[池袋] 特定事業用宅地等の小規模宅地等の特例とは?個人事業の宅地相続の要件#相続税#税理士#池袋
個人で事業を営んでいた人が亡くなり、その事業の用に供されていた宅地を相続する場面では、相続税の計算にあたって「小規模宅地等の特例」のうち「特定事業用宅地等」に区分される制度の適用が問題になることがあります。この特例は、一定の要件を満たす場合に宅地の評価額を大きく減額できる仕組みとされていますが、貸付事業用宅地等や特定同族会社事業用宅地等など、似た名称の区分と混同されやすく、要件も細かく定められています。とりわけ、相続開始前の一定期間内に新たに事業を始めた宅地については適用が制限される規定があるなど、注意すべき論点も少なくありません。この記事では、特定事業用宅地等の基本的な考え方から、適用要件、他の区分との違い、限度面積と減額割合、遺産分割が申告期限までにまとまらない場合の対応、実務上の注意点まで、個人で事業を営む家庭が相続に備える際に押さえておきたいポイントを整理して解説します。個別の事業内容や家族構成によって当てはまり方が変わってくるため、実際の適用にあたっては専門家への相談も選択肢に入れておくとよいでしょう。事業を営む宅地等は評価額が高額になりやすく、特例の適否がそのまま相続税額の大小に直結する場面も多いため、早めの理解が家族全体の安心にもつながると考えられます。
目次
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特定事業用宅地等の小規模宅地等の特例とはどのような制度か
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小規模宅地等の特例における4つの区分
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対象となる「事業」の範囲と不動産貸付業の扱い
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特定事業用宅地等として認められるための要件
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被相続人の事業用宅地等を取得する場合の要件
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生計一親族の事業用宅地等を取得する場合の要件
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相続開始前に事業を始めた宅地等に対する制限
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3年以内新規事業用宅地等に該当するとされる場合
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特定事業用資産の価額が15%以上であるという例外要件
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貸付事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等との違い
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不動産貸付業は特定事業用宅地等の対象にならない
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個人事業を法人化している場合の考え方
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限度面積・減額割合と他の区分と併用する場合の考え方
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400平方メートル・80%減額の内容
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貸付事業用宅地等と併用する場合の面積調整
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遺産分割が申告期限までにまとまらない場合の対応
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未分割の場合は原則として特例を適用できない
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申告期限後3年以内の分割見込書の活用
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事業を廃止・転用した場合や賃貸に転用した場合の注意点
