[池袋] 特定路線価とは?路線価のない道路に接する土地の評価と申請手続き#相続税#税理士#池袋
相続税や贈与税の申告で土地を評価する際、路線価地域内にあるにもかかわらず、その土地が接している道路には路線価が設定されていないという状況に出会うことがあります。分譲地内の道路や、位置指定道路、旗竿地の通路部分などがその代表例といわれています。このようなときに用いられるのが「特定路線価」の制度です。この記事では、特定路線価とはどのような制度か、どのような土地が対象になるのか、申出の手続きの流れや必要書類、スケジュール管理の考え方、代替的な評価方法との比較、そして実務上の注意点について、順を追って解説します。
目次
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路線価とは何か——路線価地域と倍率地域の違い
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路線価図で確認できること
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倍率方式との使い分けの考え方
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路線価が設定されていない道路に接する土地とはどのような場合か
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分譲地・位置指定道路のケース
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旗竿地・行き止まり道路のケース
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特定路線価とは何か——制度の概要と対象となる条件
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だれが申出をすることができるか
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設定された特定路線価の効力
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特定路線価設定申出書の提出手続き
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明細書・案内図等の準備のポイント
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提出先と相談窓口
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手続きにかかる期間とスケジュール管理の注意点
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逆算したスケジュールの立て方
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期限に間に合わない場合の考え方
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特定路線価を使わない場合の評価方法との比較
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接続する路線価を用いる評価方法の考え方
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どちらを選ぶかの判断材料
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特定路線価を申し出る際の実務上の注意点
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複数の相続人がいる場合の連携
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専門家への相談のタイミング
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私道評価との関係・混同しやすい制度の整理
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私道の評価と特定路線価の使い分けイメージ
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全体像の整理と申告への反映
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路線価とは何か——路線価地域と倍率地域の違い
相続税や贈与税の申告において土地の価額を算出する際には、国税庁が定める財産評価基本通達に沿って評価を行うことが一般的とされています。宅地の評価方法には大きく分けて路線価方式と倍率方式の2種類があり、どちらの方式によるべきかは、その土地が所在する地域によって定まっているといわれています。
路線価方式は、国税庁が毎年7月頃に公表する路線価図に基づいて評価する方法です。路線価図では、市街地の道路一本ごとに、その道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額(路線価)が表示されており、実際の評価にあたっては、この路線価に土地の奥行きや形状、間口の広さなどに応じた各種の補正率を乗じて計算するとされています。この方式は主に市街地的な地域(いわゆる路線価地域)で用いられているといわれています。
