[池袋] 不動産の相続税評価はどう決まる?路線価・倍率方式から特例適用までの基本#相続税#税理士#池袋
不動産は現金や預金と異なり、相続税を計算する際の評価額が時価とそのまま一致するとは限らない財産です。土地は路線価方式や倍率方式、建物は固定資産税評価額をもとに評価され、土地の形状や利用状況によって評価額が調整される場合もあります。本コラムでは、不動産の相続税評価がどのような考え方にもとづいて行われるのか、基本的なしくみを整理して解説します。
目次
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不動産は評価が複雑な財産であること
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路線価と倍率、評価方式は地域で異なる
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時価と相続税評価額が一致しない理由
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土地の評価方法(1) 路線価方式のしくみ
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路線価図の基本的な読み方
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正面路線と加算・減算の考え方
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土地の評価方法(2) 倍率方式のしくみ
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固定資産税評価額と評価倍率表の使い方
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地目の認定と現況にもとづく評価
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土地の形状による評価額の補正
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不整形地・間口狭小地の補正
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奥行きに関する補正(長大地・がけ地など)
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貸地・貸家建付地の評価と借地権割合
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借地権割合の考え方
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貸家建付地評価と賃貸割合の影響
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建物の評価は固定資産税評価額が基準
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固定資産税評価額を用いる理由と確認方法
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貸家の評価と特殊なケースの取り扱い
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評価額算出後に検討する小規模宅地等の特例
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評価額の算出と特例適用は別の作業
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特例適用の可否が納税額に与える影響
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不動産評価を専門家に依頼する重要性
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自己判断での評価に伴うリスク
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税理士による現地確認と補正適用のチェック
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不動産は評価が複雑な財産であること
相続税を計算する際には、亡くなった方が保有していたすべての財産をあらためて金銭的な価値に見積もり、その合計額をもとに税額を算出します。預貯金であれば通帳の残高がそのまま評価額になり、上場株式であれば取引所での市場価格を基準にすれば評価が完了します。ところが不動産については、このような単純な当てはめが通用しません。土地や建物には全国共通の取引相場というものが存在せず、同じ広さの土地であっても、立地や形状、接している道路の状況、実際の利用のされ方によって価値が大きく異なってくるためです。
このため相続税の計算においては、国税庁が定める評価方法にしたがって、土地や建物ごとに評価額を個別に算出する仕組みがとられています。土地については路線価方式または倍率方式のいずれかを用いるのが原則とされており、建物については固定資産税評価額を基礎とする方法が採用されています。こうして計算された評価額は、実際に不動産を売買する際の時価(実勢価格)とは必ずしも一致せず、一般的には時価よりもやや低めの水準になるといわれています。