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申告期限までに事業を廃止した場合の考え方
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宅地等の一部を賃貸用に転用した場合の按分
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相続税申告における実務上の注意点
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申告書に添付する主な書類
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税務調査で確認されやすいポイント
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特定事業用宅地等の小規模宅地等の特例とはどのような制度か
小規模宅地等の特例とは、被相続人等の居住や事業の用に供されていた宅地等について、一定の要件を満たす場合に、相続税の計算上その評価額を一定割合減額できる制度とされています。自宅の敷地を対象とする「特定居住用宅地等」が広く知られていますが、このほかに、個人が営む事業の敷地を対象とする「特定事業用宅地等」、賃貸不動産の敷地を対象とする「貸付事業用宅地等」、被相続人が同族会社に貸し付けていた宅地等を対象とする「特定同族会社事業用宅地等」という区分が設けられているとされています。
このうち特定事業用宅地等は、被相続人またはその生計を一にしていた親族が、相続開始の直前において、不動産貸付業以外の事業の用に供していた宅地等が対象になると考えられています。たとえば、個人商店の店舗の敷地、工場や倉庫の敷地、農業以外の生産設備を置いている敷地などが典型例として挙げられることが多いようです。
この特例の趣旨は、事業を営んでいた宅地について相続税の負担が重くなりすぎると、事業そのものの継続が困難になりかねないという配慮に基づくものとされています。相続によって多額の税負担が生じ、その支払いのために事業用の土地を手放さざるを得なくなるといった事態を避けるための仕組みという整理がされています。
特定事業用宅地等に該当すると判定された場合、限度面積の範囲内で宅地等の評価額が大きく減額されるため、相続税の総額に与える影響は小さくないとされています。そのため、対象となる宅地があるかどうか、また要件を満たしているかどうかを、申告の準備段階から丁寧に確認しておくことが望ましいと考えられます。
もっとも、事業の実態や宅地の利用状況は家庭によってさまざまであり、形式的には事業用宅地に見えても、細部の要件を満たしていなければ特例の適用が認められない場合もあります。逆に、一見すると要件を満たしていないように見えても、実際には特例の対象になり得るケースもあるため、思い込みで判断せず、事実関係を丁寧に整理したうえで検討することが大切です。
特定事業用宅地等の判定は、宅地等の利用状況だけでなく、誰がその事業を営んでいたか、相続後に誰が事業を引き継ぐかといった人的な要件も絡んでくるため、単純な当てはめだけでは判断がつかない場合も少なくありません。個々の事情に応じて、要件を一つずつ確認していく姿勢が求められます。
このように、特定事業用宅地等の特例は、個人で事業を営んできた家庭にとって相続税額を大きく左右し得る重要な制度である一方、他の区分との違いや細かな要件を正確に理解しておく必要がある分野といえます。
近年は、後継者不足を背景に、事業を廃業するか、第三者に事業譲渡するか、それとも親族内で承継するかを悩む家庭も少なくないとされています。どの選択をするかによって、宅地等が相続開始時点で事業の用に供されているかどうかが変わってくるため、事業の将来像を検討する段階から、相続税への影響もあわせて考えておくことが望ましいといえます。
小規模宅地等の特例における4つの区分
小規模宅地等の特例は、宅地等の利用状況に応じて、特定居住用宅地等、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等という4つの区分に大別されると整理されています。それぞれ限度面積や減額割合が異なり、また要件も個別に定められているとされています。
同じ被相続人の遺産の中に複数の区分に該当し得る宅地等が含まれている場合には、どの宅地等についてどの区分の特例を選択するかによって、最終的な相続税額が変わってくることもあります。複数の宅地がある場合には、組み合わせごとの試算を行っておくことが望ましいと考えられます。
区分ごとに要件が異なるため、ある宅地が複数の区分の要件を形式的に満たしているように見える場合でも、実際にはいずれか一つの区分でしか特例の対象にならないこともあります。宅地等の利用実態を正確に把握したうえで、当てはまる区分を見極める必要があります。
