールがなければ、相続開始の直前に多額の贈与を行うことで、相続財産を意図的に減らし、結果として相続税の負担を軽減できてしまう可能性があると考えられます。
特に、相続開始が近いことを予見できるような状況(高齢や病気など)にある方が、急いで贈与を行うケースも想定されるため、一定期間内の贈与については相続財産としてあらためて取り込むことで、こうした駆け込み贈与による税負担の回避を防ごうとする趣旨があるといわれています。
また、生前贈与加算があることで、暦年課税による贈与はあくまで長期的・計画的に行うことに意味があるという考え方が定着してきたとも考えられます。相続開始の直前になって慌てて贈与を行っても、加算対象期間内であれば相続税の計算上は効果が限定的になる可能性がある点は、この制度の趣旨を理解するうえで重要なポイントだといえそうです。
2024年(令和6年)税制改正のポイント
2024年(令和6年)の税制改正では、生前贈与加算の対象となる期間が、それまでの相続開始前3年から、相続開始前7年へと延長されるとされています。この改正は2024年1月1日以後に行われる贈与から適用が始まるとされており、対象期間は一度に7年になるのではなく、年を追うごとに段階的に延びていく仕組みになっているといわれています。
具体的には、2024年1月1日以後の贈与から加算対象期間のカウントが始まり、実際に相続開始前7年間がすべて加算対象期間になるのは、2031年以降に発生する相続からになると考えられています。それまでの間は、相続開始日に応じて加算対象期間が3年超7年未満の範囲で段階的に延びていく、経過措置のような期間が続くとされています。
この経過措置の期間中は、相続がいつ発生するかによって加算対象期間の長さが異なってくるため、実務上はその都度、相続開始日を基準にどこまで遡って贈与を確認する必要があるかを個別に判断しなければならない点に注意が必要だといわれています。単純に「7年前まで遡ればよい」と考えるのではなく、改正後しばらくの間は移行過程にあるという理解が重要だと考えられます。
また、今回の改正では、延長された期間のうち相続開始前3年より前の4年間について贈与を受けた財産の価額の合計額から、一定の金額を控除したうえで相続財産に加算するという緩和措置も設けられているとされています。延長された期間をすべて3年以内の贈与と同じように扱うのではなく、古い期間についてはやや緩和した形で加算するという配慮がなされているようです。
この改正の背景には、暦年課税による贈与と、相続時精算課税制度による贈与との間で、制度の使われ方に偏りが生じないようにするという考え方があるといわれています。暦年課税による生前贈与を相続税対策として活用する際の前提が変わったことで、これまで以上に早い段階から計画的に贈与を進めていくことの重要性が増していると考えられます。
なお、この改正はあくまで生前贈与加算の対象期間に関するものであり、贈与税の基礎控除額や税率構造そのものが変更されたわけではないとされています。暦年課税による贈与を行う際の基本的な計算方法自体には変更がない一方で、相続税の計算段階で加算される範囲が広がったという点を正確に理解しておくことが大切だといわれています。
改正の内容を家族に説明する際には、贈与税そのものの負担が重くなったわけではなく、相続税の計算段階で過去の贈与をより広い範囲で見直すことになった、という点を丁寧に伝えることが誤解を防ぐうえで役立つと考えられます。贈与税と相続税は別々の税目でありながら、生前贈与加算という接点を通じて密接に関わり合っているという構造を理解しておくことが、制度全体を正しく把握する助けになるといえそうです。
今回の改正内容は、法令や国税庁の発表資料などで詳細が示されているとされていますが、経過措置の当てはめ方など細かい部分については、個別の相続開始時期に応じて確認する必要があるとされています。実際に申告作業を進める際には、相続開始日を起点として、どの範囲の贈与が加算対象になるのかを丁寧に確認することが欠かせないと考えられます。
今回の改正はあくまで暦年課税による贈与を対象としたものであり、既に述べたとおり相続時精算課税を選択した場合の取り扱いとは異なる枠組みで運用されているとされています。したがって、家族の中で暦年課税を利用している人と相続時精算課税を選択している人が混在している場合には、それぞれの贈与についてどちらの計算ルールが適用されるのかを個別に整理しておく必要があると考えられます。改正の内容が段階的に適用されるという性質上、しばらくの間は制度の理解そのものが実務上の負担になりやすいといわれており、最新の取り扱いを継続的に確認していく姿勢が求められると考えられます。
3年から7年への延長の経緯