もっとも、評価額が時価と異なるからといって、納税者側の判断で自由に金額を調整できるわけではありません。評価の方法や各種の補正の考え方は、国税庁が公表している財産評価基本通達という基準に細かく定められており、土地の形状や道路との接し方、利用の実態などに応じて、決められた手順にしたがって計算を進める必要があります。相続税の申告にあたっては、こうした評価の全体像をまず理解したうえで、対象となる不動産がどの評価方法にあてはまるのかを見極めることが最初の一歩になります。
続くセクションでは、土地の評価の基本となる路線価方式と倍率方式のしくみ、土地の形状によって評価額が補正される考え方、貸地や貸家建付地といった利用形態による評価の違い、そして建物の評価の考え方について、順を追って確認していきます。あわせて、評価額を算出したあとに適用を検討する各種の特例との関係、専門家に評価を依頼することの意味についても触れていきます。
なお、不動産といっても、自宅の敷地や建物だけでなく、賃貸アパートの土地建物、事業用の店舗や工場の敷地、駐車場として利用している土地、さらには先祖代々受け継がれてきた山林や農地まで、その範囲は多岐にわたります。相続財産の中に不動産が含まれる場合には、まずどのような種類の不動産が、どのような形で保有・利用されているのかを一つずつ整理することから評価作業が始まります。
路線価と倍率、評価方式は地域で異なる
不動産の評価方法を考えるうえでまず押さえておきたいのは、評価の対象となる土地がどの評価方式の適用地域にあるかによって、計算の出発点がまったく異なるという点です。都市部を中心に道路ごとに価格が定められている地域では路線価方式が用いられ、路線価が定められていない郊外や地方の地域では倍率方式が用いられます。どちらの方式が適用されるかは、国税庁が公開している路線価図や評価倍率表を確認することで判断できるとされています。
また、評価の対象は土地だけにとどまりません。建物、借地権、貸家、貸地など、不動産に関連する権利や利用形態ごとに、それぞれ固有の評価のルールが設けられています。たとえば同じ土地であっても、所有者自身が使っている場合と、他人に貸して賃料を得ている場合とでは評価額の考え方が異なりますし、建物についても自用の建物か賃貸中の建物かによって評価額が変わってきます。
このように、不動産の相続税評価は一つの計算式だけで完結するものではなく、土地の所在地、形状、利用状況、権利関係など、複数の要素を段階的に確認しながら組み立てていく作業になります。次のセクション以降で、それぞれの評価方法を具体的に見ていきます。
さらに、同じ土地であっても、共有名義になっている場合や、複数の相続人がそれぞれ異なる持分を取得する場合には、持分に応じた評価の按分方法も確認する必要があります。評価の前提となる権利関係を丁寧に洗い出すことが、正確な評価額の算出につながります。また、公図や登記事項証明書を取得して、所在地番や地積、共有者の氏名などの記載内容をあらかじめ確認しておくことも、評価作業を円滑に進めるうえで役立つとされています。
時価と相続税評価額が一致しない理由
不動産の時価と相続税評価額との間に差が生じる背景には、評価の目的の違いがあります。時価は実際に不動産を売買する際に成立する価格であり、需要と供給、個別の交渉事情など、そのときどきの市場の状況を反映します。これに対して相続税評価額は、全国で公平かつ画一的に税負担を求めるために、あらかじめ定められた基準にもとづいて機械的に算出される金額です。
このような性質の違いから、相続税評価額は一般的に時価よりもやや低めの水準に設定される傾向があるとされています。これは、評価の基準時点と実際の取引時点にずれが生じうることや、急な現金化が難しい不動産という財産の性質を考慮したものと説明されることがあります。ただし、地域や個別の土地の状況によっては、評価額と時価の差がほとんどない場合や、逆に評価額のほうが実勢価格に近い水準になる場合もあり、一概にどの程度の差が生じるかを断定することはできません。
いずれにしても、相続税の申告にあたって重要なのは、時価の感覚だけで税額を見積もらず、決められた評価方法にしたがって正確に評価額を算出することです。次のセクションから、その具体的な方法を見ていきます。
実務上は、評価額と時価との差を踏まえたうえで、相続財産全体のバランスや納税資金の準備状況などもあわせて検討されることが多く、評価額の算出は相続税対策全体を考えるうえでの土台になる作業だといえます。こうした評価額と時価の関係をあらかじめ理解しておくことは、遺産分割の話し合いや納税資金の準備を検討するうえでも参考になる情報だといえます。
土地の評価方法(1) 路線価方式のしくみ
都市部を中心に、多くの土地では「路線価方式」という方法によって評価額が算出されます。路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額として、国税庁が毎年公表しているものです。路線価方式では、評価の対象となる土地が面している道路の路線価に、その土地の地積(面積)を掛け合わせることで、基本となる評価額を計算します。
路線価は、国税庁が運営する財産評価基準書というウェブサイト上で、地図の形式で確認できる路線価図として公表されています。路線価図には道路ごとに数字とアルファベットが記載されており、数字の部分が1平方メートルあたりの価額を表し、末尾のアルファベットは借地権割合を示しています。路線価図は例年7月頃に、その年の1月1日時点の評価額として公表される運用になっているとされています。
路線価方式による評価は、単純に路線価と面積を掛け合わせるだけで完結するわけではありません。対象となる土地の形状が整った正方形や長方形に近いものであれば計算はシンプルですが、実際には不整形な土地や、複数の道路に面している土地、間口が極端に狭い土地など、さまざまな形状の土地が存在します。こうした土地については、後述するような各種の補正率を適用して、評価額を実態に近づける調整を行うことになります。