区分の判定を誤ると、本来受けられたはずの減額を受けられなくなる可能性もあるため、申告前の段階で複数の専門家の目を通しておくことも一つの方法と考えられます。
宅地等が複数ある家庭では、区分ごとの適用パターンを一覧にして整理しておくと、比較検討がしやすくなります。
相続開始前から、どの宅地等がどの区分に該当しそうかをおおまかに把握しておくだけでも、相続発生後の対応がかなり円滑になると考えられます。
対象となる「事業」の範囲と不動産貸付業の扱い
特定事業用宅地等における「事業」とは、不動産貸付業、駐車場業及び自転車駐車場業並びに準事業を除く事業を指すとされています。つまり、アパートやマンションの賃貸、月極駐車場の経営などは、この特例における「事業」には含まれず、別区分である貸付事業用宅地等の対象として整理されることになります。
そのため、個人商店や工場、飲食店、事務所など、いわゆる一般的な事業活動の敷地であれば特定事業用宅地等の対象になり得る一方、同じく「事業」という言葉が使われていても、不動産の貸付けを中心とする経営であれば別の区分で検討することになる点に注意が必要です。
事業の実態を判断する際には、名目上の業種ではなく、実際にどのような活動を行っていたかという実質面が重視されると考えられています。形式的な屋号や登録内容だけで判断せず、実際の営業実態を確認しておくことが大切です。
複数の事業を並行して営んでいた場合には、宅地等ごとにどの事業の用に供されていたかを個別に確認する必要があります。
事業の実態を裏付ける資料(帳簿や契約書など)は、日頃から整理しておくと、相続発生後の確認がスムーズになります。
特定事業用宅地等として認められるための要件
特定事業用宅地等の特例の適用を受けるためには、宅地等を誰が事業の用に供していたか、また相続後に誰が取得し事業を引き継ぐかによって、要件の内容が異なるとされています。大きく分けると、被相続人自身が営んでいた事業の敷地である場合と、被相続人と生計を一にしていた親族が営んでいた事業の敷地である場合とで、それぞれ別の要件が定められています。
被相続人の事業の用に供されていた宅地等については、その宅地等を取得した親族が、相続税の申告期限までにその事業を引き継ぎ、かつ申告期限まで引き続きその宅地等を保有し、事業を営んでいることが要件とされています。事業を引き継ぐ親族が明確でない場合や、複数の親族が関わっている場合には、誰がどの部分を取得し、事業を引き継ぐのかを遺産分割の中で整理しておく必要があります。
一方、被相続人と生計を一にしていた親族が営んでいた事業の敷地については、その親族自身が相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の事業の用に供しており、かつ申告期限まで宅地等を保有していることが要件とされています。この場合、事業を営んでいた本人がそのまま取得し、事業を継続するケースが典型例として想定されています。
「生計を一にしていた」かどうかの判定は、必ずしも同居しているかどうかだけで決まるものではなく、生活費の負担状況など実質的な事情も踏まえて総合的に判断されるとされています。同居していない親族であっても、生活費を継続的に負担しているなどの事情があれば、生計を一にしていたと判断される余地があると考えられています。
申告期限までの事業継続と宅地等の保有という要件は、相続開始後の対応いかんによって満たせるかどうかが変わってくる部分でもあります。相続開始後、事業を引き継ぐ意思のある親族が早い段階で決まっていない場合には、申告期限までに要件を満たせなくなるおそれもあるため、早期に方針を固めておくことが望ましいと考えられます。
また、宅地等の一部だけを事業の用に供していた場合には、事業の用に供されていた部分に限って特例の対象になるとされ、居住用や他の用途に使われていた部分については別途の取扱いになると考えられています。宅地等の利用状況を面積ごとに区分して把握しておくことが求められます。
これらの要件は細部にわたるため、事業を営んでいた宅地等がある場合には、相続開始後できるだけ早い段階で、誰がどの要件に当てはまるのかを確認しておくことが望ましいといえます。
なお、被相続人が複数の事業を営んでおり、それぞれ異なる親族が引き継ぐことを想定している場合には、宅地等ごとに要件充足の有無を個別に検討する必要があります。事業ごとに後継者の意向や経営状況が異なることも多く、画一的な整理では実情に合わない場合があるため、家族間で早めに認識をすり合わせておくことが望ましいと考えられます。
被相続人の事業用宅地等を取得する場合の要件
被相続人が営んでいた事業の敷地を親族が取得する場合には、その親族が相続税の申告期限までに事業を引き継ぎ、かつ申告期限まで宅地等を保有し続けていることが要件になるとされています。事業を引き継ぐという要件は、単に名義を変更するだけでなく、実際に事業活動を継続していることが前提になると考えられています。