従来、生前贈与加算の対象期間は相続開始前3年間とされてきました。この期間設定は長らく維持されてきたものの、暦年課税による贈与を用いた相続税対策が広く浸透する中で、より長期にわたる贈与についても一定の調整を図るべきだという考え方が強まってきたとされています。
今回の改正によって対象期間が7年に延長されたことで、相続開始が近づいてから慌てて贈与を行っても、加算対象になる可能性が高まったと考えられます。反対に、早い段階から計画的に贈与を進めてきた場合には、相続開始時点で7年より前の贈与については加算対象外になる可能性が高く、長期的な視点で贈与を継続することの意味合いが増したといえそうです。
この延長は暦年課税制度そのものを否定するものではなく、あくまで相続税計算における加算期間の見直しという位置づけだとされています。暦年課税による贈与自体は引き続き活用できる制度である一方、その効果をどのタイミングで見込めるかについては、これまで以上に長期的な計画が求められるようになったと考えられます。
経過措置と適用時期の考え方
経過措置の期間中は、相続開始日によって実際に遡って確認すべき期間の長さが異なってくるとされています。たとえば改正直後に発生した相続であれば、加算対象期間は3年間とほぼ変わらない一方、時間の経過とともに徐々に長い期間を確認する必要が出てくると考えられています。
実務上は、相続開始日を基準として、2024年1月1日以後に行われた贈与のうち、どこまでの期間が加算対象になるのかを個別にあてはめて確認する作業が必要になるといわれています。この確認作業を誤ると、加算すべき贈与財産を見落としたり、逆に加算対象でない贈与まで含めてしまったりする可能性があるため、慎重な確認が求められると考えられます。
経過措置が終了し、加算対象期間が完全に7年となるのは2031年以降の相続からになるとされていますが、それまでの間に相続が発生するケースも当然多いと考えられるため、当面はこの経過措置の考え方を正確に理解しておくことが実務上重要だといわれています。
加算の対象となる財産とならない財産
生前贈与加算の対象となるのは、原則として暦年課税による贈与財産全般だとされています。現金や預貯金の贈与はもちろん、不動産や有価証券など、暦年課税の対象として贈与された財産であれば、加算対象期間内に行われたものは相続財産に加算する対象になり得ると考えられています。
一方で、贈与税が非課税とされる一定の贈与については、生前贈与加算の対象から除外される扱いになっているものもあるとされています。たとえば、扶養義務者間で行われる通常必要と認められる範囲の生活費や教育費の贈与は、そもそも贈与税の課税対象にならない性質のものであり、生前贈与加算の対象にもならないと考えられています。ただし、これらはあくまで「通常必要な範囲」に限られるとされ、名目上は生活費や教育費であっても、実質的に財産の移転に近いような多額の資金移動については、取り扱いを慎重に検討する必要があるといわれています。
また、贈与税の配偶者控除の特例(いわゆるおしどり贈与)を受けた居住用不動産等の贈与についても、その配偶者控除に相当する部分は生前贈与加算の対象から除かれる扱いになっているとされています。この特例を活用した贈与を検討する場合には、加算の対象になる部分とならない部分を区別して考える必要があると考えられます。
住宅取得等資金の贈与や教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与など、特定の目的のために設けられた贈与税の非課税措置についても、それぞれの制度ごとに生前贈与加算との関係が個別に定められているとされています。非課税枠の範囲内であれば加算対象にならない場合がある一方、非課税枠を超える部分や、一定の要件を満たさなかった場合には、通常の贈与と同様に加算対象になる可能性がある点には注意が必要だといわれています。
加算対象期間内に行われた贈与であっても、贈与税の基礎控除の範囲内であったために贈与税の申告自体を行っていなかったというケースも少なくないと考えられます。この場合、贈与税の申告をしていなかったからといって生前贈与加算の対象外になるわけではなく、贈与の事実自体が確認できれば加算対象になり得るとされている点は、見落とされやすいポイントのひとつだといわれています。
なお、加算対象となる財産の価額をめぐっては、贈与を受けた時点での評価額を用いるという原則があり、この点については後の章であらためて整理します。まずは、暦年課税による贈与であれば基本的に加算対象になり得るという原則と、非課税とされる一部の贈与についてはそれぞれの制度ごとに個別の取り扱いが定められているという二段構えの理解をしておくことが大切だと考えられます。
