[池袋] 遺産分割協議のやり直しと税務リスク|贈与税・譲渡所得税の注意点#相続税#税理士#池袋
相続税の申告や相続登記を終えた後になって、相続人全員の合意により遺産分割の内容を改めて見直したいという相談を受けることがあります。いわゆる「遺産分割のやり直し」です。私法上は当事者全員が合意すれば分割内容を見直すこと自体は可能と考えられていますが、いったん各相続人に確定的に帰属した財産を再度移転させる行為は、相続税とは別に贈与税や譲渡所得税の対象になり得るとされています。本記事では、遺産分割のやり直しがなぜ課税上のリスクを伴うとされているのか、例外的な扱いがあり得る場面、そして実務上の注意点について整理して解説します。
目次
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遺産分割のやり直しとは何を指すのか
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遺産分割協議の法的な位置づけ
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私法上の扱いと税務上の扱いは別の問題
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なぜ贈与税・譲渡所得税の問題が生じ得るのか
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相続税は当初の分割を基準に確定するという考え方
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贈与とみなされる場合と交換とみなされる場合の違い
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例外的に贈与税が問題にならないとされるケース
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錯誤・詐欺・強迫等により分割協議が無効・取消しとなる場合
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遺言の内容と異なる遺産分割をした場合との違い
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やり直しが問題になりやすい具体的な場面
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申告後に新たな遺産や記載の誤りが判明した場合との違い
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一部の相続人の希望で財産を交換したいという場合
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贈与税が課される場合に押さえておきたい考え方
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暦年課税を選択している場合の基礎控除の考え方
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相続時精算課税を選択していた場合の留意点
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不動産を再配分する場合に生じ得るその他の税・費用
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譲渡所得税における取得費・取得時期の考え方
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登記や税率面での相続との違い
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「やり直し」を避けるための実務上の工夫
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分割協議を確定させる前に検討時間を十分に確保すること
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代償分割・換価分割など別の調整方法の活用
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遺産分割のやり直しを検討する際の進め方
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税務上の影響を事前に確認することの重要性
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家庭裁判所が関与している場合の注意点
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遺産分割のやり直しとは何を指すのか
遺産分割協議とは、相続人全員が話し合いのうえで、被相続人の遺産をどのように分けるかを取り決める合意のことをいいます。いったん相続人全員が合意して遺産分割協議書を作成し、それに基づいて相続税の申告や不動産の名義変更(相続登記)まで済ませた後であっても、何らかの事情から「やはり分け方を見直したい」という声が上がることがあります。
遺産の分け方には、相続人全員の話し合いによる協議分割のほか、家庭裁判所の調停・審判による分割や、遺言による指定分割などいくつかの方法がありますが、ここで取り上げる「やり直し」は、主として協議によって成立した分割を、後になって相続人全員の新たな合意で見直す場面を念頭に置いています。