また、路線価が定められている地域であっても、私道や無道路地など、道路の状況によって評価の考え方が変わる土地もあります。路線価図を見る際には、単に数字を読み取るだけでなく、対象地がどの路線に接しているのか、複数の路線に接する場合はどちらを正面路線とみなすのかといった点も確認する必要があるとされています。このように路線価方式は、都市部の土地評価における基本的な枠組みを提供する一方で、個別の土地の状況に応じた読み解きが求められる方式でもあります。
なお、路線価は道路一本ごとに定められているため、同じ地域内であっても道路が異なれば評価額が大きく変わることがあります。また、私道に接している土地や、複数の画地にまたがる土地など、路線価図だけでは判断が難しいケースも存在するため、必要に応じて税務署や専門家に確認しながら進めることが望ましいとされています。
路線価図の基本的な読み方
路線価図では、道路ごとに数字とアルファベットの組み合わせが記載されています。数字の部分は、その道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額を千円単位で示したものとされています。たとえば道路上に「300C」と記載されていれば、1平方メートルあたりの価額が一定の金額であり、末尾の「C」の記号が借地権割合を表しているという構造になります。借地権割合は地域ごとにアルファベットで区分されており、どのアルファベットがどの割合に対応するかは路線価図の凡例で確認できるようになっています。
路線価図を利用する際には、まず対象となる土地の住所から地図上の該当箇所を探し、その土地が接している道路の路線価を確認します。角地のように複数の道路に接している土地の場合は、原則としてより高い路線価が付されている道路を正面路線とみなし、もう一方の道路については側方路線影響加算という形で評価額に反映させる考え方がとられています。
なお、路線価が定められていない地域や、路線価図上に価額の記載がない道路もあります。そのような場合には、次のセクションで説明する倍率方式によって評価を行うことになるため、路線価図を確認した際にまず「路線価方式の対象地域かどうか」を見極めることが、評価作業の最初のステップになるといえます。
路線価図は毎年更新されるため、相続開始の年の路線価を参照することが前提になります。年をまたいで評価を検討する際には、参照する年度を誤らないよう注意する必要があります。また、住居表示と地番が異なる地域も少なくないため、路線価図を確認する際には、登記簿上の地番をもとに該当箇所を特定することが望ましいとされています。
正面路線と加算・減算の考え方
路線価方式による評価では、単に路線価と地積を掛け合わせるだけでなく、土地が置かれている状況に応じて金額を加算したり減算したりする調整が行われます。代表的なものとして、二つ以上の道路に接する土地に適用される加算の考え方があります。角地や、正面と裏面の両方に道路が接している土地は、一方向にしか道路が接していない土地に比べて利用価値が高いと考えられるため、正面路線価をもとにした評価額に、側方や裏面の路線価に応じた金額を加算する仕組みがとられています。
反対に、土地の形状や周辺の環境によっては、評価額を減額する方向の補正が適用される場合もあります。たとえば、対象地よりも道路面が高い位置または低い位置にある土地、線路や高速道路に隣接していて騒音や振動の影響を受ける土地などについては、個別の事情に応じた減額の取り扱いが定められていることがあります。
これらの加算・減算の判断には、対象地の現況を正確に把握することが欠かせません。地図や路線価図だけを見て機械的に計算するのではなく、実際に現地を確認しながら、どの補正が適用されるべきかを検討する必要があるとされています。
これらの加算・減算の考え方は、土地の利用価値を公平に反映させるための仕組みであり、単に路線価表の数字を機械的に当てはめるのではなく、対象地の個別事情を踏まえた検討が求められる部分だといえます。こうした加算・減算の考え方を理解しておくことは、複数の道路に接する土地を保有している場合の評価額の見通しを立てるうえでも役立ちます。
土地の評価方法(2) 倍率方式のしくみ
路線価が定められていない地域の土地については、「倍率方式」という方法によって評価額を算出します。倍率方式は、その土地の固定資産税評価額に、地域ごとに定められた一定の倍率を掛け合わせることで評価額を計算する方法です。主に郊外や地方の住宅地、農地、山林などで用いられることが多いとされています。
固定資産税評価額は、毎年市区町村から送付される固定資産税の納税通知書や、固定資産評価証明書を取得することで確認できます。この評価額に、国税庁が公表している評価倍率表に記載された倍率を掛けることで、相続税評価額を求めます。評価倍率表は路線価図と同じく国税庁の財産評価基準書のウェブサイトで公開されており、地目(宅地、田、畑、山林など)ごとに異なる倍率が定められているのが一般的です。
倍率方式は、路線価方式に比べると計算自体は単純に見えますが、注意すべき点もいくつかあります。まず、固定資産税評価額は市区町村が独自の基準で算定するものであり、必ずしも実勢価格や国税庁の評価水準と連動しているとは限りません。そのため、固定資産税評価額に誤りがないか、直近の評価替えが反映されているかを確認することが前提になります。
また、倍率方式が適用される土地であっても、路線価方式における形状の補正と同様に、不整形地や利用の制約がある土地については一定の調整を検討する余地があるとされる場合があります。地目の認定についても、登記簿上の地目と実際の利用状況が異なるケース(たとえば登記上は畑だが実際には宅地として利用されているなど)があり、その場合は現況にもとづいて評価を行う必要が生じることがあります。倍率方式は一見シンプルな計算式に見えても、対象地の現況を正確に把握したうえで適用することが求められる評価方法だといえます。