加えて、加算対象となるかどうかを判断する際には、贈与の名目だけでなく実質に着目することも重要だとされています。たとえば形式的には生活費や教育費の贈与とされていても、実際には受贈者の資産形成を目的とした多額の資金移動であった場合には、通常必要と認められる範囲を超えるものとして扱われる可能性があるといわれています。逆に、明確な贈与契約書がなく口頭でのやり取りにとどまっていた財産の移転についても、実質的に贈与と評価されれば加算対象になり得ると考えられ、名目や書面の有無だけで判断を確定させることは難しい場合がある点に留意が必要です。
非課税贈与や特例贈与の取り扱い
教育資金の一括贈与に係る非課税措置や、結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置などは、それぞれの制度に設けられた要件のもとで一定額まで贈与税が非課税になる仕組みだとされています。これらの制度を利用した贈与については、贈与者が亡くなった時点での管理残額(使い切れずに残っている金額)の取り扱いなど、生前贈与加算とは別の形で相続税の計算に影響する仕組みが設けられている場合があるといわれています。
住宅取得等資金の贈与に係る非課税措置についても、非課税限度額の範囲内であれば、その部分は生前贈与加算の対象にならないとされています。ただし、非課税限度額を超えて贈与を受けた部分については、通常の暦年課税による贈与として扱われ、加算対象期間内であれば加算の対象になり得ると考えられます。
このように、非課税措置が設けられている贈与については、非課税とされる部分と、それを超えて課税対象になる部分とを区別して考える必要があり、それぞれの制度ごとに生前贈与加算との関係を個別に確認することが望ましいといわれています。
基礎控除内の贈与でも加算対象になる点
暦年課税の基礎控除の範囲内で行われた贈与は、贈与税の申告義務が生じないため、贈与税の申告書が提出されていないケースが多いと考えられます。しかし、生前贈与加算の対象となるかどうかは、贈与税の申告の有無ではなく、実際に贈与が行われた事実とその時期によって判断されるとされています。
そのため、毎年基礎控除の範囲内でコツコツと贈与を続けてきたようなケースであっても、相続開始前の加算対象期間内に行われた贈与については、申告の有無にかかわらず相続財産に加算して考える必要があるといわれています。この点は、暦年課税による贈与を計画する際に誤解されやすいポイントのひとつだと考えられます。
したがって、基礎控除の範囲内での贈与であっても、いつ、いくら、誰に対して贈与を行ったかを記録として残しておくことが、将来の相続税申告において加算対象財産を正確に把握するうえで重要になると考えられます。
基礎控除の範囲内の贈与は贈与税の申告書という公的な記録が残らないぶん、家庭内での記録管理がより重要になると考えられます。通帳の入出金履歴だけでは贈与なのか単なる資金移動なのかが判別しにくい場合もあるため、簡単な贈与契約書やメモを毎回残しておくことが、後日の確認作業を大きく助けると考えられます。
加算対象者の範囲(相続人以外や孫への贈与)
生前贈与加算の対象となるのは、相続や遺贈によって財産を取得した人が、被相続人から加算対象期間内に受けた贈与に限られるとされています。言い換えると、相続によって財産をまったく取得しない人が受けた贈与については、生前贈与加算の対象にはならないと考えられています。この「財産を取得したかどうか」という点が、加算対象者を判断するうえでの重要な分岐点になるといわれています。
典型的には、配偶者や子など法定相続人が加算対象者になりますが、法定相続人であっても、実際に相続や遺贈によって何も財産を取得しなかった場合には、生前贈与加算の対象にはならないとされています。逆に、法定相続人ではない人であっても、遺言によって財産を遺贈された場合や、生命保険金の受取人として財産を取得した場合など、相続や遺贈によって何らかの財産を取得したとみなされる人であれば、生前贈与加算の対象になり得ると考えられています。
この考え方から、孫への贈与の扱いが実務上しばしば論点になるといわれています。孫は原則として法定相続人ではないため、通常であれば相続や遺贈によって財産を取得することはなく、生前贈与加算の対象にもならないと考えられます。しかし、孫が遺言によって遺贈を受けていたり、生命保険金の受取人になっていたりする場合には、その孫は相続や遺贈によって財産を取得した人に該当するため、生前贈与加算の対象になる可能性があるとされています。
また、孫を養子縁組によって法定相続人とした場合には、その孫は相続人として財産を取得することになるため、生前贈与加算の対象になり得る点にも注意が必要だといわれています。孫への生前贈与を相続税対策として活用する際には、その孫が将来相続や遺贈によって財産を取得する可能性があるかどうかを踏まえて検討することが重要だと考えられます。