路線価は、地価公示価格や不動産鑑定士による鑑定評価額、実際の売買実例などを踏まえつつ、公示価格のおおむね8割程度の水準を目安として設定されているといわれています。毎年1月1日を評価の基準日として算定され、例年7月頃にその年分の路線価図・評価倍率表がインターネット上で公開される運用になっているとされています。
一方、路線価が定められていない地域は倍率地域と呼ばれ、こちらでは固定資産税評価額に、地域ごとに定められた一定の倍率を乗じることで評価額を算出する倍率方式が採用されているとされています。ある土地が路線価地域と倍率地域のいずれに該当するかは、国税庁ホームページで公開されている路線価図や評価倍率表を確認することで判断できるようになっています。都市部では路線価地域が中心となり、郊外や農村部では倍率地域となっていることが多いといわれています。
このように評価方式が地域ごとに定まっている理由は、市街地的な地域では土地の取引が活発で、道路一本ごとの価値の違いが大きく現れやすいのに対し、郊外や農村部では土地の利用状況が比較的均質であり、固定資産税評価額を基準とした簡便な方式でも実態に即した評価が可能であるという考え方によるものといわれています。
ここで注意しておきたいのは、路線価地域に区分されている地域であっても、その地域内に存在するすべての道路に路線価が設定されているとは限らないという点です。住宅地の中を通る細い道路や、後から造成・分譲された道路の一部には、路線価図上に価額が表示されていないケースも見られるといわれています。相続財産の中にこうした道路にしか接していない宅地が含まれている場合、路線価図を見るだけでは評価額を算出できないという実務上の悩みが生じることになります。次の章では、この状況が具体的にどのような場合に起こりやすいかを整理します。
路線価という仕組みそのものは、財産評価基本通達が採用している「時価」の考え方を、実務上できるだけ簡便かつ画一的に算定できるようにするために設けられていると理解されています。個々の土地ごとに毎回不動産鑑定を行うことは負担が大きいため、あらかじめ道路ごとに標準的な価額を定めておき、それに補正を加える形で多くの土地を効率的に評価できるようにする、という発想に基づいているといわれています。特定路線価は、この画一的な仕組みではカバーしきれない道路について、個別に対応するための補完的な制度と位置づけることができると考えられます。
この画一的な評価の仕組みは、多数の申告を公平かつ効率的に処理するうえで大きな役割を果たしていると考えられますが、その裏返しとして、すべての道路をあらかじめ網羅することは難しく、路線価図の更新が現地の状況に追いつかない場面が一定数生じることは避けられないともいわれています。特定路線価は、こうした制度上の隙間を埋めるための仕組みとして機能していると理解することができます。
路線価図で確認できること
路線価図には、道路ごとに数字とアルファベットが表示されており、数字部分がその道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額(千円単位)を、アルファベット部分が借地権割合を示しているとされています。
主要な幹線道路や広く利用されている道路には路線価が付されていることが多いものの、住宅地の内部を通る細い道路や、比較的新しく造られた道路などには、路線価図上に価額が表示されていないことがあるといわれています。路線価図は毎年更新されるため、まずは相続開始年分・贈与年分の路線価図で、対象の土地が接する道路に路線価の表示があるかどうかを、丁寧に確認することが出発点になると考えられます。
路線価図は国税庁のホームページで、地域を選択していく形で無料で閲覧できるようになっています。対象地の住所から地番が分からない場合には、公図や登記事項証明書とあわせて確認しながら、該当する道路を特定していく作業が必要になるといわれています。
倍率方式との使い分けの考え方
倍率方式は固定資産税評価額を基準にするため、路線価そのものを個別に調べる必要がない点が路線価方式とは異なる特徴といえます。評価倍率表には、地域ごとに宅地・田・畑・山林といった地目別の倍率が示されているとされています。固定資産税評価額は、市区町村から送付される固定資産税の納税通知書や、固定資産評価証明書で確認できるといわれています。
ある土地がどちらの方式で評価すべきかは、路線価図を確認し、該当地域に路線価の記載があるかどうかで判断することが基本になると考えられます。路線価図上でその地域が倍率地域である旨が示されている場合には、倍率方式により評価することになります。問題となるのは、路線価地域内にありながら、接する道路にだけ路線価がないという、次章で取り上げる状況です。
なお、倍率地域に所在する土地であれば、接する道路に路線価があるかどうかという問題自体が生じないため、特定路線価を検討する場面は基本的に路線価地域内の土地に限られると考えられます。この違いを最初に整理しておくと、以降の検討がしやすくなるでしょう。
路線価が設定されていない道路に接する土地とはどのような場合か
路線価地域内にあるにもかかわらず、接する道路に路線価が設定されていないという状況は、実務上いくつかの典型的なパターンで生じるといわれています。代表的な例として、開発分譲地の中の道路、位置指定道路、建築基準法上の道路にあたるかどうかがはっきりしない私道などが挙げられます。
例えば、比較的新しく造成された分譲住宅地では、区画内の道路が私道として整備されているものの、国税庁の路線価図が更新される前の道路であるため、路線価が付されていないという状況が起こり得るとされています。また、建築確認を受けるために自治体から指定を受けた位置指定道路についても、道路の幅員や利用実態によっては路線価が設定されていない場合があるといわれています。位置指定道路は、建築基準法上は道路として扱われる一方で、所有関係としては私道であることが多く、評価の観点からは特有の論点が生じやすいと考えられます。