事業を引き継ぐ親族が複数候補いる場合には、遺産分割協議の中で誰が宅地等を取得し事業を引き継ぐのかを早めに決めておくことが望ましいといえます。方針が定まらないまま申告期限が近づくと、要件を満たせるかどうかの判断が難しくなることもあります。
事業を引き継いだことを示す資料として、開業に関する届出の名義変更や、取引先との契約関係の引き継ぎ状況などが確認の材料になり得ると考えられています。
事業用の設備や在庫についても、宅地等とあわせて円滑に引き継げるよう、生前から準備を進めておくと安心です。
事業の引き継ぎに際しては、取引先や金融機関への連絡も早めに行っておくことが望ましいと考えられます。
後継者となる親族が複数の候補から一人に絞り込まれるまでに時間がかかる場合には、その間の事業運営をどのように続けるかについても、あらかじめ話し合っておくことが望ましいと考えられます。
生計一親族の事業用宅地等を取得する場合の要件
被相続人と生計を一にしていた親族が営んでいた事業の敷地については、その親族自身が相続開始前から申告期限まで引き続き自己の事業の用に供しており、かつ宅地等を保有していることが要件とされています。事業を営んでいた本人がそのまま宅地等を取得するケースが典型例です。
この場合、相続によって新たに事業を始めるわけではなく、もともと営んでいた事業をそのまま継続することが前提になっているため、被相続人の事業を新たに引き継ぐ場合とは要件の性質が異なる点に留意が必要です。
生計を一にしていたかどうかの判定資料としては、生活費の送金記録や、住民票上の住所地の状況などが確認材料になると考えられています。生計同一性が争点になりそうな場合には、こうした資料を整理しておくことが望ましいでしょう。
生計一親族が営む事業と被相続人が営む事業が近接した敷地にある場合には、それぞれの宅地等について適用される要件が異なる可能性があるため、個別に確認しておく必要があります。
生計一親族の事業実態を示す資料は、日頃から整理・保管しておくと安心です。
生計を一にしているかどうかの判定で迷う事情がある場合には、早めに専門家へ相談し、資料の準備状況も含めて確認しておくことが望ましいと考えられます。判断が難しい事案ほど、記録を早期に残しておくことの意味が大きくなるといえるでしょう。
相続開始前に事業を始めた宅地等に対する制限
特定事業用宅地等の特例をめぐっては、相続開始前の一定期間内に新たに事業の用に供された宅地等については、原則として特例の対象から除かれるという制限が設けられているとされています。この規定は、相続税対策として相続開始の直前に急きょ事業を開始し、特例の適用を狙うといった行為を防ぐ趣旨で設けられていると理解されています。
具体的には、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等は、原則として「3年以内新規事業用宅地等」として特例の対象外になるとされています。長年にわたって事業を営んできた宅地等ではなく、相続開始の直前になって初めて事業用に転用されたような宅地等が主に想定されている規定といえます。
もっとも、この制限には例外が設けられており、その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産(いわゆる特定事業用資産)の価額が、その宅地等の相続開始時の価額の一定割合以上を占めている場合には、3年以内に事業を開始した宅地等であっても特例の対象になり得るとされています。この割合の要件は「15%以上」であることが必要とされており、実質的な事業投資が伴っているかどうかを判定基準としていると考えられます。
この例外要件を満たすかどうかを判断するには、宅地等の相続税評価額と、その上にある建物・設備等の減価償却資産の価額を、それぞれ正確に算定する必要があります。評価額の算定を誤ると、特例の適用可否についての判断も誤ってしまう可能性があるため、慎重な計算が求められます。
相続開始前3年以内に事業を始めたかどうかの判定は、宅地等ごとに個別に行われるとされています。同じ被相続人が複数の事業用宅地等を保有している場合には、それぞれの宅地等について、いつから事業の用に供されていたかを確認しておく必要があります。
この制限は、あくまで租税回避的な利用を防ぐための規定と位置づけられていると考えられますが、実際に長期間事業を営んできた家庭であっても、事業の拡大や移転などの事情で直近に新たな宅地等を事業用に転用したようなケースでは、意図せずこの制限の対象になってしまうこともあり得ます。事業用地の異動があった場合には、時期や経緯を記録しておくことが望ましいといえます。