この点は、暦年課税による贈与を相続税対策として活用する際の重要な着眼点のひとつとされています。相続や遺贈によって財産を取得する見込みのない孫やその配偶者などに対する贈与は、生前贈与加算の対象にならない可能性が高いため、加算対象期間の延長による影響を受けにくいと考えられるからです。ただし、こうした贈与の活用にあたっては、将来的に想定外の形で財産を取得することにならないか、遺言の内容や生命保険の受取人設定なども含めて全体を見渡して検討することが望ましいといわれています。
なお、加算対象者の判定は、あくまで相続開始時点での財産の取得状況に基づいて行われるとされ、贈与を行った時点でどのような立場にあったかだけで判断されるものではない点にも留意が必要だと考えられます。
さらに、相続を放棄した人についても考え方を整理しておく必要があるといわれています。相続放棄をした人は、原則として初めから相続人でなかったものとして扱われるため、相続によって財産を取得することにはなりませんが、遺贈や生命保険金の受取といった形で財産を取得していれば、生前贈与加算の対象になり得ると考えられます。相続人の範囲や財産取得の有無は家族ごとに事情が異なるため、誰がどのような形で財産を取得する可能性があるのかを、贈与を計画する段階からある程度見通しておくことが望ましいと考えられます。
相続や遺贈で財産を取得しない人への贈与
相続開始時点で相続や遺贈によって財産をまったく取得しない人に対する生前贈与は、加算対象期間内に行われたものであっても、生前贈与加算の対象にはならないとされています。この考え方に基づき、相続人にならない孫や、子の配偶者など、将来相続によって財産を取得する見込みが低い人への贈与を計画的に行うケースもあるといわれています。
ただし、財産を取得しない前提で贈与を行っていたとしても、遺言の内容が変更されたり、生命保険金の受取人が変更されたりすることで、結果的にその人が相続や遺贈によって財産を取得することになれば、生前贈与加算の対象になる可能性が生じる点には注意が必要だと考えられます。
そのため、加算対象者に該当するかどうかを見据えて贈与計画を立てる場合には、遺言や生命保険の受取人設定といった他の要素とも整合性を取りながら、全体として矛盾のない形で進めることが望ましいといわれています。
孫への贈与を検討する際の留意点
孫への暦年贈与は、相続人ではない孫が財産を取得しない前提であれば、生前贈与加算の影響を受けにくいという特徴があるとされ、相続税対策として関心を持たれることが多いといわれています。しかし、孫が将来的に養子縁組によって法定相続人になったり、遺言や生命保険によって財産を取得したりする可能性がある場合には、加算対象になる余地が生じる点を理解しておく必要があります。
また、孫への贈与であっても、贈与税の基礎控除を超える金額を一度に贈与すれば贈与税が発生するため、加算対象になるかどうかとは別に、贈与税の負担についても事前に確認しておくことが望ましいと考えられます。
孫への贈与を継続的に行う場合には、贈与契約書の作成や資金移動の記録など、贈与の事実を客観的に示せる形で進めておくことが、将来の相続税申告の場面で有用になると考えられます。
また、孫が複数いる場合には、贈与額に差が生じることで、将来的に親族間の公平感をめぐる話題になることもあるといわれています。相続税対策としての効果だけでなく、家族全体の納得感という観点からも、孫への贈与の方針をあらかじめ整理しておくことが望ましいと考えられます。
相続時精算課税制度との違い(簡潔な対比)
贈与税の課税方式には、これまで説明してきた暦年課税のほかに、相続時精算課税という選択制の制度が設けられているとされています。相続時精算課税を選択した場合、その贈与者からの贈与についてはあらかじめ定められた特別控除額までは贈与税がかからず、それを超える部分について一定の税率で贈与税が課される一方、贈与者が亡くなった際には、選択後に贈与を受けた財産の価額を(基礎控除相当額を除き)すべて相続財産に加算して相続税を計算する仕組みになっているといわれています。
この点で、相続時精算課税による贈与は、期間の制限なくすべて相続財産に加算されるという意味で、暦年課税における生前贈与加算(加算対象期間内の贈与のみを加算する仕組み)とは前提が異なると考えられます。暦年課税では一定期間より前の贈与は加算対象から外れる可能性がある一方、相続時精算課税を選択した場合には、その贈与者からの贈与は基本的に期間を問わずすべて加算対象になるという違いがあるとされています。
暦年課税と相続時精算課税は、いずれか一方を選択する制度であり、同じ贈与者からの贈与について両方を併用することはできないとされています。どちらを選択するかによって、生前贈与加算の対象となる範囲や、贈与税の計算方法そのものが変わってくるため、贈与を検討する段階でどちらの制度を利用するかをあらかじめ整理しておくことが望ましいといわれています。