倍率方式が用いられる地域は、路線価方式が用いられる都市部に比べて、土地の取引事例が少ないことも珍しくありません。そのため、評価額の妥当性を確認する際にも、近隣の取引事例や地域の実情を踏まえた総合的な判断が求められる場合があります。
固定資産税評価額と評価倍率表の使い方
倍率方式による評価の第一歩は、対象となる土地の固定資産税評価額を確認することです。固定資産税評価額は、毎年春頃に市区町村から送付される固定資産税・都市計画税の納税通知書に同封されている課税明細書に記載されているほか、市区町村の窓口で固定資産評価証明書を取得することでも確認できます。相続開始の年の評価額を用いる必要があるため、亡くなった年度の証明書を取得することが望ましいとされています。
固定資産税評価額を確認したら、次に国税庁の評価倍率表で、対象地が所在する地域と地目に対応する倍率を調べます。評価倍率表は市区町村ごと、さらに地域や地目ごとに細分化されて掲載されており、同じ市区町村内でも地域によって倍率が異なる場合があります。該当する倍率を固定資産税評価額に掛け合わせることで、相続税評価額の基本額が算出されます。
なお、評価倍率表には「路線」と記載されている地域もあり、その場合はその地域が路線価方式の対象であることを意味します。倍率方式と路線価方式のどちらを用いるべきかを取り違えると評価額全体に影響するため、評価倍率表の記載内容を丁寧に確認する作業が欠かせません。
固定資産税評価額は原則として3年に一度見直される評価替えの対象となるため、相続開始の時期によっては、直近の評価替え後の金額を用いる必要がある点にも注意が必要です。加えて、評価倍率表の様式は年度によって更新されることがあるため、評価にあたっては必ず該当する年分の表を参照することが求められます。
地目の認定と現況にもとづく評価
倍率方式による評価を行う際に見落とされがちなのが、地目の認定にまつわる問題です。地目とは、土地の用途による区分のことで、宅地、田、畑、山林、雑種地などに分類されます。登記簿上の地目は、実際の土地の利用状況の変化が反映されずに古いまま残っていることがあり、たとえば登記上は「畑」となっている土地が、実際には長年にわたり駐車場や資材置き場として利用されている、といったケースも見られます。
相続税の評価においては、登記簿上の地目ではなく、相続開始時点における土地の現況にもとづいて地目を認定し、それに対応する評価倍率を適用することが原則とされています。地目の認定を誤ると、適用すべき倍率が変わり、評価額に大きな差が生じる可能性があるため注意が必要です。
また、一筆の土地の中に複数の利用形態が混在している場合(たとえば同じ土地の一部が宅地として、残りが農地として利用されているような場合)には、利用状況に応じて区分して評価することが必要になる場合もあります。このように、倍率方式は計算式自体はシンプルであっても、その前提となる地目や現況の把握には注意深い確認作業が求められます。
地目の認定に迷うケースでは、市区町村の農地台帳や現況を示す写真などの資料を残しておくことで、後日の確認作業がスムーズになる場合があります。現況の確認にあたっては、必要に応じて撮影や関係者への聞き取りなどを行い、記録として残しておくことが望ましいとされています。
土地の形状による評価額の補正
路線価方式や倍率方式によって算出された基本の評価額は、そのまま最終的な評価額になるとは限りません。土地の形状や道路との接し方によっては、評価額を実態に近づけるための補正が加えられます。整った正方形や長方形の土地に比べて、利用しづらい形状の土地は市場での価値が下がると考えられるため、こうした補正の仕組みが設けられているとされています。
代表的な補正のひとつが「不整形地補正」です。三角形や台形、L字型など、正方形・長方形からかけ離れた形状の土地は、同じ面積であっても建物を建てにくかったり、駐車場の配置に無駄が生じやすかったりするため、その不整形の度合いに応じて評価額が減額される仕組みになっています。不整形の度合いは、想定される整形地との面積比率などをもとに一定の区分で判定されるとされています。
また、道路に接する間口が狭い土地についても、「間口狭小補正」という補正が適用される場合があります。間口が狭いと、車の出入りがしにくかったり、建築計画上の制約が生じやすかったりするため、利用価値が下がると考えられているためです。同様に、間口に対して奥行きが極端に長い土地については「奥行長大補正」が、逆に奥行きが極端に短い、または長すぎる土地については「奥行価格補正」が適用されることがあります。
これらの補正は、土地の形状を測量図や公図、現地の状況から正確に把握したうえで、該当する補正率表にあてはめて計算する必要があります。複数の補正が同時に適用される土地もあり、どの補正をどの順序で適用するかによって最終的な評価額が変わってくるため、形状の分析は評価作業の中でも特に慎重さが求められる部分だといえます。
これらの補正の適用にあたっては、公図や測量図をもとに正確な地積や形状を把握することが前提になります。古い測量図しか残っていない場合や、実際の面積が登記簿上の面積と異なる場合もあるため、必要に応じて確定測量を行うことが望ましいとされる場合もあります。
不整形地・間口狭小地の補正
不整形地補正は、対象となる土地がどの程度整形地から離れた形状をしているかを、地積区分や不整形の程度に応じて分類し、それに対応する補正率を評価額に乗じることで評価額を減額する仕組みです。三角形やL字型、旗竿状の土地など、住宅地でもしばしば見られる形状が対象になります。不整形の程度が大きいほど、また土地の面積区分が小さいほど、補正の度合いが大きくなる傾向があるとされています。