このように、いったん成立した遺産分割協議の内容を、相続人全員の新たな合意によって解除し、改めて分割をやり直すことは、私法上は可能と考えられています。遺産分割協議は相続人間の合意に基づく契約としての性質を持つと理解されており、全員が合意するのであれば、その合意を解消して新たな内容に変更すること自体は妨げられないという考え方が一般的です。逆にいえば、相続人のうち一人でも見直しに反対すれば、やり直しそのものが成立しないという点も押さえておく必要があります。
もっとも、ここで重要なのは、私法上「やり直し」が許されるかどうかという問題と、税務上どのように扱われるかという問題は、切り分けて考える必要があるという点です。相続人同士が納得して手続きを進めたとしても、税務上は思わぬ課税関係が生じることがあるため、注意が必要とされています。
なお、遺産分割のやり直しを検討する際には、対象となる財産が現金や預貯金のように分けやすいものか、不動産や非上場株式のように分けにくく評価に幅が生じやすいものかによっても、話し合いの難しさや後々のトラブルの生じやすさが変わってくると考えられます。特に不動産や自社株式など、金銭に換えにくい財産が絡む場合には、いったん決めた分け方を見直したいという相談につながりやすい傾向があるといえます。相続税の申告書には、実際にどのように分割したかを示す資料をあわせて提出することが一般的であり、いったん提出した内容と異なる分け方に変更する場合には、この点でも記録の整合性について意識しておくことが望ましいと考えられます。
また、遺産分割協議の成立から見直しの検討までにどの程度の期間が経過しているかによって、周囲の受け止め方は変わってくることがありますが、税務上の扱いは、経過期間の長さだけで自動的に決まるものではなく、あくまで再配分の実質や当初の協議に問題があったかどうかによって判断されるとされています。
遺産分割の「やり直し」という言葉自体は法令上の用語ではなく、実務上の呼び方として使われているものであり、税務上の取扱いを検討する際には、個別の事実関係に即して判断する必要があるとされています。
不動産の名義変更を伴う場合には、登記簿上の所有者情報も変更されることになるため、金融機関への届出や固定資産税の納税通知の宛先変更など、周辺の手続きにも影響が及ぶ点を踏まえておく必要があります。
遺産分割協議の法的な位置づけ
遺産分割協議は、共同相続人全員が参加し、全員の合意が成立してはじめて有効に成立するものとされています。一部の相続人を除外した協議や、意思能力に問題がある状態で行われた協議は、そもそも有効に成立していないと判断される可能性があります。
協議が有効に成立している場合、その内容は原則として相続人全員を拘束するものと考えられます。だからこそ、後になって内容を変更するには、改めて全員の合意を得る必要があるとされており、一部の相続人だけの意向で内容を変更することはできないと理解されています。また、相続人の中に未成年者や、判断能力に不安のある方が含まれる場合には、特別代理人や成年後見人など、本人に代わって意思表示を行う立場の方の関与が必要になることがあり、やり直しを検討する際にも同様の手続き面の確認が必要になると考えられます。
特別代理人の選任には家庭裁判所への申立てが必要となる場合があり、手続きに一定の時間を要することも踏まえて、余裕を持って準備を進めることが望ましいと考えられます。
特別代理人は、本人の利益を守る立場から手続きに関与するため、相続人同士の話し合いの内容によっては、選任された特別代理人の判断で合意そのものが成立しないこともあり得ます。
家庭裁判所は、特別代理人が同意した遺産分割の内容についても、本人である未成年者や被後見人の利益に反していないかを確認することがあるとされており、単に代理人を選任すれば手続きが完了するわけではない点にも留意が必要です。
私法上の扱いと税務上の扱いは別の問題
民法上、遺産分割の効力は相続開始の時にさかのぼって生じるものとされています。この考え方のもとでは、各相続人は、被相続人から直接その財産を取得したものとして扱われることになります。
しかし、この遡及効は、あくまで最初に成立した分割についての考え方であり、いったん確定した後に相続人同士の合意で行う「やり直し」にまで、当然に同じ効果が及ぶわけではないとされています。そのため、やり直し後の新たな財産の移転については、相続そのものではなく、生きている相続人同士の間で行われる別の行為として、贈与税や譲渡所得税の観点から検討する必要があるとされています。この遡及効の考え方は、相続税の課税実務においても、各相続人がどの財産をいつ取得したとみるかを判断するうえでの基礎になっているとされており、やり直しの場面でこの前提が変わってくることが、課税関係を複雑にする一因になっていると考えられます。
この整理を踏まえると、やり直しを検討する際には、単に相続人同士が合意すればよいという発想ではなく、当初の分割がどのような法的根拠に基づいて確定したのかを振り返る視点が欠かせないといえます。
こうした基礎的な考え方を理解しておくことは、遺産分割のやり直しに限らず、相続に関する手続き全般を検討するうえでも役立つと考えられます。
遡及効の考え方は、遺産分割協議書の記載方法や、財産の取得日をどう扱うかにも影響することがあるため、作成時に確認しておくとよいでしょう。
なぜ贈与税・譲渡所得税の問題が生じ得るのか
国税庁の見解として紹介されている考え方によれば、当初の遺産分割などによりいったん各相続人に具体的に帰属した財産について、分割のやり直しとして改めて再配分した場合には、一般的には、相続人同士の自由な意思に基づく贈与または交換等を意図して行われたものとみなされるとされています。そして、その意思に応じて、贈与または交換等の態様に従い、贈与税または譲渡所得等の所得税の課税関係が生じるとされています。
つまり、いったん相続によって取得したとされる財産を、相続人同士で無償にやり取りすれば贈与とみなされる可能性があり、財産と財産を交換するような形であれば、譲渡所得税の問題として扱われる可能性があるということです。書面のタイトルを「遺産分割のやり直し」としているかどうかや、当事者が贈与のつもりであったかどうかといった主観的な事情だけでなく、実際に行われた財産の移転の実態が重視されると考えられます。