なお、相続時精算課税制度についても2024年の税制改正によって見直しが行われ、新たに基礎控除の仕組みが設けられるなど、暦年課税とは別の形で使いやすさが見直されたとされていますが、その詳細な内容については別の機会に整理することとし、本記事ではあくまで生前贈与加算との対比という観点にとどめておきたいと思います。
実務上重要なのは、暦年課税による生前贈与加算の仕組みと、相続時精算課税による加算の仕組みは、いずれも「生前に贈与した財産を相続税の計算に取り込む」という点では共通していても、その対象範囲や計算方法が異なるという点を理解しておくことだと考えられます。両制度の違いを踏まえたうえで、どちらの課税方式を選択するのが望ましいかは、贈与の目的や金額、贈与を行う期間の長さなどを踏まえて個別に検討する必要があるといわれています。
また、2024年の改正では相続時精算課税制度にも新たに年110万円程度の基礎控除の仕組みが設けられたとされ、この基礎控除の範囲内の贈与については、相続時精算課税を選択していても相続財産への加算対象にはならないといわれています。これは、基礎控除の範囲内であっても加算対象期間内であれば相続財産に加算され得る暦年課税の生前贈与加算とは異なる取り扱いであり、この違いも両制度を比較するうえで押さえておきたいポイントのひとつだと考えられます。
加算される期間の違い
暦年課税による生前贈与加算は、相続開始前の一定期間(改正後は最大7年)内の贈与に限って加算対象になるという、期間による限定が設けられている点が特徴だとされています。これに対し、相続時精算課税を選択した場合には、選択後に行われた贈与について期間の制限なく相続財産に加算されるという違いがあるといわれています。
この違いから、贈与を開始する時期が贈与者の年齢や健康状態から見て相続開始まで一定の期間が見込める場合には、暦年課税による贈与を継続することで、いずれ加算対象期間の外側に出る贈与を積み重ねられる可能性があると考えられます。一方、相続時精算課税を選択した場合には、そうした期間による加算対象外の余地は基本的に生じない点を理解しておく必要があります。
どちらの制度がより有利かは、贈与を行う期間の長さや金額、財産の種類などによって異なると考えられるため、単純にどちらが優れているというものではなく、状況に応じた検討が必要だといわれています。
制度選択にあたっての基本的な考え方
暦年課税と相続時精算課税のどちらを選択するかは、贈与者と受贈者の関係、贈与を予定している財産の種類や金額、そして贈与を継続できる見込みの期間などを踏まえて検討することが望ましいとされています。特に、将来値上がりが見込まれる財産を早めに移転したい場合と、毎年少しずつ財産を移転していきたい場合とでは、適した制度が異なる可能性があるといわれています。
いずれの制度を選択する場合であっても、一度相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻すことができないとされているため、選択にあたっては将来の見通しも含めて慎重に検討することが望ましいと考えられます。
本記事では生前贈与加算(暦年課税)を中心に扱っているため、相続時精算課税制度そのものの詳細な仕組みについては、必要に応じて別途確認することをおすすめします。
加算される贈与財産の評価方法
生前贈与加算の対象となる財産の価額は、原則として贈与を受けた時点での評価額を基準にするとされています。相続開始時点の価額ではなく、あくまで贈与が行われた時点における財産の評価額を用いて相続財産に加算するという考え方が採られているようです。
この評価時点の違いは、財産の種類によっては相続税額に大きな影響を与える可能性があるといわれています。たとえば、贈与を受けた時点では評価額が低かった財産が、その後値上がりして相続開始時点では高い価額になっていたとしても、生前贈与加算にあたっては贈与時点の低い評価額で加算されることになると考えられます。逆に、贈与時点では高かった財産の価額が、その後値下がりしていた場合には、相続開始時点の実勢価額よりも高い評価額で加算されることになる可能性がある点にも注意が必要だといわれています。
不動産や自社株式など、時間の経過とともに価値が変動しやすい財産を贈与する場合には、この評価時点の違いが結果として有利にも不利にも働き得るという点を理解しておくことが重要だと考えられます。将来値上がりが見込まれる財産をあえて早い段階で贈与しておくことで、相続税の計算上は低い評価額のまま加算されることを期待するという考え方も、相続税対策の一つの視点として語られることがあるようです。