間口狭小補正は、道路に接する間口の距離が一定の基準よりも狭い場合に適用される補正です。間口が狭い土地は、車両の出入りのしやすさや建築計画の自由度の面で制約を受けやすく、利用価値が下がると考えられています。地域の状況(繁華街や普通住宅地など)によって、間口の基準となる距離や補正率の水準が異なって定められているとされています。
なお、不整形地補正と間口狭小補正は、どちらか一方だけでなく、両方の条件に該当する土地については重ねて適用される場合があります。このように複数の補正が絡み合うケースでは、専門的な知識にもとづいた丁寧な計算が求められます。
不整形地補正の計算では、想定される整形地の設定方法によって補正率が変わることもあるため、複数の想定パターンを比較しながら、より実態に即した評価額を検討することが望ましいとされています。こうした補正率の適用にあたっては、対象地が高度商業地区や普通住宅地区などのどの地域区分に属するかによっても取り扱いが異なる場合があるため、あわせて確認が必要です。
奥行きに関する補正(長大地・がけ地など)
奥行きに関する補正には、いくつかの種類があります。まず「奥行価格補正」は、間口に対する奥行きの長さの標準的な範囲から外れている土地について、評価額を調整するものです。奥行きが標準よりも極端に短い、あるいは極端に長い土地は、いずれも一般的な住宅地や店舗用地としての使い勝手が下がると考えられるため、奥行きの距離に応じた補正率が定められているとされています。
また、間口に対して奥行きが特に長い土地については「奥行長大補正」が適用されることがあります。これは、細長い形状の土地が、建物の配置や駐車スペースの確保などの面で使いにくさを伴う場合があることを踏まえた補正とされています。
このほか、土地の一部にがけ地や急傾斜地を含む場合には「がけ地補正」が適用されることがあります。がけ地の部分は通常の用途に使用することが難しいため、がけ地が占める割合に応じて評価額が減額される仕組みです。これらの補正は、測量図や現地の高低差の状況を確認しながら、該当する補正率表に照らして適用の可否と程度を判断する必要があり、素人判断では見落としが生じやすい部分といえます。
がけ地補正の適用にあたっては、がけ地の方位(北向き・南向きなど)によっても補正率が異なって定められている場合があり、現地の状況を丁寧に確認することが求められます。奥行きに関する各種の補正も、地域区分や奥行きの距離に応じて数値が細かく定められているため、該当する補正率表を確認しながら計算を進める必要があります。
貸地・貸家建付地の評価と借地権割合
土地は、所有者自身が自由に使用している「自用地」であるか、他人に貸し付けている「貸地」であるか、あるいは自分の土地に建てた建物を他人に貸している「貸家建付地」であるかによって、評価の考え方が異なります。一般的に、他人が使用する権利が付着している土地は、所有者が自由に使えない分だけ利用に制約があるため、自用地として評価する場合よりも評価額が低くなるとされています。
貸地とは、他人に建物の所有を目的として土地を貸し、借地権を設定している土地のことです。この場合の評価額は、自用地としての評価額から、その地域ごとに定められた借地権割合に相当する金額を差し引いて計算します。借地権割合は、路線価図に記載されているアルファベットによって地域ごとに区分されており、都市部の商業地では割合が高く、郊外の住宅地では割合が低めに設定される傾向があるとされています。
貸家建付地とは、所有者が自分の土地に建物を建て、その建物を他人に貸している場合の土地のことです。この場合、借主には建物を利用する権利(借家権)があり、土地の所有者は自由に土地を利用できない制約を受けることになります。そのため、貸家建付地の評価額は、自用地としての評価額から、借地権割合と借家権割合、さらに賃貸割合を掛け合わせた金額を差し引いて算出する仕組みになっています。
借家権割合は地域ごとに定められた一定の割合が用いられるとされ、賃貸割合とは、貸家全体の床面積のうち実際に賃貸されている部分の割合を指します。空室が多い状態で相続が発生した場合には、賃貸割合が低くなり、評価額の減額幅も小さくなる点に注意が必要です。このように、土地の利用形態によって評価額の計算方法が異なるため、対象となる土地が自用地・貸地・貸家建付地のいずれに該当するかを正確に区分することが評価の出発点になります。
このほか、青空駐車場のように建物を伴わずに賃貸している土地(貸駐車場)については、借地権や借家権の対象とはならず、原則として自用地として評価される点にも留意が必要です。土地の利用形態を正確に見極めることが、評価方法を選択するうえでの前提になります。
借地権割合の考え方
借地権とは、建物の所有を目的として他人の土地を借りる権利のことをいいます。借地権が設定されている土地(貸地)を所有者側から見ると、土地を自由に使用・処分することができない制約を負っているため、自用地として評価する場合に比べて評価額が低く算出される仕組みになっています。
具体的には、路線価図に示されているアルファベットに応じて、地域ごとに借地権割合が定められています。借地権割合は、その地域における土地の利用状況や取引慣行などを踏まえて設定されているとされ、商業地域など土地の利用価値が高いとされる地域ほど、割合が高めに設定される傾向があるといわれています。貸地の評価額は、自用地としての評価額に、100パーセントからその地域の借地権割合を差し引いた割合を掛け合わせることで算出されます。
借地権割合は地域によって異なるため、対象地の路線価図を確認し、正しい割合を適用することが重要です。また、借地契約の内容(権利金の授受の有無や地代の水準など)によっては、通常の借地権とは異なる取り扱いが必要になる場合もあるとされており、契約関係の確認も評価作業の一環として欠かせません。