さらに、複数の宅地に囲まれた敷地(いわゆる旗竿地・袋地に近い形状の土地)では、細い通路状の部分を通じてしか公道に出られない場合があり、その通路部分に路線価が設定されていないことも珍しくないとされています。このような土地は、接道状況が特殊であるがゆえに、標準的な路線価図の整備が及んでいないケースが多いと考えられます。加えて、土地区画整理事業の施行区域内で、換地処分の直後などにまだ路線価図の更新が追いついていない道路についても、同様の状況が生じることがあるといわれています。
こうした土地を相続税・贈与税の申告のために評価しようとすると、その土地に直接対応する路線価が存在しないため、単純に路線価図の数字を当てはめることができません。このような場合の評価方法としては、大きく分けて、次章で説明する特定路線価の設定を申し出る方法と、周辺の路線価を参考にしながら合理的な方法で評価額を算出する方法の2つが考えられるとされています。どちらを選ぶにしても、まずは対象地がどのような道路に接しているのかを正確に把握することが第一歩になります。
また、対象地が複数の道路に接している場合には、そのうち一本にでも路線価が設定されていれば状況が変わってきます。このケースでは、路線価のある道路を基準とした評価が可能になることが多く、路線価のない道路については、側方路線影響加算などの計算上の取り扱いを検討する場面で問題になることが多いとされています。すべての接続道路について、路線価の有無を漏れなく確認しておくことが大切だと考えられます。
実務上は、相続財産の一覧を作成する段階で、公図や住宅地図、現地の写真などを突き合わせながら、各土地が接する道路の種類や幅員、路線価の有無を一つずつ確認していく作業が必要になるといわれています。この確認作業を怠ると、申告の直前になって評価方法が定まらないという事態にもなりかねません。
具体的なイメージとして、数年前に区画整理された住宅地の一区画を相続財産として取得したケースを考えてみます。当該区画は幹線道路から一本入った私道に面しており、私道自体は分譲時に開発業者によって整備され、既に不特定多数の生活道路として利用されているとします。この私道について、相続開始時点の路線価図を確認したところ価額の表示がなかった場合、隣接する幹線道路の路線価をそのまま用いることはできず、私道部分について何らかの評価上の手当てを検討する必要が生じます。このような場面こそが、特定路線価の申出を検討する典型的な場面の一つといえるでしょう。
このほか、都市計画道路の予定区域に係る土地や、河川の付け替えなどに伴って新設された道路に接する土地についても、路線価の整備が現地の状況に追いついていないことがあるといわれています。地域の開発状況が比較的活発なエリアほど、こうした路線価未設定の道路に出会う可能性が高くなる傾向があると考えられます。
分譲地・位置指定道路のケース
開発許可や建築確認の手続きに伴って整備された道路は、私道であっても不特定多数の利用が想定されていることがあり、単なる敷地内通路とは性質が異なると考えられます。こうした道路であっても、路線価図の更新のタイミングによっては、路線価が付されていない状態がしばらく続くことがあるといわれています。
相続開始時点で路線価が付されていない場合、申告のためにはその時点での評価方法を検討する必要があり、後述する特定路線価の申出が選択肢の一つになります。分譲から間もない土地を相続財産として承継する場合には、この点をあらかじめ意識しておくとよいと考えられます。
分譲から数年が経過すると、翌年以降の路線価図の改定で価額が付されることもあるといわれていますが、相続開始時点の路線価図に価額がない以上、その時点での評価にあたっては特定路線価等の対応を検討せざるを得ないと考えられます。
旗竿地・行き止まり道路のケース
旗竿地のように、細い通路部分を通じて公道に接続する土地では、その通路部分自体が私道として扱われ、独立した路線価が設定されていないことが多いといわれています。
このような土地の評価にあたっては、通路部分の扱いと、奥にある主たる敷地部分の評価を分けて考える必要があり、専門的な判断を要する場面が多いとされています。次章で解説する特定路線価は、こうした場面での評価の拠り所となる制度の一つです。
通路部分の幅員が極端に狭い場合には、建築基準法上の接道義務との関係で、そもそもその敷地に建物を再建築できるかどうかという別の論点も生じることがあるといわれています。評価の場面だけでなく、不動産としての利用可能性もあわせて確認しておくと安心につながると考えられます。
特定路線価とは何か——制度の概要と対象となる条件
特定路線価とは、相続税や贈与税の申告のために、路線価地域内にある宅地等のうち、路線価が設定されていない道路のみに接しているものを評価する必要がある場合に、納税者からの申出に基づいて、税務署長がその道路について個別に設定する路線価であるとされています。財産評価基本通達においてこの取り扱いが定められているといわれています。
対象となるための条件としては、大きく2点があるといわれています。1点目は、評価しようとする土地が路線価地域内に所在していることです。倍率地域に所在する土地であれば、そもそも倍率方式で評価することになるため、特定路線価の対象にはならないと考えられます。2点目は、その土地が接している道路のすべてに路線価が設定されていないことです。仮に接している道路のうち一本にでも路線価が設定されている場合は、通常その路線価を用いて評価することになり、特定路線価を申し出る必要性は生じにくいとされています。
この2つの条件は、いずれも申出の前提として確認しておくべき基本的な事項であり、どちらか一方でも満たしていない場合には、そもそも特定路線価という制度の対象外になると考えられます。まずは対象地の所在地域と、接続するすべての道路の状況を正確に整理することが、申出を検討するうえでの出発点になるといえるでしょう。