また、贈与を受けた財産をその後売却したり、別の財産に組み替えたりしていたとしても、生前贈与加算の対象となる価額は、あくまで贈与を受けた時点における当該財産の評価額であるとされています。贈与を受けた財産が既に手元になくなっていたとしても、加算の計算自体は影響を受けないと考えられるため、贈与時点の評価額を正確に記録として残しておくことが実務上重要になるといわれています。
現金の贈与であれば評価額の算定に迷うことは少ないと考えられますが、不動産や非上場株式など評価に専門的な判断を要する財産を贈与した場合には、贈与時点でどのように評価したかという記録(贈与税の申告書や評価明細など)を保管しておくことが、将来の相続税申告における加算額の算定を円滑にするうえで役立つと考えられます。
なお、加算対象期間が7年に延長されたことに伴い、贈与時点からより長い年数が経過した後に相続が発生するケースが増えると見込まれるため、贈与時点の評価資料をより長期間にわたって保管しておく必要性が高まっていると考えられます。資料の紛失や散逸を防ぐためにも、贈与のたびに評価の根拠となる資料を整理し、まとめて保管しておくことが望ましいといわれています。
また、評価額の算定にあたって専門的な判断が必要になる財産については、贈与の時点で第三者による評価の記録を残しておくことが、後日の相続税申告における確認作業を円滑にするうえで有効だと考えられます。特に、相続開始までの期間が長くなるほど、当時の評価根拠を関係者の記憶だけに頼ることは難しくなっていくと考えられるため、書面や電子データの形で保存しておくことが望ましいといわれています。
贈与時点の評価額を用いる原則
生前贈与加算における評価の原則は、贈与を受けた時点での財産の価額をそのまま用いるという点にあるとされています。これは、贈与税の計算においてもその時点の評価額を用いていることと整合性を取るための考え方だといわれています。
この原則があることで、相続開始時点の評価額をあらためて算定し直す必要がなく、既に贈与税の申告等で確定している評価額をそのまま利用できるという実務上のメリットがあると考えられます。一方で、贈与時点の評価資料が手元に残っていない場合には、あらためて当時の評価額を算定し直す必要が生じる可能性があり、手間がかかることも考えられます。
特に、贈与税の基礎控除の範囲内で申告を行っていなかった贈与については、評価額を裏付ける公式な資料が作成されていないことも多いと考えられるため、贈与を行った時点でその都度、評価の根拠となる資料(不動産であれば路線価図の写しなど)を残しておくことが望ましいといわれています。
財産の種類による評価の留意点
現金や預貯金の贈与については、贈与時点の金額がそのまま評価額になるため、評価をめぐる論点は比較的少ないと考えられます。一方、不動産の贈与については、贈与時点の路線価や倍率方式による評価額を確認し、その資料を保管しておく必要があるといわれています。
非上場株式の贈与についても、贈与時点における会社の決算内容などをもとに評価額を算定することになるため、評価の根拠となる決算書類等を保管しておくことが望ましいと考えられます。株式のように評価額が変動しやすい財産については、贈与のタイミングによって加算される価額が大きく異なる可能性がある点も踏まえておく必要があります。
上場株式の贈与については、贈与日の終値等を基準に評価額が定まるとされており、比較的評価の根拠を確認しやすい財産のひとつだといわれています。いずれの財産であっても、贈与時点の評価資料を整理して保管しておくことが、将来の相続税申告を円滑に進めるうえで役立つと考えられます。
申告実務への影響と対策の考え方
加算対象期間が7年に延長されたことにより、相続税の申告にあたって確認しなければならない過去の贈与の範囲が広がったと考えられます。これまでは相続開始前3年分の贈与を確認すれば足りていた場面でも、今後は最長で7年分の贈与記録を確認する必要が生じる可能性があり、申告実務における確認作業の負担が増していると指摘されています。
この確認作業を円滑に進めるためには、贈与を行うたびに、いつ、誰に、どのような財産を、どの程度の評価額で贈与したのかを記録として残しておくことが重要だといわれています。贈与契約書の作成や、金融機関の振込記録の保管、不動産であれば登記事項証明書や評価資料の保管など、日頃からの記録の積み重ねが、将来の相続税申告における加算額の算定を大きく左右すると考えられます。
また、加算対象期間が延びたことで、相続開始よりもかなり前に行われた贈与についても相続財産に取り込む必要が生じる場合があるため、遺産分割の話し合いにおいても、過去の贈与の内容を相続人間で共有しておくことが望ましいといわれています。特定の相続人だけが多額の生前贈与を受けていたことが、相続開始後になって初めて他の相続人に知られるようなケースでは、遺産分割の話し合いが難航する要因になることもあると考えられます。