このように、相続開始前の事業開始時期という一見単純な事実関係が、特例の適用可否を大きく左右することがあるため、事業用の土地の利用履歴を正確に把握し、必要に応じて記録を整理しておくことが重要です。
この制限が設けられた背景には、生前対策として直前に土地を事業用へ転用し、評価額を圧縮しようとする事例への対応があったとされています。制度趣旨を理解しておくと、なぜ細かな例外要件が設けられているのかも把握しやすくなり、実際の該当性を検討する際の助けになると考えられます。
3年以内新規事業用宅地等に該当するとされる場合
相続開始前3年以内に、それまで事業の用に供されていなかった宅地等を新たに事業用に転用した場合、その宅地等は原則として3年以内新規事業用宅地等に該当し、特定事業用宅地等の特例の対象から除外されるとされています。事業を始めた時期の記録が重要な意味を持つ規定といえます。
この判定にあたっては、宅地等が事業の用に供され始めた具体的な日付を特定する必要があるため、事業の開始に関する届出の日付や、設備の設置時期を示す資料などが確認材料になると考えられています。
相続開始直前に事業を拡大する目的で新たな土地を取得し事業用に転用したような場合には、本来の事業拡大の趣旨であっても、この制限に該当してしまう可能性がある点に注意が必要です。
土地の取得や事業用への転用を検討する際には、この制限の存在も踏まえて、時期についてあらかじめ確認しておくことが望ましいといえます。
事業用地の異動履歴は、日付がわかる資料とあわせて保管しておくと、後日の確認がしやすくなります。
相続開始の時期が読みにくい場合には、事業用地の転用計画自体を前倒しできないか、専門家と相談しながら検討しておくことも一つの対応策になり得ると考えられます。
特定事業用資産の価額が15%以上であるという例外要件
3年以内新規事業用宅地等に該当する場合であっても、その宅地等の上にある建物や構築物、機械装置などの減価償却資産(特定事業用資産)の価額が、宅地等の相続開始時の価額の15%以上を占めているときは、例外的に特定事業用宅地等の特例の対象になり得るとされています。
この規定は、単に土地だけを事業用に転用したような形式的なケースと、実際に相応の設備投資を行って事業を営んでいるケースとを区別する趣旨によるものと理解されています。相応の事業投資が伴っていれば、租税回避目的とは異なると評価されると考えられます。
15%以上という割合の判定には、宅地等の評価額と減価償却資産の価額をそれぞれ正確に算出する必要があり、専門的な評価作業が必要になる場面が多いといえます。評価額の算定方法によって判定結果が変わり得るため、慎重な検討が求められます。
この例外要件に該当するかどうかがはっきりしない場合には、早めに専門家に評価額の算定を依頼し、適用の可否を確認しておくことが望ましいと考えられます。
減価償却資産の取得時期や価額を示す資料は、日頃から整理しておくと、いざというときの評価がスムーズになります。
建物や設備の帳簿価額と相続税評価上の価額は必ずしも一致しないため、この15%要件を検討する際には、税務上の評価ルールに沿った価額で判定する必要がある点にも留意が必要です。
貸付事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等との違い
特定事業用宅地等と混同されやすい区分として、貸付事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等が挙げられます。いずれも「事業」に関連する宅地等を対象とする点は共通していますが、要件や限度面積、減額割合はそれぞれ異なるとされています。
貸付事業用宅地等は、被相続人等が不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業またはこれらに類する準事業の用に供していた宅地等が対象になるとされています。アパートやマンションの敷地、月極駐車場の敷地などが典型例として挙げられます。特定事業用宅地等が不動産貸付業を明示的に除外していることと対をなす関係にあるといえます。
特定同族会社事業用宅地等は、被相続人及びその親族等が発行済株式の一定割合以上を有する同族会社の事業の用に供されていた宅地等で、被相続人がその法人に貸し付けていた宅地等が対象になるとされています。個人事業を法人化(いわゆる法人成り)している場合に問題になりやすい区分といえます。
個人で事業を営んでいたか、法人化して事業を営んでいたかによって、同じような事業実態であっても適用される区分が異なってくる点は、実務上見落とされやすいポイントの一つです。個人事業から法人化への移行を検討している家庭では、相続税の面からもこの違いを理解しておくことが望ましいといえます。
また、被相続人が同族会社に土地を貸し付け、地代を受け取っていたようなケースでは、貸付けの実態が「事業的規模」であるかどうかによって、貸付事業用宅地等として扱われるのか、特定同族会社事業用宅地等として扱われるのかが変わってくる可能性があります。個々の契約関係や地代の設定状況を確認しながら判断する必要があります。