なお、使用貸借(無償で土地を貸している場合)については、借地権が発生しないものとして扱われることが一般的とされており、賃貸借とは評価の考え方が異なる点にも注意が必要です。借地権の評価にあたっては、契約書の有無や地代の支払い状況なども、権利関係の実態を確認するうえでの手がかりになります。
貸家建付地評価と賃貸割合の影響
貸家建付地の評価額は、自用地としての評価額から、借地権割合・借家権割合・賃貸割合を掛け合わせた金額を差し引いて算出されます。借家権割合は地域ごとに一定の割合が定められているとされ、賃貸割合は、貸家全体の各独立部分(部屋など)の床面積のうち、相続開始時点で実際に賃貸されている部分の床面積が占める割合を指します。
賃貸割合の考え方で特に注意したいのが、相続開始時点で空室になっている部屋の扱いです。原則として、相続開始時点で空室となっている部分は賃貸割合の計算上、賃貸されている部分には含めないとされています。そのため、空室が多いアパートやマンションを所有していた場合には、賃貸割合が下がり、貸家建付地としての評価減の効果が小さくなる可能性があります。
ただし、一時的な空室であって、賃貸募集を行っているなど、継続的に賃貸されている実態が認められる場合には、例外的に賃貸中とみなして計算できる取り扱いが認められることがあるとされています。空室期間の長さや募集状況などの事実関係によって判断が分かれる部分であるため、該当する可能性がある場合には、賃貸借契約書や募集の記録などを整理しておくことが望ましいといえます。
賃貸割合の算定にあたっては、契約書や入居状況の記録を整理し、相続開始時点の実態を客観的に説明できるようにしておくことが、申告後の確認作業に備えるうえでも有効とされています。賃貸割合の算定においては、各独立部分の床面積を正確に把握しておくことが、正確な評価額の算出につながります。
建物の評価は固定資産税評価額が基準
土地の評価が路線価方式や倍率方式といった複数の考え方にもとづいて行われるのに対し、建物の評価は比較的シンプルな仕組みになっています。自用の建物(所有者自身が使用している建物)については、原則として固定資産税評価額をそのまま相続税評価額として用いることとされています。土地のように倍率を掛けたり、形状による補正を加えたりする必要は基本的にありません。
固定資産税評価額は、市区町村が個々の建物について、構造や築年数、床面積などをもとに算定しているものであり、毎年送付される固定資産税の納税通知書に同封される課税明細書、または市区町村で取得できる固定資産評価証明書によって確認できます。相続税の申告にあたっては、相続開始年度の評価額を用いる必要があるため、亡くなった年度の証明書を取得することが基本になります。
建物が他人に貸し付けられている場合(貸家)については、土地の場合と同様に、借主の権利(借家権)を考慮した評価が行われます。具体的には、固定資産税評価額に、地域ごとに定められた借家権割合と賃貸割合を掛け合わせた金額を差し引いて評価額を算出します。自用の建物に比べて、貸家は評価額が低くなる仕組みになっているといえます。
なお、建物の建築中に相続が発生した場合や、増改築を行ったものの固定資産税評価額にまだ反映されていない場合など、固定資産税評価額をそのまま使えない特殊な状況もあります。そうしたケースでは、費用現価の一定割合を用いるなど、個別の評価方法を検討する必要が生じることがあります。建物の評価は土地に比べて計算自体は単純ですが、対象となる建物が自用か貸家か、評価額算定の前提となる証明書が最新のものかどうかを確認する作業は欠かせません。
建物の評価においても、共有名義や区分所有の建物、増築部分が未登記のまま残っている建物など、通常とは異なる取り扱いが必要になるケースが見られます。固定資産税評価額の内容が実態と一致しているかどうかを確認する作業も、評価の一環として欠かせません。
固定資産税評価額を用いる理由と確認方法
建物の相続税評価額に固定資産税評価額をそのまま用いる仕組みがとられているのは、建物は土地と異なり、構造や用途、築年数などによって個別性が強く、全国一律の基準で価額を算定することが難しいためとされています。市区町村が固定資産税の課税のために個別に算定している評価額を活用することで、実務上の手間を抑えつつ、一定の合理性を確保する仕組みになっているといえます。
固定資産税評価額を確認する方法としては、毎年春頃に市区町村から送付される固定資産税・都市計画税納税通知書に同封されている課税明細書を確認する方法と、市区町村の窓口や郵送で固定資産評価証明書を取得する方法があります。相続税の申告では、相続開始があった年度の評価額を用いる必要があるため、通知書の年度を確認するか、該当年度の証明書を取得することが望ましいとされています。
なお、共有名義の建物や、区分所有建物(マンションなど)の場合は、証明書の記載内容がやや複雑になることがあります。持分割合や専有部分の面積など、記載内容を正確に読み取ることが必要になるため、不明な点があれば市区町村の窓口に確認することをおすすめします。
固定資産税評価額に疑問がある場合には、市区町村の担当窓口に算定根拠を確認したり、必要に応じて不動産鑑定士など他の専門家の意見を参考にしたりすることも選択肢のひとつとされています。証明書の交付には一定の手数料がかかる場合があるため、事前に市区町村の案内を確認しておくと手続きがスムーズです。
貸家の評価と特殊なケースの取り扱い
建物を他人に貸し付けている場合、その建物は「貸家」として評価されます。貸家の評価額は、固定資産税評価額から、地域ごとに定められた借家権割合と賃貸割合を掛け合わせた金額を差し引いて算出します。これは、借主が建物を使用する権利を持っていることにより、所有者が自由に使用・処分できる範囲が制約されることを評価額に反映させる考え方にもとづくものです。