この整理の背景には、相続税の申告や登記によっていったん各相続人の財産取得が確定した以上、その後の再配分は「相続」という原因に基づくものではなく、相続人同士の新たな契約(贈与や交換)に基づくものと位置づけられるという考え方があるとされています。また、対価を伴う形式(売買のような体裁)を取っていたとしても、その対価が著しく低い場合には、対価と時価との差額部分について贈与とみなされる余地があるともいわれており、形式を整えれば必ず課税を回避できるというものではない点にも注意が必要です。
たとえば、当初の分割協議で、長男が自宅の土地・建物を、二男が主に預貯金などの金融資産を取得する内容で成立していたとします。その後、長男が自宅を手放して転居したいと考えるようになり、二男との間で、自宅を二男が、金融資産の一部を長男が取得する形に改めて入れ替える場合、この入れ替えは相続人同士の新たな交換とみなされ、譲渡所得税の検討が必要になり得ると考えられます。この考え方は、相続人同士が「あくまで身内の話し合いの延長にすぎない」と捉えていたとしても変わらないとされており、税務上は、いったん確定した財産の帰属を前提に、新たな移転があったかどうかという客観的な観点から判断されることになります。
このような取扱いの背景には、対価を伴わない形での実質的な利益の移転を幅広く贈与として捉える考え方があるとされ、名目上贈与という言葉を使っていなくても、経済的な実質に着目して判断されることになります。
国税庁の見解として紹介されている考え方は、あくまで一般的な整理を示したものであり、個々の事案における贈与または交換への該当性は、具体的な事情に応じて判断されることになるとされています。
こうした整理は、相続人同士が親族間の話し合いとして行った再配分であっても、第三者との取引と同様に、客観的な財産の移転として捉えられることを示していると考えられます。
相続税は当初の分割を基準に確定するという考え方
相続税の課税価格は、相続開始時点における遺産の内容と、当初の遺産分割によって各相続人が取得した財産の内容を基礎として計算されるものと理解されています。そのため、その後に相続人同士の合意で分割内容を変更しても、既に確定した相続税の課税価格や税額そのものが当然に変わるわけではないとされています。
やり直しによって新たに生じる財産の移転は、相続税の枠組みの外側で、贈与税や譲渡所得税といった別の課税関係として検討されることになると考えられます。相続税の申告をやり直すという発想では対応できない点に留意が必要です。相続税の申告後に税務署から内容を確認される場合にも、申告時点で確定していた各相続人の取得財産が基準にされることが一般的であり、その後の任意の再配分によって、既に完了した相続税の手続きに直接影響が及ぶわけではないと考えられます。
したがって、やり直しを行ったこと自体を理由に、相続税の申告内容の訂正を税務署に求めるという対応は、通常は想定されていないと考えられます。
また、相続税の申告書に添付した遺産分割協議書の内容と、その後の実際の財産の帰属状況が食い違う状態が続くと、税務調査などの際に説明を求められることも考えられるため、変更があった場合の経緯や記録を整理しておくことが望ましいと考えられます。
贈与とみなされる場合と交換とみなされる場合の違い
再配分が無償で行われる場合には贈与とみなされる可能性がある一方、ある相続人が取得した不動産と別の相続人が取得した預貯金などを相互に交換するような形で行われる場合には、交換による譲渡があったものとして譲渡所得税の対象になり得るとされています。
実際にどちらに該当するかは、やり直しの経緯や当事者の意図、対価の有無などを総合的に判断して決まるとされており、形式的な名称だけで判断できるものではない点に留意が必要です。対価を伴う形にしていても、その額が時価に比べて著しく低い場合には、差額部分について贈与とみなされる可能性がある点もあわせて意識しておく必要があります。交換による譲渡所得税の計算では、交換によって取得した財産の時価と、手放した財産の取得費などとの差額が譲渡益として扱われる考え方が基本になるとされており、単純な贈与とは計算の枠組みが異なる点も押さえておく必要があります。
交換とみなされる場合には、譲渡益の有無や金額を判断するために、交換の対象となった財産それぞれについて時価や取得費を確認する作業が必要になり、単純な贈与のケースよりも検討の手間がかかりやすいといえます。
こうした計算の違いを踏まえると、再配分を検討する段階で、贈与として整理するのか、交換として整理するのかをあらかじめ意識しておくことが望ましいと考えられます。
対価の有無や金額を明確に記録しておくことも、後日税務署から説明を求められた際に役立つと考えられます。
例外的に贈与税が問題にならないとされるケース
もっとも、遺産分割のやり直しが常に贈与税や譲渡所得税の対象になるわけではないとされています。当初の遺産分割による財産の取得について、そもそも無効または取り消し得べき原因がある場合には、財産の帰属そのものに問題があることになるため、これについての分割のやり直しは、なお当初の遺産分割の範囲内の問題として扱われると考えられています。
具体的には、錯誤や詐欺、強迫などによって当初の分割協議が無効とされたり取り消されたりする場合が想定されます。このような場合には、いったん成立したかに見えた分割の効力そのものが失われるため、改めて行う分割は、新たな贈与や交換ではなく、本来あるべき遺産分割をやり直しているにすぎないと整理されるとされています。