これらの区分の違いを正確に理解しないまま申告を進めてしまうと、本来適用されるべき区分とは異なる前提で試算を行ってしまい、後になって申告内容の見直しが必要になることもあります。事業の形態や宅地等の利用状況を丁寧に整理したうえで、どの区分に該当するのかを慎重に判定することが重要です。
宅地等が複数あり、事業の形態も個人事業と法人経営が混在しているような家庭では、それぞれの宅地等についてどの区分が適用され得るのかを一つずつ整理しておくと、申告の見通しが立てやすくなると考えられます。
特に、被相続人が複数の会社に関与していたり、家族の代でそれぞれ異なる形態の事業を営んでいたりする場合には、宅地等と事業主体との対応関係が複雑になりがちです。相続開始前の段階で、どの宅地等がどの事業・法人と結びついているのかを図などで整理しておくと、相続発生後の区分判定がスムーズになると考えられます。
不動産貸付業は特定事業用宅地等の対象にならない
アパート経営や駐車場経営といった不動産貸付業は、特定事業用宅地等における「事業」から明示的に除外されているとされています。これらの用途に供されている宅地等は、別区分である貸付事業用宅地等の要件を満たすかどうかで判定することになります。
不動産貸付業と一般の事業とでは、限度面積や減額割合が異なるとされているため、宅地等の利用実態を正確に把握したうえで、どちらの区分で検討すべきかをあらかじめ確認しておく必要があります。
店舗兼賃貸物件のように、一つの建物の中に自ら営む事業のスペースと賃貸に出しているスペースが混在している場合には、宅地等を面積按分したうえで、それぞれ異なる区分で検討することもあり得ると考えられています。
混在型の利用がある場合には、面積の按分方法や区分の考え方について、早めに専門家に確認しておくことが望ましいといえます。
賃貸部分と自営部分の面積を示す図面や資料を整理しておくと、按分の際の判断がしやすくなります。
建物の階ごとに用途が分かれているようなケースでは、床面積の割合に応じて按分する考え方が用いられることもあるとされ、実際の利用状況を細かく記録しておくことが望ましいといえます。
個人事業を法人化している場合の考え方
個人事業を法人化(法人成り)し、被相続人がその法人に事業用の土地を貸し付けているような場合には、特定事業用宅地等ではなく、特定同族会社事業用宅地等の要件を満たすかどうかで検討することになると考えられています。
法人化にあたっては、株式の保有割合や、法人の役員に被相続人や親族が就任しているかどうかなど、同族会社としての要件を満たしているかを確認する必要があります。これらの要件を満たさない場合には、特定同族会社事業用宅地等としての取扱いを受けられない可能性があります。
法人成りの前後で宅地等の利用形態自体は大きく変わらないことも多いものの、相続税法上の区分としては個人事業の場合と法人の場合とで異なる扱いになる点に注意が必要です。法人化を検討する際には、事業運営上のメリットだけでなく、将来の相続税の取扱いへの影響もあわせて確認しておくとよいでしょう。
法人の株主構成や役員構成は、時間の経過とともに変化することもあるため、定期的に同族会社としての要件を満たしているかを確認しておくことが望ましいと考えられます。
法人化を検討する段階から、税理士に相続税への影響も含めて相談しておくと、将来にわたって見通しを立てやすくなります。
法人成りの後も、被相続人個人が土地の所有者であり続けるケースは多く見られますが、その場合、法人からの地代の水準が実勢と大きくかけ離れていないかといった点も、後々の評価や課税関係に影響し得るため、あわせて確認しておくとよいでしょう。
限度面積・減額割合と他の区分と併用する場合の考え方
特定事業用宅地等に該当する場合、限度面積は400平方メートルとされ、その範囲内で評価額の80%を減額できるとされています。この限度面積と減額割合は、特定居住用宅地等と同じ水準とされていますが、貸付事業用宅地等については限度面積が200平方メートル、減額割合が50%とされ、他の区分よりも低い水準になっている点が異なります。
一つの相続で複数の区分に該当する宅地等がある場合には、それぞれの限度面積をそのまま合算できるとは限らず、区分の組み合わせによって調整計算が必要になるとされています。特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等・特定居住用宅地等の組み合わせについては、一定の要件のもとで完全併用(合計730平方メートルまで)が認められる場合があるとされる一方、貸付事業用宅地等を組み合わせる場合には、面積の調整計算を行う必要があるとされています。