特定路線価は、あくまで対象となる特定の土地の評価のために、申出のあった道路について個別に算定される価額であり、毎年公表される通常の路線価とは異なり、周辺の路線価などを参考に、税務署側で個々の事情に応じて設定されるものと理解されています。具体的には、対象の道路に接続する既存の路線価が付された道路の価額をベースに、道路の幅員や利用状況、周辺の環境などを踏まえて調整が行われると考えられます。設定された特定路線価は、その申出に係る土地の評価のためだけに用いられるものであり、周辺一帯に一律に適用される公式な路線価として公表されるものではないとされています。
このような算定方法がとられている背景には、路線価が定められていない道路であっても、その周辺には必ず路線価の設定された道路が存在しているという路線価地域特有の事情があると考えられます。税務署は、こうした周辺の路線価の水準や、対象道路と周辺道路との位置関係、幅員の違いなどの客観的な情報をもとに、合理的と考えられる価額を導き出す作業を行っていると理解されています。
相続税の申告実務においては、こうした土地が相続財産に含まれていることに気づかずに、誤った評価方法(例えば近隣の路線価をそのまま流用するなど)で申告してしまうと、後の税務調査で評価額の誤りを指摘される可能性も考えられます。対象となる土地の有無を早い段階で確認しておくことが望ましいといえるでしょう。
評価額の誤りが後から判明した場合、本来納めるべき税額よりも少ない金額で申告していたときは、修正申告とあわせて過少申告加算税や延滞税の負担が生じる可能性があるとされています。逆に評価額を実態より高く見積もりすぎていた場合には、本来よりも多く納税してしまうことにもなりかねません。いずれの意味でも、対象地の評価方法を適切に選択することには意義があると考えられます。
なお、特定路線価の設定を求めるかどうかは納税者の任意であり、必ず申出をしなければならないという制度ではないとされています。次章以降で取り上げる代替的な評価方法とあわせて、状況に応じて選択することになります。
また、対象地が路線価地域内にあっても倍率地域との境界付近に位置している場合や、行政区画をまたぐ道路に接している場合など、判断がやや複雑になる状況も想定されます。こうしたケースでは、地域区分そのものの確認から慎重に行う必要があり、路線価図・評価倍率表の表示だけでは判断がつきにくいときは、所轄の税務署に確認することが望ましいと考えられます。
特定路線価という名称から、あたかも公式な路線価と同列の制度であるかのような印象を持たれることもありますが、性質としてはあくまで個別の申出に基づく限定的な評価上の取り扱いであるという点を理解しておくことが、その後の手続きを進めるうえでの前提になると考えられます。
だれが申出をすることができるか
特定路線価の設定の申出は、その土地等を相続、遺贈または贈与により取得した人など、当該申告に係る納税義務者やその代理人が行うことができるとされています。申告を予定している相続人が複数いる場合には、代表して申出を行うことも可能と考えられます。
申出にあたっては、対象となる土地の状況を具体的に示す必要があるため、実際の手続きは税理士等の専門家に相談しながら進められることが多いといわれています。税理士が代理人として申出書を作成・提出する運用も一般的とされています。
複数の相続人が同じ土地を共有で取得する見込みである場合には、そのうちの一人が代表して申出を行うことでも差し支えないと考えられますが、あらかじめ他の相続人にも申出の内容を共有しておくと、後の申告手続きが円滑に進みやすいといわれています。
設定された特定路線価の効力
いったん特定路線価が設定されると、その価額は当該申出に係る土地の評価において用いるべき路線価として扱われることになるとされています。設定後に、他の評価方法の方が有利であるとして評価方法を選び直すことは基本的に想定されていないといわれています。
そのため、特定路線価の申出を行うかどうかは、次章以降で触れる代替的な評価方法とのバランスも踏まえて、慎重に検討することが望ましいと考えられます。設定後に想定と異なる価額が示された場合の心構えについても、事前に整理しておくとよいでしょう。
設定された特定路線価は、あくまでその年分の評価のために示されるものであり、翌年以降に同じ土地を再度評価する必要が生じた場合(例えば二次相続が発生した場合など)には、改めてその時点の状況に応じた申出が必要になると考えられます。時間の経過とともに周辺の路線価や道路の利用状況が変化することもあるため、以前の特定路線価をそのまま流用することはできないと理解しておく必要があります。
特定路線価設定申出書の提出手続き
特定路線価の設定を求める場合には、「特定路線価設定申出書」を作成し、必要な書類を添付したうえで、納税地を所轄する税務署長に提出することとされています。申出書の様式は、国税庁のホームページで公開されており、ダウンロードして使用できるようになっています。
申出書には、対象となる土地の所在地や地積、申出者の氏名・住所、申告予定の税目(相続税か贈与税か)などの基本的な情報のほか、対象の土地がどのような道路に接しているかを具体的に記載する欄が設けられているとされています。あわせて、「特定路線価により評価する土地等及び特定路線価を設定する道路の所在地、状況等の明細書」といった別紙の明細書を作成し、添付することが求められているといわれています。
このほかの添付書類としては、対象地の位置がわかる住宅地図等の案内図、地形図(公図の写しなど)、対象の道路や土地の状況が確認できる写真などが挙げられます。これらの資料は、税務署の担当者が現地の状況を把握し、周辺の路線価などと比較しながら妥当な価額を検討するための基礎資料になると考えられます。対象の道路が長い場合や、複数の分岐がある場合には、資料の点数も多くなる傾向があるといわれています。