ただし、こうした無効・取消しの主張が実際に認められるかどうかは、個別の事情によって判断が分かれ得る、慎重な検討を要する論点であるとされています。単に「気が変わった」という理由だけでは、無効・取消しとは認められにくいと考えられます。遺産分割協議が有効に成立したという前提を安易に覆すことは、取引の安定性の観点からも簡単には認められないとされており、無効・取消しの主張はあくまで例外的な位置づけであると理解しておく必要があります。
また、無効・取消しの主張を行う場合には、その主張を裏付ける客観的な資料や経緯の説明が求められることが多く、相続人全員が「無効にしよう」と口頭で合意しただけでは足りないと考えられます。実務上は、当初の協議が成立した経緯を丁寧に振り返り、本当に無効・取消しに該当するといえる事情があるのかどうかを慎重に見極める必要があります。相続人の一部だけがその主張をしても、他の相続人が争えば、最終的には裁判所の判断を仰ぐ必要が生じることもあり得るため、話し合いだけで円満に解決できるとは限らない点も踏まえて検討することが望ましいといえます。
無効・取消しに該当する事情がある場合でも、税務署に対してその事情を的確に説明できるよう、当時の状況を裏付ける資料をできる範囲で保管しておくことが望ましいと考えられます。
無効・取消しに該当するかどうかの判断は容易ではないため、安易に「無効を主張すれば贈与税がかからない」と考えるのではなく、慎重に検討する姿勢が求められます。
無効・取消しの主張が認められた場合には、当初の分割からやり直すことになるため、相続税の申告内容についても、必要に応じて修正申告や更正の請求などの対応を検討することになると考えられます。
錯誤・詐欺・強迫等により分割協議が無効・取消しとなる場合
遺産分割協議において、重要な事実について誤解があった場合や、他の相続人にだまされて合意してしまった場合など、意思表示に問題があると認められる事情があれば、その協議は無効または取消しの対象になり得ると考えられています。たとえば、実際には存在した重要な遺産の存在を知らされないまま合意してしまったようなケースが想定されます。
この場合のやり直しは、贈与や交換ではなく、本来の遺産分割をやり直すものとして扱われる余地があるとされていますが、実際に無効・取消原因が認められるかどうかは、個々の事案ごとの判断になるとされており、単なる後悔や不満とは区別して考える必要があります。このほか、遺産の一部について、そもそも被相続人の財産ではなかったことが後になって判明したような場合も、当初の分割協議の前提そのものが崩れる事情として、無効・取消しの主張につながり得ると考えられます。
こうした無効・取消しの主張を検討する際には、当時のやり取りの記録や、関係者の記憶が新しいうちに事情を整理しておくことが、後の説明を行いやすくするうえでも役立つと考えられます。
同様に、他の相続人から虚偽の説明を受けて合意してしまったような場合も、詐欺による意思表示として問題になり得ると考えられます。
こうした事情が疑われる場合には、早めに専門家へ相談し、証拠の整理も含めて対応方針を検討することが望ましいといえます。
遺言の内容と異なる遺産分割をした場合との違い
これとは別の場面として、特定の相続人にすべての遺産を取得させる旨の遺言書がある場合に、相続人全員の協議によって遺言の内容とは異なる分割を行うケースがあります。この場合には、遺贈を受けるはずだった相続人が事実上その遺贈を放棄し、相続人全員による遺産分割が行われたとみるのが相当とされ、贈与税は課されないという考え方が示されています。
この場面は、遺言と異なる「最初の」分割の場面であり、いったん成立した分割協議を後から「やり直す」場面とは前提が異なります。両者は結果として財産の帰属先が変わるという点では似ているように見えますが、課税関係を検討するうえでは区別して整理する必要があるとされています。遺言の内容と異なる分割をした場合であっても、遺言執行者が選任されているときは、その同意や関与が必要になる場合があるとされており、遺言の有無によって手続きの進め方が変わってくる点にも注意が必要です。
遺言執行者が選任されていない場合であっても、遺言の存在自体を踏まえた慎重な対応が必要になる点は変わらないと考えられます。
遺言の内容と異なる分割を検討する場合には、遺言そのものの有効性についても、あわせて確認しておくことが望ましいといえます。
遺言書の保管状況や検認手続きの有無についても、遺産分割の見直しを検討する前提としてあわせて確認しておくことが望ましいと考えられます。
やり直しが問題になりやすい具体的な場面
遺産分割のやり直しが話題になりやすいのは、例えば、分割協議の成立後に、当初想定していなかった財産の価値の差に気づいた場合や、特定の相続人が取得した不動産の維持管理が難しいと分かった場合、あるいは相続人間の関係が変化し、改めて分け方を調整したいと考えるようになった場合などです。事業を営んでいた被相続人の株式を承継した相続人が、後になって経営への関わり方を見直したいと考える場合なども、同様の相談につながりやすい場面と考えられます。
こうした事情は、いずれも当初の分割協議自体には無効・取消原因がなく、単に「後から見て、別の分け方の方が良かった」という性質のものであることが多いと考えられます。このような場合には、相続人全員が納得のうえで見直しを行ったとしても、前述のとおり、贈与や交換とみなされる可能性が高いとされています。
また、相続人の一部が海外に住んでいる場合や、相続後に新たに家族が増えた場合など、当初の分割協議の時点では想定していなかった生活環境の変化が、見直しの相談につながることもあります。こうした事情の変化は理解できるものであっても、税務上の扱いに直接影響するものではない点は変わらないとされています。このほか、被相続人が営んでいた事業や賃貸不動産の経営方針をめぐって、相続後に相続人同士の意見が分かれ、当初決めた担当者や持分の見直しを検討したくなるという場面も見られます。事業や収益不動産が絡む場合には、再配分に伴う税負担だけでなく、事業運営そのものへの影響も含めて検討する必要があると考えられます。