生前贈与加算によって相続財産に加算された贈与財産は、特別受益の有無や遺産分割の公平性を議論する場面でも話題にのぼることがあるといわれています。もっとも、生前贈与加算はあくまで相続税の計算上のルールであり、遺産分割における財産の取り扱いとは別の枠組みで検討されるべき事柄だとされていますが、実務上は両者が関連して議論されることも少なくないようです。
申告実務の観点からは、被相続人が生前にどのような贈与を行っていたかを、相続開始後にあらためて調査する必要が生じるケースも増えていると考えられます。預貯金の取引履歴を過去に遡って確認したり、不動産の名義変更の履歴を確認したりする作業には相応の時間がかかることもあるため、申告期限までの準備をできるだけ早く始めることが望ましいといわれています。
こうした確認作業の増加を踏まえると、生前贈与を行う本人だけでなく、将来相続人になる可能性のある家族の側でも、贈与の記録を日頃から共有し、整理しておく意識を持つことが、円滑な相続税申告につながると考えられます。
加えて、申告実務の現場では、被相続人の預貯金口座の取引履歴を数年分にわたって取り寄せ、贈与に該当しそうな入出金を一件ずつ確認していく作業が必要になることも少なくないといわれています。加算対象期間が延びたことで、確認すべき取引の件数自体が増える可能性があり、結果として申告書の作成に着手できる時期が後ろ倒しになるおそれもあると指摘されています。こうした事情からも、資料の収集や確認作業には、これまで以上に時間的な余裕を持って取り組むことが望ましいと考えられます。
贈与の記録を残しておくことの重要性
暦年課税による贈与を長期間にわたって継続する場合、途中で贈与契約書を作成し忘れたり、資金移動の記録が曖昧になったりすることがあると考えられます。特に、加算対象期間が7年に延びたことで、より長い期間にわたる贈与の記録を整理し続ける必要が生じている点は、これまで以上に意識しておきたいポイントだといわれています。
贈与を行うたびに、贈与契約書を作成し、実際の資金移動を記録に残しておくことは、将来の相続税申告において加算対象となる贈与の範囲や金額を正確に把握するうえで欠かせない作業だと考えられます。口頭のみでの贈与や、記録の残らない現金の手渡しなどは、後になって贈与の事実や時期を証明することが難しくなる可能性があるといわれています。
また、贈与を受けた側においても、受け取った財産をどのように管理しているかを整理しておくことが望ましいとされています。贈与を受けた資金が、贈与者名義の口座に残ったままになっているような場合には、いわゆる名義預金の問題として、そもそも贈与が成立していたかどうかが問われる可能性もあると考えられます。
遺産分割への影響と相続人間の情報共有
生前贈与加算によって相続財産に加算される贈与財産があると、相続税の課税価格全体が増加し、各相続人が納めるべき相続税額にも影響が及ぶことになると考えられます。特定の相続人が多額の生前贈与を受けていた場合、その贈与財産が相続税額全体を押し上げる要因になり得るため、相続人間であらかじめ贈与の内容を共有しておくことが望ましいといわれています。
遺産分割の話し合いにおいては、生前贈与加算の対象となる贈与財産と、遺産分割における特別受益の考え方とが混同されやすい場面もあるとされています。両者は目的も枠組みも異なるものであるため、相続税の計算上どの財産が加算対象になるのかという点と、遺産分割における財産の取り扱いという点は、区別して整理しておくことが望ましいと考えられます。
相続人間で過去の贈与に関する情報を共有しておくことは、相続税の申告作業を円滑に進めるだけでなく、遺産分割の話し合いにおける誤解や不信感を減らすうえでも役立つと考えられます。
特に、加算対象期間が7年に延びたことにより、相続開始のかなり前に行われた贈与についても話題にのぼる可能性が高まったと考えられます。当事者である贈与者や受贈者にとっては当然の経緯であっても、他の相続人からは初めて知る情報として受け止められることもあるため、贈与の背景や理由についてもあわせて共有しておくことが、円滑な話し合いにつながると考えられます。
生前贈与加算を踏まえた対策の考え方
加算対象期間が7年に延長されたことを踏まえると、暦年課税による贈与を相続税対策として活用する場合には、これまで以上に早い段階から計画的に贈与を開始することの意味合いが増していると考えられます。相続開始のタイミングを正確に予測することはできないものの、早めに贈与を始めておくことで、相続開始時点において加算対象期間の外側にある贈与を積み重ねられる可能性が高まると考えられるためです。