このほか、固定資産税の課税明細書や登記事項証明書の写しなど、対象地の権利関係や地積を客観的に示す資料の提出を求められることもあるといわれています。手続きを進める中で追加の資料提出を依頼される場合もあるため、関連する書類はまとめて保管しておくと対応しやすいと考えられます。
申出書の提出方法については、税務署の窓口に持参するか、郵送によって提出することができるとされています。近年では、e-Taxを利用したオンラインでの提出が可能な場合もあるといわれていますが、対応状況は税務署や時期によって異なる可能性があるため、事前に所轄の税務署に確認しておくことが無難といえるでしょう。
なお、特定路線価の設定の申出そのものに手数料はかからないとされています。ただし、案内図や地形図、写真などの資料を準備する手間や、測量が必要になる場合の費用など、間接的なコストが生じる可能性はある点も踏まえておくとよいでしょう。
申出者本人が直接手続きを行うことも可能とされていますが、税理士等の専門家が代理人として申出書を作成・提出する場合には、委任関係を明らかにする書面をあわせて提出することが一般的といわれています。専門家に依頼する場合であっても、対象地の状況について申出者自身が把握しておくことは、その後の申告内容の確認にも役立つと考えられます。
申出書は通常、正本を1部提出する形になると考えられますが、控えを手元に残しておきたい場合には、提出時に副本への収受印を求めることができる場合もあるといわれています。提出後のやり取りに備えて、提出日や担当窓口の記録を残しておくことも実務上は有用と考えられます。
明細書・案内図等の準備のポイント
別紙の明細書には、対象の道路がどの地点からどの地点まで続いているか、幅員はどの程度か、周辺にどのような路線価が設定されているかといった情報を、できるだけ具体的に記載することが求められると考えられます。道路の起点・終点や延長距離を明確にしておくと、税務署側での検討がスムーズに進みやすいといわれています。
案内図や地形図は、公図の写しや住宅地図に対象の土地・道路を書き込んだものを用意することが一般的とされています。写真についても、道路の入口・中間・対象地に接する部分など、複数の地点から撮影しておくと状況が伝わりやすいといわれています。
資料の作成にあたっては、測量士や土地家屋調査士に依頼して正確な図面を用意することも一つの方法とされています。特に道路の幅員や延長が評価に影響する可能性がある場合には、正確な資料をそろえておくことが望ましいと考えられます。
提出先と相談窓口
提出先は、あくまで納税地(通常は被相続人の死亡時の住所地など)を所轄する税務署であり、対象の土地の所在地を管轄する税務署とは限らない点に注意が必要とされています。納税地と土地の所在地が異なる地域である場合には、特に混同しないよう気をつける必要があります。
手続きの詳細や必要書類の具体的な内容については、税務署の資産課税部門(評価担当)に事前に問い合わせをしておくと、やり取りがスムーズに進みやすいといわれています。
国税局や税務署によっては、特定路線価設定申出書の記載例や、よくある質問をまとめた案内をホームページ上で公開している場合もあるといわれています。申出書を作成する前に、こうした案内にも目を通しておくと理解が深まりやすいと考えられます。地域によって案内の詳しさに差がある可能性もあるため、複数の情報源を確認しておくとより安心につながると考えられます。
手続きにかかる期間とスケジュール管理の注意点
特定路線価の設定には、申出書を提出してから実際に価額が示されるまでに、一定の期間を要するとされています。目安として、概ね1か月から2か月程度の期間がかかる場合があるといわれており、対象となる土地の状況や時期によってはさらに時間を要することも考えられます。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内とされています。贈与税の場合は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までが申告期間となっているといわれています。特定路線価の設定を待ってから評価額を確定し、申告書を作成するという流れになるため、申出のタイミングが遅れると、申告期限に間に合わなくなるおそれがあります。対象となる土地が相続財産や贈与財産に含まれる可能性に気づいた時点で、できるだけ早期に検討を始めることが望ましいと考えられます。
実務上は、遺産分割の内容が固まる前の段階であっても、対象地の評価だけを先行して進めるために申出の準備に着手しておくケースもあるといわれています。申告期限の直前になって初めて対象地の存在に気づいた場合には、特定路線価の設定を待つ時間的な余裕がなく、後述する代替的な評価方法によらざるを得ない場面も出てくる可能性があります。
また、申出をしたからといって必ず希望通りに手続きが進むとは限らず、記載内容の不備や資料の不足があれば、税務署から追加の資料提出を求められることもあるとされています。このようなやり取りが発生すると、想定していた期間よりも長くかかることも考えられるため、余裕を持ったスケジュールで準備を進め、早い段階で税務署に相談しておくことが、円滑な手続きにつながると考えられます。
申出後の審査の過程では、担当者から対象地や道路の状況について電話や書面で追加の質問を受けることもあるといわれています。連絡がとれる状態を保ち、問い合わせに対して迅速に回答できるようにしておくことも、手続き全体を円滑に進めるうえで役立つと考えられます。
相続税の申告期限については、遺産分割協議がまとまらない場合などに一定の対応策が用意されていますが、特定路線価の手続きそのものについて期限を延長する制度が特別に設けられているわけではないとされています。したがって、評価に関する手続きは、遺産分割の議論とは切り離して、できる限り早めに進めておくことが実務上は安全と考えられます。