また、相続税の納税資金を確保するために、当初は特定の相続人が不動産を取得する内容で合意していたものの、想定していた売却がうまく進まず、方針を再検討したくなるという場面も見られます。
こうした事情変化そのものは、家族としてはやむを得ない面があるとしても、税務上はあくまで新たな財産移転として扱われる可能性がある点を、相続人全員があらかじめ理解しておくことが望ましいといえます。
こうした場面では、相続人同士の関係性を損なわないよう配慮しながら話し合いを進めることも重要ですが、税務上の取扱いが変わるわけではない点は、あらかじめ共有しておくことが望ましいといえます。
申告後に新たな遺産や記載の誤りが判明した場合との違い
相続税の申告後に、申告に含めていなかった新たな遺産が見つかった場合や、評価の誤りが判明した場合には、修正申告や更正の請求といった手続きによって対応することになり、これは遺産分割の「やり直し」そのものとは性質が異なる問題です。
新たに見つかった遺産についてあらためて分割協議を行うことは、既に分割済みの財産を再配分することとは区別して考えられており、この点を整理して理解しておくことが実務上重要とされています。既に分割済みの部分にまで手を広げて見直そうとすると、贈与税の問題を招きやすくなる点にも注意が必要です。これに対して、そもそも遺産の一部について分割協議自体が調っておらず、未分割のまま相続税の申告を行っていたようなケースでは、後から行う分割は「一部分割」や「追加の分割」として位置づけられ、既に分割済みの財産を再配分する場合とは異なる整理になると考えられます。
一部分割として扱われる場合であっても、既に分割済みの財産の内容にまで手を加えると、その部分については別途、贈与や交換の問題が生じ得る点は変わらないと考えられます。
新たな遺産が見つかった場合には、まずその財産を相続税の申告に反映させる手続きを優先し、既存の分割内容の見直しとは切り分けて考えることが望ましいといえます。
新たな遺産の内容によっては、相続税の追加の納税や延滞税の発生が問題になる場合もある点にも留意が必要です。
一部の相続人の希望で財産を交換したいという場合
例えば、当初の分割で不動産を取得した相続人が、後になって別の相続人が取得した預貯金と交換したいと希望するようなケースも考えられます。このような交換は、相続人同士の新たな合意に基づく財産の移転として、譲渡所得税の観点からの検討が必要になるとされています。
特に不動産が関係する場合には、取得時期や取得費の考え方も変わってくるため、慎重な確認が求められます。単独で取得していた不動産を共有名義に変更するといった見直しについても、同様に再配分の一種として扱われ得る点に留意しておく必要があります。不動産の共有関係を解消するために、共有者の一人が他の共有者の持分を取得するような調整も、実質的には財産の交換や譲渡に当たると考えられるため、遺産分割のやり直しの一場面として同様の注意が必要です。
共有関係の解消を検討する際には、譲渡所得税だけでなく、将来的な管理や処分のしやすさといった観点もあわせて考慮しておくことが望ましいといえます。
交換を検討する際には、交換の対象となる財産の評価額に大きな差がないかどうかも、あらかじめ確認しておくことが望ましいと考えられます。
評価額に差がある場合には、その差額部分について贈与税が問題になる可能性がある点も、交換を検討する前にあわせて確認しておく必要があります。
贈与税が課される場合に押さえておきたい考え方
やり直しによる再配分が贈与とみなされる場合、贈与税の計算方法としては、暦年課税と相続時精算課税という二つの制度が関係してきます。暦年課税を選択している場合には、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から、基礎控除額(110万円)を差し引いた残額に対して贈与税が課されるとされています。
暦年課税の税率には、父母や祖父母などの直系尊属から18歳以上の子や孫が贈与を受ける場合に適用される特例税率と、それ以外の場合に適用される一般税率とがあるとされています。遺産分割のやり直しに伴う再配分は、多くの場合、兄弟姉妹など同世代の相続人同士の間で行われるため、直系尊属からの贈与を前提とする特例税率の対象にはならず、相対的に税負担が重くなりやすい一般税率が適用される可能性が高い点に注意が必要とされています。
基礎控除の範囲内であれば贈与税は課されないことになりますが、不動産のような高額な財産を再配分する場合には、基礎控除を大きく超える可能性が高く、相応の贈与税負担が生じ得る点に注意が必要です。贈与税の税率は、贈与を受けた財産の価額が大きくなるほど段階的に高くなる仕組みになっているとされており、再配分する財産の価額によっては、当初想定していたよりも大きな税負担になる可能性がある点は、あらかじめ確認しておくことが望ましいと考えられます。
贈与税は、財産をもらった人(受贈者)が申告・納税の義務を負うとされています。遺産分割のやり直しによって新たに財産を取得した相続人が、贈与税の負担者になり得るという点は、再配分の内容を検討する際にあらかじめ共有しておくことが望ましいと考えられます。贈与税の申告書には、財産の内容や評価額を記載する必要があり、相続税の申告とは別に、あらためて書類を準備する必要がある点も理解しておくべきといえます。
贈与税の税率構造は相続税と異なり、比較的低い金額区分から段階的に税率が上がっていく仕組みとされており、相続税の感覚で影響を見積もると想定より重い負担になることもあるとされています。
贈与税の負担が大きくなりそうな場合には、再配分の対象や範囲を見直す、あるいは複数年に分けて調整するといった方法も選択肢として考えられますが、いずれも個別の事情に応じた慎重な検討が必要です。
贈与税の負担を見積もる際には、対象となる財産の評価方法についても、相続税評価額をそのまま使えるとは限らない場合があるため、あわせて確認しておくことが望ましいと考えられます。