賃貸割合の考え方は、貸家建付地の評価と同様に、相続開始時点で実際に賃貸されている部分の床面積の割合によって決まります。空室が多い状態であれば賃貸割合が下がり、評価額の減額幅も小さくなる点に留意が必要です。
また、建物の建築中に相続が発生した場合には、固定資産税評価額がまだ付されていないため、通常の方法では評価ができません。このような場合には、その建物の建築のためにそれまでに投じられた費用の額をもとに算定する方法などが用いられるとされています。同様に、増改築を行った直後で固定資産税評価額に増改築の内容が反映されていない場合にも、個別の検討が必要になることがあります。建物の評価は原則としてシンプルですが、こうした特殊な状況に該当する場合には注意深い確認が求められます。
貸家の評価においても、賃貸借契約の内容や入居状況を示す資料を整理しておくことで、賃貸割合の算定根拠を明確にし、申告内容の説明がしやすくなるとされています。契約開始日や契約更新の状況なども、賃貸の実態を裏付ける資料として整理しておくことが望ましいといえます。
評価額算出後に検討する小規模宅地等の特例
ここまで見てきた路線価方式や倍率方式、各種の補正、貸地・貸家建付地の評価といった作業は、いずれも土地や建物そのものの評価額を算出するための手順です。相続税の申告実務では、こうして算出された評価額をもとに、次の段階として各種の特例を適用できるかどうかを検討する流れになります。その代表例が、居住用や事業用の宅地について評価額を大きく減額できる「小規模宅地等の特例」です。
小規模宅地等の特例は、亡くなった方が住んでいた自宅の敷地や、事業を営んでいた土地などについて、一定の要件を満たす場合に、評価額を一定の割合で減額できる制度です。この特例は、遺された家族の生活基盤や事業の継続に配慮する趣旨で設けられているとされ、適用対象となる宅地の区分(居住用、事業用、貸付事業用など)によって、減額の対象となる面積の上限や減額割合が異なる仕組みになっています。
ここで重要なのは、小規模宅地等の特例は、あくまで路線価方式や倍率方式などによって算出した評価額に対して、後から適用するものだという点です。順序を誤って、最初から特例適用後の金額を前提に計算を進めてしまうと、申告内容に誤りが生じる可能性があります。まずは土地そのものの評価額を正しく算出し、そのうえで特例の適用要件を満たすかどうかを個別に検討するという二段階の流れを意識することが大切です。
また、小規模宅地等の特例は、適用を受けるための要件(取得者の要件、保有継続や居住継続の要件など)が細かく定められており、適用の可否によって納税額に大きな差が生じることも珍しくありません。本コラムでは評価額の算出方法を中心に扱っているため特例の詳細には立ち入りませんが、不動産の評価を検討する際には、評価額の算出作業と並行して、特例の適用可能性についても早い段階から確認しておくことが望ましいといえます。
小規模宅地等の特例のほかにも、相続財産全体の評価や税額に影響を与える特例・制度は複数存在します。不動産の評価を進める際には、こうした関連制度の存在も念頭に置きながら、申告全体を見通した検討を行うことが望ましいといえます。
評価額の算出と特例適用は別の作業
相続税の申告実務では、まず対象となる土地や建物について、路線価方式や倍率方式などにもとづいた評価額を確定させる作業を行い、そのあとで小規模宅地等の特例をはじめとする各種の特例が適用できるかどうかを検討するという順序が基本になります。この二つの作業は、性質の異なる別の手続きであるという点を理解しておくことが大切です。
評価額の算出段階では、土地の形状や利用状況、権利関係などにもとづいて、その土地固有の価額を客観的に計算します。これに対して特例の適用段階では、誰がその宅地を取得したか、取得後にどのように利用しているか、亡くなった方や家族の居住状況はどうだったかといった、人や利用実態に関する要件を確認することになります。評価額の計算と特例適用の要件確認は、着眼点が異なる別々の検討事項だといえます。
この順序を意識せずに作業を進めると、特例適用後の金額を前提に評価額を検討してしまい、結果として申告内容に誤りが生じる可能性があります。不動産の評価にあたっては、まず評価額そのものを丁寧に確定させ、そのうえで特例の適用可否を検討するという二段階の流れを踏まえることが重要です。
評価額の算出作業を先に固めておくことで、特例適用の検討段階においても、どの宅地にどの程度の減額余地があるのかを具体的な数字で比較しながら判断できるようになります。評価額の算出と特例適用の要件確認を並行して進めることで、申告作業全体の見通しを立てやすくなります。
特例適用の可否が納税額に与える影響
小規模宅地等の特例は、適用が認められるかどうかによって、相続税の納税額に大きな影響を与える制度です。居住用や事業用の宅地について評価額が大きく減額されることになれば、相続財産全体の評価額が下がり、結果として納める相続税の金額も変わってきます。逆に、要件を満たしていないにもかかわらず特例を適用してしまうと、後から申告内容の見直しが必要になる可能性もあります。
特例の適用要件は、取得者が誰であるか、相続後にその宅地をどのように利用し続けるか、亡くなった方との同居の有無や生活の実態といった、個別の事情に応じて判断される部分が多く含まれています。同じような立地・形状の土地であっても、取得者や利用状況の違いによって適用の可否が分かれることも珍しくありません。