相続が発生した直後は、葬儀や各種の届出、準確定申告の準備など、多くの対応に追われることが一般的です。そのなかで土地の接道状況の確認や特定路線価の要否の検討は後回しにされがちですが、財産調査の初期段階でチェックリストの一項目として組み込んでおくと、後になって時間が足りなくなるという事態を避けやすくなると考えられます。
贈与税の申告についても、贈与を行う前の段階で対象地の接道状況を確認しておけば、申告期間が始まってから慌てて特定路線価の申出を検討するという事態を避けやすくなると考えられます。生前贈与を計画する際にも、評価に関する下調べを早めに行っておくことが望ましいでしょう。
逆算したスケジュールの立て方
申告期限の10か月から、特定路線価の設定にかかる期間(概ね1〜2か月程度)や、その後の遺産分割協議・申告書作成に要する期間を逆算すると、相続開始後できるだけ早い段階、遅くとも申告期限の3〜4か月前程度には、対象地の有無を確認し、申出の要否を判断しておくことが望ましいと考えられます。
特に相続財産の調査自体に時間がかかりそうな場合には、土地の接道状況の確認を優先的な作業の一つとして位置づけておくと、後々のスケジュールに余裕が生まれやすいといわれています。
年末年始や大型連休の前後は、税務署の窓口対応や処理に通常より時間がかかる可能性も考えられるため、こうした時期をまたぐ申出を検討している場合には、あらかじめ余裕を見込んでおくことが望ましいでしょう。
期限に間に合わない場合の考え方
諸事情により特定路線価の回答を待つ時間がない場合には、いったん次章で説明する代替的な評価方法により申告を行い、その後に更正の請求等で調整することが可能かどうかを含めて検討することになると考えられます。ただし、こうした対応は個別の事情によって適否が異なるため、早めに専門家に相談することが望ましいといえるでしょう。
また、遺産分割がまとまらないことを理由に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出して各種特例の適用を留保するケースはあるものの、これは遺産分割に関する制度であり、土地評価の方法そのものの期限を延ばす制度ではない点は区別して理解しておく必要があると考えられます。
特定路線価を使わない場合の評価方法との比較
特定路線価の設定を申し出ずに、路線価が設定されていない道路に接する土地を評価する方法としては、その土地が接続している(あるいは近接する)路線価が設定された道路の価額を基礎とし、当該道路からの奥行きなどを考慮した合理的な方法で評価額を算出するという考え方があるといわれています。
この方法は、特定路線価の設定を待つ必要がないため、時間的な制約がある場合には現実的な選択肢となり得ます。もっとも、どのような補正を行うのが合理的かについて明確な基準が示されているわけではなく、評価者の判断に委ねられる部分が大きいため、税務調査などで評価方法の妥当性が問題になる可能性も否定できないとされています。特に、複数の合理的な計算方法が考えられる場合には、選んだ方法によって評価額に差が生じることもあり得るといわれています。
これに対して、特定路線価はあらかじめ税務署に評価の考え方を確認したうえで設定される価額であるため、その価額を用いて申告した場合には、評価方法そのものについて後から争いになりにくいという安心感があるといわれています。一方で、特定路線価は周辺の路線価等をもとに税務署側で算定されるものであるため、必ずしも納税者にとって有利な(低い)価額になるとは限らない点にも留意が必要とされています。場合によっては、納税者側の見積もりよりも高い価額が示されることもあり得ると考えられます。
このため、複数の相続財産のうち評価額の大小が遺産分割の話し合いに影響しそうな土地については、特定路線価を申し出るかどうかを決める前に、想定される価額の幅を専門家とともに検討しておくことが望ましいと考えられます。評価額の見通しを共有しておくことで、相続人間の認識のずれを防ぎやすくなるといえるでしょう。
さらに、対象地を将来的に売却する予定があるかどうかも、判断材料の一つになり得ると考えられます。相続税の申告のために設定された特定路線価は、あくまで税務上の評価額であり、実際の売買価格を直接示すものではありませんが、売却を検討している場合には、その後の取得費加算の特例など、他の税務上の手続きとの関係も視野に入れて全体像を整理しておくとよいでしょう。
このように、特定路線価の申出には、評価の安定性が高まるという利点と、結果的に評価額が高くなる可能性があるという両面があると考えられます。どちらの方法を選択するかは、対象地の状況、申告期限までの時間的余裕、想定される評価額の水準などを総合的に考慮して判断することが望ましいといえるでしょう。
なお、いずれの評価方法を採用する場合であっても、評価の根拠となる資料や計算過程を書面として残しておくことは共通して重要とされています。申告後に評価の妥当性について説明を求められた際に、根拠資料が整理されていれば、円滑に対応しやすくなると考えられます。
両者を比較する際の視点を整理すると、特定路線価は「評価方法の確実性」を重視する考え方、接続する路線価を用いる方法は「手続きの迅速性」を重視する考え方であるという整理ができると考えられます。相続財産全体の規模や、他に検討すべき論点の多さ、申告期限までの残り時間なども踏まえて、総合的に判断することが望ましいでしょう。
また、相続財産に占める対象地の割合が小さい場合には、評価方法の違いによる税額への影響も相対的に小さくなることが多いと考えられます。一方で、対象地が財産全体の中で大きな比重を占める場合には、どちらの評価方法を選ぶかがその後の税額に与える影響も大きくなり得るため、より慎重な検討が必要になると考えられます。
接続する路線価を用いる評価方法の考え方