暦年課税を選択している場合の基礎控除の考え方
暦年課税では、贈与を受けた年の1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与財産の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた金額を基礎に贈与税額が計算されるとされています。この基礎控除は財産をもらう人(受贈者)ごとに1年間で1回だけ適用されるものとされており、同じ年に他の贈与を受けていれば、それらも合算して判定されることになります。
再配分による贈与がこの基礎控除の範囲に収まるかどうかは、財産の評価額によって左右されるため、個別に確認する必要があります。不動産のように評価額が高くなりやすい財産の場合には、基礎控除だけでまかなえないことが多いと考えられます。基礎控除を超える贈与を受けた場合には、贈与税の申告書を提出する必要があるとされており、申告を怠ると、後日税務署から指摘を受け、加算税や延滞税といった追加の負担が生じる可能性もある点に注意が必要です。
贈与税の申告書には、贈与を受けた財産の内容や評価額を記載する必要があり、不動産であれば評価明細書など、財産の種類に応じた書類の準備も必要になると考えられます。
基礎控除の金額を把握しておくことは、再配分の規模を検討するうえでの一つの目安になると考えられます。
基礎控除を超えるかどうかの判断に迷う場合には、財産の評価方法も含めて、早めに専門家へ確認することが望ましいといえます。
相続時精算課税を選択していた場合の留意点
被相続人から生前に相続時精算課税を選択して贈与を受けていた相続人がいる場合、その制度の仕組みが、やり直しによる再配分の場面でも関係してくる可能性があります。相続時精算課税では、基礎控除額(110万円)と特別控除額(限度額2,500万円)を控除した後の金額に、一律の税率(20パーセント)を乗じて贈与税額を計算する仕組みとされています。
ただし、相続時精算課税は特定の贈与者と受贈者の組み合わせについて、いったん選択すると、その後の贈与についても継続して適用される制度であるため、やり直しに伴う再配分がある場合には、そもそも相続人同士の間の贈与に相続時精算課税を適用できるのかどうかを含め、制度の適用関係を事前に確認しておくことが望ましいと考えられます。相続時精算課税を選択した場合、その後にその贈与者から贈与を受ける際には暦年課税の基礎控除を使うことができなくなるとされており、将来にわたる贈与の方針にも影響することを踏まえて、やり直しの場面でも慎重な検討が求められます。
相続時精算課税を選択しているかどうかは、過去の贈与税の申告状況を確認しなければ分からないこともあるため、やり直しを検討する前に、関係する書類を整理しておくことが望ましいといえます。
相続時精算課税の適用を受けていたかどうかが不明な場合には、過去の申告書の控えを確認するなどして、事実関係を整理しておくことが望ましいといえます。
なお、相続時精算課税を適用した財産は、将来その贈与者について相続が発生した際に、相続税の課税価格に加算して精算する仕組みになっているとされており、目先の贈与税だけでなく将来の相続税にも影響が及ぶ制度である点をあわせて理解しておく必要があります。
不動産を再配分する場合に生じ得るその他の税・費用
やり直しによる再配分の対象が不動産である場合には、贈与税や譲渡所得税に加えて、登記や地方税に関する負担も検討しておく必要があります。相続による所有権移転の登記では、登録免許税の税率が比較的低く設定されているとされる一方、贈与を原因とする所有権移転の登記では、これより高い税率が適用されるとされています。
また、不動産取得税についても、相続によって取得した場合には非課税とされている一方、贈与によって取得した場合には課税の対象になるとされています。やり直しによる再配分が贈与や交換と扱われる場合には、こうした登記関連の税負担も、相続によって取得した場合と比べて重くなる可能性がある点に注意が必要です。
さらに、譲渡所得税についても、居住用財産の売却などで用意されている各種の特例が、相続人同士の再配分の場面にそのまま当てはまるとは限らないとされています。当初想定していた税負担よりも重くなる可能性があることを見込んだうえで、再配分の是非を検討することが望ましいと考えられます。
特例の適用を受けて相続税の申告をしていた財産(小規模宅地等の特例の対象となった土地など)が再配分の対象になる場合には、その特例の適用要件との関係についても、あわせて確認しておく必要があると考えられます。特例の前提となっていた事情が変わることで、思わぬ影響が生じる可能性もゼロではありません。非上場株式や農地、事業用資産のように、そもそも評価や名義変更に専門的な手続きが必要な財産が再配分の対象になる場合には、各種の納税猶予制度の適用関係が変わってしまう可能性もあるとされ、通常の不動産以上に慎重な確認が必要になると考えられます。
賃貸不動産が再配分の対象になる場合には、賃借人との契約における貸主の地位の引継ぎや、金融機関からの借入金がある場合の債務者変更の手続きなど、税務以外の実務対応も別途必要になる点にあわせて留意しておく必要があります。
こうした費用や税負担の全体像を把握しないまま再配分を進めてしまうと、想定していたよりも手元に残る財産が少なくなってしまう可能性もあるため、事前の確認が重要です。
こうした複数の税目にまたがる検討を行う際には、それぞれの制度の担当窓口や必要書類が異なることも多いため、全体像を把握したうえで、順序立てて確認を進めることが望ましいと考えられます。
譲渡所得税における取得費・取得時期の考え方
不動産の交換によって譲渡所得税が問題になる場合、譲渡所得の計算にあたっては、取得費や取得時期をどのように捉えるかが論点になります。一般的には、被相続人が取得した時期や取得費を引き継いで計算する場合と、やり直しによる交換の時点を基準に計算する場合とで結論が異なり得るため、慎重な検討が必要とされています。