一方で、生前贈与加算があるからといって、暦年課税による贈与そのものの意味がなくなるわけではないといわれています。加算対象期間内の贈与であっても、その財産を早めに次の世代に移転しておくことには、将来の財産管理や資産の有効活用といった観点から一定の意義があると考えられます。また、加算対象期間外の贈与については、相続税の計算上加算されずに済む可能性が高いため、長期的な視点で見れば暦年課税による贈与の効果は依然として大きいと考えられます。
対策を検討するにあたっては、贈与者本人の年齢や健康状態、家族構成、財産の内容などを総合的に踏まえながら、どの財産を、誰に、どのようなタイミングで贈与していくかを考えることが重要だといわれています。一律に「早く贈与すればよい」というだけでなく、贈与者自身の生活資金や老後の備えとのバランスも考慮しながら、無理のない範囲で贈与を進めていくことが望ましいと考えられます。
また、加算対象期間の延長を受けて、暦年課税による贈与と相続時精算課税制度のどちらを選択するのが望ましいか、あらためて検討し直す機会と捉えることもできると考えられます。それぞれの制度の特徴を踏まえたうえで、財産の種類や贈与を行う期間の見通しに応じて、適した方法を選択することが望ましいといわれています。
生前贈与加算は制度自体が複雑であり、加算対象期間の経過措置や、加算対象者の判定、非課税措置との関係など、確認すべき論点が多岐にわたるとされています。こうした複雑な制度を正確に踏まえたうえで対策を検討するには、早い段階から専門家に相談し、家族の状況や財産の内容に応じたアドバイスを受けることが有効だと考えられます。
特に、相続開始の時期を見通しにくい状況にある場合や、贈与を検討している財産の評価額が大きい場合には、贈与を実行する前の段階で相談しておくことで、加算対象期間や評価方法を踏まえたうえでの見通しを立てやすくなると考えられます。相続が発生してから慌てて過去の贈与を整理するのではなく、贈与を行う都度、記録を残し、必要に応じて専門家の意見を確認しながら進めていく姿勢が、生前贈与加算という制度と上手に付き合っていくうえで大切だといえそうです。
最終的には、生前贈与加算という制度を単に相続税を減らすためのハードルとして捉えるのではなく、財産をどのように次の世代へ引き継いでいきたいかという家族全体の方針を考えるきっかけとして活用することも一つの視点だと考えられます。制度の細かなルールを踏まえながらも、贈与者本人の意向や家族間の公平性、将来の生活設計といった要素を総合的に見据えて、無理のない形で贈与を進めていくことが、結果として円滑な相続につながると考えられます。
早めに贈与を始めることの意味
加算対象期間が7年に延びたことで、相続開始の直前になって暦年課税による贈与を始めても、相続税の計算上はその効果が限定的になる可能性が高まったと考えられます。反対に、贈与者が健康なうちから早い段階で贈与を開始しておけば、相続開始時点までに加算対象期間の外側に出る贈与を積み重ねられる可能性が高くなると考えられます。
もっとも、相続開始の時期は誰にも予測できないため、「何年前から始めれば安心か」という明確な答えがあるわけではないといわれています。あくまで早めに、かつ継続的に贈与を行うことが、加算対象期間の影響を相対的に小さくする方向に働くと考えられる、という理解にとどめておくことが適切だと考えられます。
また、早めに贈与を始めることは、相続税対策としての意味合いだけでなく、次の世代への資産承継や資産活用を早期に進められるという点でも意義があると考えられます。
専門家に相談するタイミング
生前贈与加算の仕組みは、加算対象期間の経過措置や加算対象者の判定、評価方法など複数の論点が絡み合っており、正確に理解したうえで対策を進めるには専門的な知識が求められる場面が多いと考えられます。贈与を始める前の段階、あるいは既に贈与を行っている場合には現状を整理する段階で、専門家に相談しておくことが望ましいといわれています。
特に、贈与の対象として不動産や非上場株式など評価が複雑になりやすい財産を検討している場合や、相続人以外への贈与、孫への贈与を検討している場合には、加算対象者の判定に関わる論点が生じやすいため、早めに相談しておくことで見通しを立てやすくなると考えられます。
相続が実際に発生した後であっても、過去の贈与の整理や申告作業について不安がある場合には、早い段階で相談し、必要な資料の収集や確認作業を計画的に進めていくことが、円滑な相続税申告につながると考えられます。
また、相談のタイミングは一度きりである必要はなく、贈与を開始する段階、途中で家族構成や財産状況に変化があった段階、そして相続が発生した段階など、節目ごとに現状を確認しておくことが望ましいと考えられます。継続的に状況を把握しておくことで、加算対象期間の経過措置のように制度が段階的に変化していく局面にも、落ち着いて対応しやすくなると考えられます。