そのため、不動産の評価を進める際には、評価額の算出作業と並行して、対象となる宅地について特例の適用要件を満たす可能性があるかどうかを早い段階から確認しておくことが望ましいといえます。特例の詳細な要件は複雑な部分も多いため、評価額の算出結果を踏まえたうえで、個別の状況にあわせて検討を進めることが実務上のポイントになります。
特例の適用を検討する際には、申告期限までに遺産分割が確定していることが要件となる場合もあるため、評価額の算出と並行して、遺産分割協議の進め方にも注意を払う必要があります。特例の適用可否について不明な点がある場合には、早めに専門家に相談し、要件充足の見通しを確認しておくことが望ましいといえます。
不動産評価を専門家に依頼する重要性
ここまで見てきたように、不動産の相続税評価は、路線価方式や倍率方式の使い分け、土地の形状に応じた各種の補正、貸地・貸家建付地といった利用形態による評価の違い、建物の評価、そして特例適用との関係など、多くの要素を段階的に確認しながら組み立てていく作業です。一つひとつの要素は個別に見ればそれほど複雑ではないように思えるかもしれませんが、実際の土地は複数の要因が絡み合っていることが多く、自己判断だけで正確な評価額を算出するのは容易ではありません。
たとえば、路線価図の読み方を誤って正面路線を取り違えてしまったり、不整形地であるにもかかわらず補正を適用し忘れてしまったりすると、評価額が本来あるべき水準からずれてしまいます。評価額が実態よりも高く算出されれば、本来納める必要のない税額を負担することになりかねませんし、逆に評価額が低すぎれば、後の税務調査で指摘を受け、修正申告や追加の納税が必要になる可能性もあります。
こうしたリスクを避けるためには、税理士などの専門家に不動産の評価を依頼することが有効な選択肢になります。専門家は、路線価図や評価倍率表の読み方はもちろん、不整形地や間口狭小地といった形状の補正、貸地・貸家建付地の評価、小規模宅地等の特例の適用可否といった一連の作業について、豊富な知識と経験にもとづいて対応することができます。
また、評価にあたっては、地図や資料の確認だけでなく、実際に現地を訪れて土地の形状や高低差、周辺の道路状況、隣接地との関係などを目視で確認することが重要になる場面も少なくありません。現地確認を通じて、資料だけでは気づきにくい補正の適用漏れや、逆に過剰な補正の適用を防ぐことができます。不動産という財産の評価は、時価との違いを踏まえつつ、決められたルールを丁寧にあてはめていく専門性の高い作業であるからこそ、早い段階から専門家に相談し、正確な評価にもとづいた申告を行うことが望ましいといえます。
相続税の申告には期限が定められており、評価作業に時間がかかることを見越して、早い段階から準備を始めることも重要です。専門家に相談する時期が早いほど、資料収集や現地確認、必要に応じた測量の手配などに十分な時間を確保しやすくなります。
自己判断での評価に伴うリスク
不動産の相続税評価を自己判断だけで行う場合には、いくつかのリスクが伴います。まず考えられるのが、評価方法自体を取り違えてしまうリスクです。路線価方式が適用される地域なのか、倍率方式が適用される地域なのかを見誤ると、評価額の算出の出発点からずれが生じてしまいます。
次に、土地の形状に応じた補正の適用漏れというリスクがあります。不整形地補正や間口狭小補正、奥行きに関する補正など、対象地の形状によって適用すべき補正はさまざまであり、これらを見落とすと、本来よりも高い評価額のまま申告してしまう可能性があります。評価額が高くなれば、その分だけ納める相続税額も増えることになるため、本来であれば負担する必要のなかった税額を支払ってしまうことにつながりかねません。
反対に、適用できない補正を誤って適用してしまったり、賃貸割合の算定を誤ったりするなど、評価額を実態よりも低く算出してしまうリスクもあります。この場合、税務調査で指摘を受け、修正申告や追加の納税、場合によっては加算税の負担が生じる可能性があります。このように、自己判断での評価には、税額が高くなる方向にも低くなる方向にも誤りが生じるリスクがあるといえます。
特にインターネット上の簡易的な情報だけを頼りに評価額を見積もると、個別の土地の事情が反映されず、実際の申告に必要な精度に届かないことも少なくないとされています。自己判断による評価のリスクを踏まえると、早い段階で専門家の関与を検討することが、結果的に安心につながるといえます。
税理士による現地確認と補正適用のチェック
不動産の評価を専門家に依頼する大きな意義のひとつが、実際に現地を確認したうえで評価を行える点にあります。路線価図や公図、測量図といった資料だけでは把握しきれない土地の状況、たとえば道路との高低差、がけ地の有無、隣接地との境界の状況、私道の負担の有無などは、現地を訪れることで初めて正確に把握できる場合があります。
税理士が現地確認を行うことで、資料上は気づきにくい補正の適用漏れを防ぐことができるほか、逆に実態に即さない過剰な補正を適用してしまうことも防ぐことができます。特に不整形地補正やがけ地補正など、現況の把握が評価額に直結する補正については、現地確認の有無が評価の精度を大きく左右するといえます。
また、税理士は評価額の算出だけでなく、貸地・貸家建付地の評価における賃貸割合の確認、小規模宅地等の特例の適用要件の検討など、評価額算出後の手続きについても一体的に対応することができます。不動産の相続税評価は、専門的な知識と現地での確認作業の両方が求められる分野であるからこそ、早い段階から税理士に相談し、漏れのない正確な評価にもとづいた相続税申告を進めることが望ましいといえます。
不動産の評価は、申告後に見直しが必要になった場合の手間も大きいため、最初の段階から専門家の関与を得ておくことが、結果的に効率的な進め方につながるといえます。現地確認を含めた丁寧な評価作業は、申告後の税務調査にも耐えうる根拠資料の整備にもつながるとされています。