接続する道路の路線価を基礎に据える方法では、対象地までの奥行き距離や、途中の通路部分の形状などを踏まえて、奥行価格補正などの各種補正を組み合わせて評価額を算出することになると考えられます。
この場合、補正の適用の仕方によって評価額に幅が生じやすく、申告後に評価方法の妥当性が問われる可能性がある点は、あらかじめ理解しておく必要があるといわれています。土地の形状が複雑なほど、この方法による評価の難易度は高くなる傾向があると考えられます。
このような評価を行う場合には、不動産鑑定士や土地評価に詳しい税理士など、専門知識を持つ第三者の意見を踏まえながら計算過程を組み立てることが、後日の説明のしやすさにつながると考えられます。
どちらを選ぶかの判断材料
時間的な余裕があり、評価額の安定性を重視するのであれば特定路線価の申出を、申告期限が迫っており迅速な対応が必要な場合には接続する路線価を用いた評価を検討するというように、状況に応じて使い分けることが現実的な対応になると考えられます。
いずれの方法を選ぶ場合でも、判断の根拠を記録として残しておくことが、後日の説明の際に役立つといわれています。
対象地の評価額が相続税額全体に与える影響の大きさも、判断材料の一つになると考えられます。評価額の水準によって、いずれの方法を選んでも税額への影響が限定的な場合と、選び方次第で税額が大きく変わり得る場合とでは、慎重さの度合いも変わってくるといえるでしょう。
特定路線価を申し出る際の実務上の注意点
特定路線価の申出を検討する際にまず意識しておきたいのは、申出をした場合、原則としてその結果として示された価額を用いて申告することが前提になるとされている点です。申出後に、やはり別の評価方法の方が低い価額になりそうだからといって、都合よく評価方法を選び直すことは想定されていないといわれています。
そのため、申出を行う前段階で、対象地のおおよその評価水準がどの程度になりそうかを、周辺の路線価などを参考にある程度見積もっておくことが望ましいと考えられます。見積もりと大きくかけ離れた結果が示された場合の対応についても、あらかじめ想定しておくと安心につながるといえるでしょう。
また、特定路線価はあくまで申出のあった特定の土地の評価のために設定されるものであり、同じ道路に接する他の土地について当然に適用されるものではないとされています。将来、同じ道路に接する別の土地を評価する必要が生じた場合には、改めて申出が必要になる可能性がある点にも留意が必要です。共有者や近隣の相続人がいる場合には、この点を関係者間で共有しておくとよいと考えられます。
このほか、申出書や添付書類の記載内容に不備があると、税務署とのやり取りに時間を要し、想定していたスケジュールに影響が出ることもあるといわれています。対象地の測量図や公図、現況写真などの資料は、早めに収集・整理しておくことが望ましいと考えられます。
過去に同一の土地または同じ道路について特定路線価の設定を受けた実績がある場合には、その際の申出書や資料の控えが参考資料として役立つこともあるといわれています。相続が繰り返し発生する家系では、こうした過去の記録を整理して保管しておくことが、将来の手続きの効率化につながる可能性があります。もっとも、前述のとおり過去の価額をそのまま新しい申告に用いることはできないため、あくまで参考情報としての位置づけにとどまる点には注意が必要です。
さらに、対象の土地が複数の道路に接している場合(角地など)には、特定路線価が設定された道路以外の接続道路の扱いについても、あわせて確認しておく必要があるとされています。角地の評価では、正面路線と側方路線のそれぞれについて加算調整を行う仕組みがあるため、特定路線価が正面・側方のいずれに位置づけられるかによって、計算の組み立て方が変わってくると考えられます。
設定された特定路線価の内容に納得がいかない場合の対応についても、あらかじめ理解しておくとよいと考えられます。税務署の判断に不服がある場合には、一般の税務処分と同様に、再調査の請求や審査請求といった不服申立ての手段が制度上は用意されているといわれていますが、特定路線価の設定は個別事情を踏まえた専門的な判断であるため、実際に不服申立てが認められるかどうかは事案ごとに異なると考えられます。申出前の見積もりの精度を高めておくことが、結果的にこうした事態を避けることにつながるでしょう。
最後に、特定路線価の設定は土地の評価に関する手続きであり、遺産分割や相続放棄など、相続そのものの手続きとは別の話であるという整理も大切だと考えられます。評価額が定まっていないことを理由に遺産分割の話し合い自体を止めてしまうのではなく、両者を並行して進めていくという意識を持つことが、全体としてスムーズな相続手続きにつながるでしょう。
複数の相続人がいる場合の連携
相続人が複数いる場合、遺産分割の方向性によって、対象地を誰が取得するかが定まっていないと、申出の当事者や申告の主体があいまいになりやすいといわれています。早い段階で相続人間の情報共有を図っておくことが望ましいと考えられます。
特に、対象地を共有で取得する見込みがある場合には、代表者を決めて手続きを一本化しておくと、資料の重複作成などを避けやすくなると考えられます。
遺産分割の話し合いが難航している場合には、評価額の確定が分割方針の検討材料にもなり得るため、評価に関する手続きだけは先行して進めておくという考え方も実務上はあり得ると考えられます。
専門家への相談のタイミング
対象地の状況によっては、そもそも特定路線価の申出が必要かどうかの判断自体に専門的な知識を要する場合もあるといわれています。路線価図を確認して疑問が生じた時点で、早めに税理士等の専門家に相談することが、結果的にスムーズな手続きにつながると考えられます。