取得費が古い資料の紛失などにより明らかでない場合には、一定の方法で概算の取得費を用いる取扱いもあるとされていますが、実際の取得費より低く算定されることが多く、譲渡益が大きく計算されがちである点にも注意が必要です。不動産の価額が大きい場合には、譲渡所得税の負担も相応に大きくなる可能性があるため、事前の試算が望ましいと考えられます。また、譲渡益が生じる場合には、原則として譲渡があった年の翌年に確定申告を行う必要があるとされており、贈与税の申告とあわせて、それぞれの手続きの期限を確認しておくことが望ましいと考えられます。
取得費に関する資料としては、購入時の契約書や領収書などが挙げられますが、相続財産の場合には被相続人の代からの資料を確認する必要があり、資料の有無を早めに確認しておくことが望ましいと考えられます。
取得費や取得時期の考え方によって譲渡益の額が大きく変わることもあるため、専門家に相談しながら慎重に確認することが望ましいと考えられます。
譲渡所得の計算にあたっては、取得費だけでなく、仲介手数料などの譲渡に直接要した費用も、一定の範囲で譲渡益から差し引くことができるとされており、あわせて確認しておくことが望ましいと考えられます。
登記や税率面での相続との違い
相続による所有権移転の登記に適用される登録免許税の税率は、贈与や売買などその他の原因による移転に比べて低く設定されているとされています。やり直しによる再配分が贈与や交換とみなされる場合には、相続を原因とする移転よりも登記費用の負担が大きくなる可能性がある点をあらかじめ理解しておくことが望ましいといえます。
不動産取得税についても同様に、相続による取得と贈与による取得とで扱いが異なるとされているため、あわせて確認しておくとよいでしょう。登記手続きにあたっては、贈与や交換を原因とする所有権移転登記として申請することになり、相続を原因とする登記とは必要書類や記載内容も異なってくると考えられるため、名義変更にあたっては司法書士など登記の専門家への確認もあわせて必要になると考えられます。
登記費用や税負担の見積もりについては、対象となる不動産ごとに固定資産税評価額などの資料を確認しながら、個別に試算しておくことが望ましいといえます。
登記費用の見積もりを事前に行っておくことで、再配分に伴う総合的な費用感を把握しやすくなると考えられます。
登記の専門家である司法書士に早めに相談し、必要な書類や手続きの流れを確認しておくことが望ましいと考えられます。
「やり直し」を避けるための実務上の工夫
このように、いったん成立した遺産分割協議をやり直すことには、想定外の税負担が生じるリスクが伴うとされています。そのため、実務上は、最初の遺産分割協議の段階で、内容を十分に検討し、後になってから「やはり見直したい」という事態を避けるよう努めることが望ましいと考えられます。
具体的には、各相続人が取得する財産の内容だけでなく、その財産を維持・管理していくうえでの負担や、将来的な売却のしやすさなども含めて、分割協議の段階でよく話し合っておくことが重要とされています。感情的な行き違いから急いで合意してしまうことも見直しにつながりやすいため、時間をかけて全員の納得を得ることも大切な視点です。
加えて、分割協議書を作成する段階で、なぜその内容で合意したのかという理由や背景を簡単に書き残しておくことも、後になって「聞いていた話と違う」といった行き違いを防ぐうえで役立つと考えられます。合意の経緯が明確になっていれば、仮に見直しの必要が生じた場合でも、無効・取消しに当たる事情があるかどうかを判断しやすくなるといえます。専門家に相談する場合には、税務上の影響だけでなく、家族関係や将来の資産管理の方針も含めて、幅広い視点から助言を受けられるよう、早めに相談の機会を持つことが望ましいと考えられます。
また、相続人全員が同じ資料や説明をもとに話し合うことができるよう、財産目録や評価資料をあらかじめ共有しておくことも、後になって認識の相違から見直しの話が持ち上がるのを防ぐ一助になると考えられます。
分割協議の内容を決める段階で、将来的に生じ得る事情の変化についてもある程度話し合っておくことで、実際に事情が変わった際の対応をスムーズに進めやすくなると考えられます。
こうした工夫を重ねることは、遺産分割のやり直しに伴う税務上のリスクを避けるだけでなく、相続人同士の良好な関係を維持するうえでも役立つと考えられます。
分割協議を確定させる前に検討時間を十分に確保すること
相続税の申告期限が近づいてくると、分割協議を急いでまとめようとする傾向が生じやすいとされています。しかし、内容を十分に検討しないまま協議をまとめてしまうと、後になって「やはり見直したい」という事態につながりやすくなると考えられます。
可能な範囲で早い段階から相続人間で話し合いを始め、財産の内容や評価額を確認しながら、納得のいく分割内容を検討する時間を確保することが望ましいといえます。話し合いの過程や合意した内容をメモや議事録の形で残しておくことも、後になって認識の食い違いが生じるのを防ぐうえで役立つと考えられます。相続人の中に遠方に住んでいる方や、平日の日中に時間を取りにくい方がいる場合には、オンラインでの話し合いの機会を設けるなど、全員が納得したうえで合意できるよう工夫することも、後々の見直しを避けるうえで有効と考えられます。
話し合いの場を設ける際には、特定の相続人の意見だけが通りやすくならないよう、進行役を決めておくなどの工夫も、円滑な合意形成に役立つと考えられます。
また、相続開始から一定期間が経過した後に、あらためて財産状況を確認し合う機会を設けておくことも、認識のずれを早期に発見するうえで有効と考えられます。
書面化にあたっては、専門用語をできるだけ避け、後から見返しても相続人全員が分かりやすい記載を心がけることが望ましいといえます。
代償分割・換価分割など別の調整方法の活用