相続財産の中に評価が難しい土地が含まれていると分かった段階で、申告全体のスケジュールを見直すきっかけにもなります。土地の評価に不安がある場合には、財産全体の把握を進める初期の段階から専門家に関与してもらうことが望ましいと考えられます。
私道評価との関係・混同しやすい制度の整理
特定路線価としばしば混同されやすい論点として、私道そのものの評価方法があります。私道の評価は、その私道が不特定多数の人の通行の用に供されているか、特定の人だけが利用する行き止まりの道路であるかによって、扱いが分かれているとされています。
不特定多数の人が通行するいわゆる通り抜け道路にあたる私道については、その私道部分の価額を評価しないもの、つまりゼロとして扱う考え方が採られているといわれています。これは、不特定多数の人によって道路として利用されている私道について、第三者の通行を容認しなければならないことや、建築基準法上の制限により道路内での建築等が制限されることなど、利用に一定の制約があることを踏まえた考え方とされています。
一方、特定の人だけが利用する行き止まりの私道については、その私道が私道でないものとして評価した価額の3割程度の水準で評価するという考え方が示されているとされています。行き止まりの私道は、通り抜け道路と比べて利用者が限定される一方で、全く自由に使える土地とも言い切れないため、一定の減額を認める形になっていると理解されています。
なお、通り抜け道路にあたるかどうかは、単に道路の形状が行き止まりでないというだけでなく、実際に不特定多数の第三者が日常的に通行しているかどうかという利用実態を踏まえて判断されるといわれています。形状だけで自動的に判定できるものではなく、現況の確認が欠かせない論点の一つとされています。
これに対して特定路線価は、私道であるかどうかにかかわらず、路線価地域内で路線価が設定されていない道路について、評価のための路線価そのものを新たに設定してもらう制度です。私道の評価に関するルールは、私道部分自体の評価額をどう計算するかという論点であるのに対し、特定路線価は、道路に接する宅地側の評価に用いる路線価をどう調達するかという論点であり、両者は場面が異なるものの、実務上は同じ相続税申告の中で併せて検討することになる場合が多いと考えられます。
例えば、行き止まりの私道の奥にある宅地を評価する場合、その私道に路線価が設定されていなければ特定路線価の申出を検討することになり、あわせてその私道自体の評価(0円になるか、3割評価になるか)も別途判断する必要があるといえます。このように、一つの相続財産の評価であっても複数の論点が絡み合うことがあるため、対象地の状況を一つずつ整理しながら検討を進めることが大切だと考えられます。
また、私道の持分がどのように登記されているかによっても、実務上の取り扱いが変わってくる場合があるといわれています。私道部分を関係する宅地の所有者全員で共有しているケースもあれば、特定の一名が単独で所有し他の利用者に通行権のみを設定しているケースもあり、権利関係の確認自体が評価の前提として必要になることも少なくないとされています。
相続税の土地評価は、路線価や倍率といった公表された数値をそのまま当てはめれば完了するとは限らず、今回取り上げた特定路線価のように、個別の事情に応じた手続きが必要となる場面が少なくないといわれています。対象となる土地の状況を早めに把握し、必要な手続きを見落とさないようにすることが、円滑な申告につながる第一歩になると考えられます。特に、相続財産に複数の不動産が含まれる場合には、一つずつ接道状況を確認していく地道な作業が、結果的に申告全体の正確性を高めることにつながると考えられます。
ここまで解説してきた内容を整理すると、対象地の確認、路線価地域か倍率地域かの判定、接する道路への路線価の有無の確認、特定路線価の申出の要否の判断、申出に伴うスケジュール管理、私道の評価との切り分けという流れで検討を進めることになります。一つひとつの工程は独立しているように見えても、実際には申告期限という共通の制約のもとで並行して進めていく必要があるため、全体の見通しを立てながら取り組むことが重要だと考えられます。
こうした一連の手続きは、相続税申告の中でも見落とされやすい細部の一つであるといわれています。日頃から不動産の相続に関わる機会が多い専門家であっても、路線価の有無や私道の性質を一つずつ丁寧に確認する姿勢が求められる分野であり、まして相続を経験する機会が限られる一般の方にとっては、なおさら慎重な確認が必要な領域だと考えられます。
私道の評価と特定路線価の使い分けイメージ
対象地が私道にのみ接している場合には、まずその私道自体が通り抜け道路なのか行き止まり道路なのかを整理し、そのうえで私道に路線価が設定されているかどうかを確認するという順序で検討を進めると、論点の整理がしやすいと考えられます。
これらの判断は現地の利用状況にも左右されるため、公図や住宅地図だけでなく、実際に現地を確認しておくことが望ましいといわれています。
私道の利用状況は年月とともに変化することもあるため、過去の状況ではなく、あくまで相続開始時点や贈与時点における実際の利用状況を基準に判断することが基本になると考えられます。
全体像の整理と申告への反映
最終的には、私道部分の評価額と、私道を通じて接続する宅地部分の評価額をそれぞれ算出したうえで、申告書に反映させることになります。両者の関係を混同しないよう、評価の過程を整理したメモを残しておくことが、後日の見直しの際にも役立つといわれています。
土地の評価は相続税額全体に大きく影響する項目であるため、疑問点が残る場合には自己判断で進めず、早めに専門家へ確認することが望ましいと考えられます。
今回取り上げた特定路線価のような手続きは、知らなければ見落としてしまいがちな論点の一つです。相続財産に土地が含まれる場合には、路線価の有無を含めて接道状況を確認する習慣をつけておくことが、正確な申告につながる基本的な心構えになると考えられます。