特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人には金銭を渡すことで調整する代償分割や、遺産を売却して代金を分配する換価分割など、当初の分割協議の中で調整方法を工夫することによって、後から「やり直し」を検討せざるを得なくなる事態を避けられる場合があります。
代償分割を選ぶ場合には、代償金を準備できるかどうかをあらかじめ確認しておくこと、換価分割を選ぶ場合には、売却までにかかる期間や市場の状況も考慮しておくことが望ましいと考えられます。これらの方法をあらかじめ検討しておくことは、後になってからの再配分に伴う税務上のリスクを避けるうえでも、有効な選択肢の一つと考えられます。代償分割・換価分割のいずれを選ぶ場合であっても、あらかじめ相続人全員でその方法を選んだ理由を共有しておくことが、後になって「やはり違う方法にしたい」という話が出るのを防ぐことにつながると考えられます。
代償金の金額や換価分割による売却条件についても、あらかじめ相続人全員で共有しておくことで、後になって金額や条件をめぐる認識の相違が生じるのを防ぎやすくなると考えられます。
調整方法を選ぶ際には、相続人それぞれの生活状況や希望も踏まえながら、無理のない内容にしておくことが望ましいといえます。
調整方法によって必要な資金や時間、手続きの手間が異なる点も、あらかじめ相続人全員で共有しておくことが望ましいと考えられます。
遺産分割のやり直しを検討する際の進め方
それでもなお、相続人全員が分割内容の見直しを希望する事情が生じることはあり得ます。そのような場合には、私法上やり直しが可能かどうかだけでなく、税務上どのような課税関係が生じ得るのかを、実行に移す前にできる限り確認しておくことが望ましいと考えられます。
特に、再配分の対象となる財産の種類や価額によって、贈与税や譲渡所得税、登記関連の費用の負担が大きく変わってくるため、思い込みで手続きを進めるのではなく、事前の確認を慎重に行うことが重要とされています。相続人全員が同じ理解のもとで手続きを進められるよう、あらかじめ想定される税負担を共有しておくことも、後々のトラブルを避けるうえで役立つと考えられます。
最終的に見直しを行うと決めた場合には、新しい合意の内容を改めて書面にまとめ、必要に応じて贈与税の申告や不動産の名義変更の手続きを進めることになります。もとの遺産分割協議書とあわせて、新しい合意の書面も大切に保管しておくことが望ましいと考えられます。やり直しを行うこと自体を否定する必要はありませんが、いったん成立した合意には一定の重みがあることを踏まえ、見直しの必要性と、それに伴う税負担とを比較したうえで、慎重に判断することが望ましいといえます。
見直しを検討する際には、対象となる相続人だけでなく、他の相続人にとって不利益が生じないかどうかも含めて、全体のバランスを意識しながら話し合いを進めることが望ましいと考えられます。
いずれにしても、遺産分割のやり直しは、相続人全員にとって影響の大きい判断であるため、感情面だけでなく、税務・法務の両方の観点から落ち着いて検討することが望ましいといえます。
本記事で取り上げた内容は一般的な考え方の整理であり、実際の事案では財産の種類や相続人の状況によって結論が異なり得るため、個別の状況に応じた確認が欠かせない点にあらためて留意しておく必要があります。
税務上の影響を事前に確認することの重要性
遺産分割のやり直しを実行に移す前に、想定している再配分によってどのような税負担が生じ得るのかを試算しておくことは、後になって想定外の税負担に直面することを避けるうえで重要とされています。
特に不動産が含まれる場合には、贈与税・譲渡所得税に加えて登記関連の費用も含めて、全体像を把握しておくことが望ましいと考えられます。財産の種類ごとに影響が異なるため、財産を一つずつ整理しながら確認していく姿勢が求められます。試算にあたっては、財産の評価方法によって税額が変わってくることもあるため、複数の前提で試算してみて、想定される負担の幅を把握しておくことも一つの方法と考えられます。
試算の結果、想定していた見直しによる税負担が大きいと分かった場合には、再配分の方法や対象財産を見直すなど、別の選択肢も含めて検討することが望ましいと考えられます。
試算を行う際には、贈与税だけでなく、登記費用や譲渡所得税なども含めた総合的な負担感を確認しておくことが望ましいと考えられます。
こうした試算や検討の過程を記録として残しておくことは、後になって、なぜその判断に至ったのかを振り返る際にも役立つと考えられます。
家庭裁判所が関与している場合の注意点
遺産分割が家庭裁判所の調停や審判を経て成立している場合には、その内容を相続人同士の合意だけで変更できるかどうかについて、通常の協議による分割とは異なる考慮が必要になる場合があるとされています。
調停や審判を経た分割内容の見直しを検討する場合には、私法上の手続き面と税務上の取扱いの両方について、個別に確認しながら慎重に進めることが望ましいといえます。調停や審判の内容を変更したい場合には、あらためて家庭裁判所に申し立てるべきかどうかも含めて検討が必要になることがあり、私法上の手続きが複雑になりやすい点もあわせて理解しておく必要があります。いずれの場合も、相続人だけで判断を進めるのではなく、状況に応じて専門家の助言を早めに求めることが、思わぬ課税関係を避けるうえで有用と考えられます。
調停や審判を経た分割については、当事者だけで内容を変更したと扱ってよいのか判断が難しい場合もあるため、早い段階で専門的な助言を受けることが望ましいと考えられます。
家庭裁判所が関与する手続きについては、通常の協議による分割よりも時間や手間がかかることが多いとされているため、余裕を持ったスケジュールで検討を進めることが望ましいといえます。
早めに専門家へ相談しておくことで、税務・法務の両面から選択肢の幅を広げられる可能性がある点も踏まえておくとよいでしょう。