このように、複数の区分の宅地等がある場合の限度面積の計算は複雑になりやすく、どの宅地等にどれだけの面積を割り当てて特例を適用するかによって、最終的な減額額が変わってくることがあります。有利な組み合わせを選択するためには、複数のパターンで試算を行うことが望ましいと考えられます。
限度面積を超える部分については、特例の適用を受けられず、通常の評価額のまま相続税の計算に含まれることになります。宅地等の面積が広い場合には、どの部分を特例の対象として選択するかについても検討の余地があるとされています。
減額割合が高い区分を優先して選択することが有利になる場合が多いとされていますが、宅地等の評価額や取得者の状況によっては、必ずしも単純に減額割合の高い区分を優先することが最適とは限らないこともあります。複数の宅地等がある場合には、全体を通じた比較検討が重要です。
限度面積や減額割合の計算は専門的な内容を含むため、複数の宅地等がある場合や、区分の異なる宅地等が混在している場合には、早い段階で専門家に相談し、有利な選択肢を確認しておくことが望ましいといえます。
また、限度面積の計算に用いる面積は、実際の登記面積ではなく、事業や居住の用に供されている部分の実測に基づく面積で判定される場合もあるとされています。宅地等の一部が未利用であったり、他の用途と混在していたりする場合には、面積の算定自体が論点になることもあるため、丁寧な現況確認が求められます。
400平方メートル・80%減額の内容
特定事業用宅地等については、400平方メートルまでの部分について評価額の80%を減額できるとされています。宅地等の面積が400平方メートルを超える場合、超過部分は特例の対象外となり、通常の評価額で計算されることになります。
この限度面積は、一つの宅地等が広大であっても、複数の宅地等を合算した場合であっても、同じ枠の中で判定されると考えられています。複数の事業用宅地等がある場合には、どの宅地等にどれだけの面積を割り当てるかを検討する必要があります。
評価額の高い宅地等から優先的に特例を適用したほうが、減額される金額が大きくなる傾向があるとされていますが、実際の判断にあたっては、他の区分の宅地等とのバランスも考慮する必要があります。
複数の宅地等の評価額を一覧にして比較しておくと、どの組み合わせが有利になるかを検討しやすくなります。
面積の割り当て方によって最終的な税額が変わるため、慎重なシミュレーションが望ましいといえます。
特に評価額の差が大きい宅地等が複数ある場合には、限度面積の配分を少し変えるだけでも、全体の減額幅が大きく変わることがあるため、複数パターンでの試算を行っておくことが望ましいと考えられます。
貸付事業用宅地等と併用する場合の面積調整
特定事業用宅地等と貸付事業用宅地等の両方に該当する宅地等がある場合には、限度面積をそのまま合算するのではなく、一定の算式に基づいて面積を調整する計算が必要になるとされています。単純にそれぞれの限度面積を足し合わせることはできない点に注意が必要です。
この調整計算は、特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等・特定居住用宅地等の合計面積と、貸付事業用宅地等の面積との間で、一定の按分割合を用いて限度面積を算出する仕組みになっているとされています。計算方法が複雑なため、専門家による確認が推奨される場面といえます。
調整計算の結果によっては、特定事業用宅地等を優先的に選択したほうが有利になる場合と、貸付事業用宅地等を優先したほうが有利になる場合とがあり得るため、複数のパターンで試算しておくことが望ましいと考えられます。
調整計算に必要な情報(各宅地等の面積・評価額など)を事前に整理しておくと、専門家への相談もスムーズに進みやすくなります。
面積調整の考え方は改正によって変更される可能性もあるため、申告の都度、最新の取扱いを確認することが望ましいといえます。
遺産分割が申告期限までにまとまらない場合の対応
小規模宅地等の特例は、相続税の申告期限までに遺産分割が確定していることが原則的な要件の一つとされています。特定事業用宅地等についても同様で、申告期限までに宅地等の取得者が確定していない場合には、原則として特例の適用を受けられないとされています。
ただし、申告期限までに遺産分割が調わない場合であっても、「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税の申告書に添付して提出しておくことで、その後遺産分割が確定した時点で、更正の請求により特例の適用を受けられる余地が残されているとされています。分割がまとまっていないからといって、特例の適用を最初から諦める必要はないと考えられます。
もっとも、いったん未分割の状態で申告する場合には、特例を適用しない前提での相続税額をいったん納付する必要があるとされ、資金繰りの面で負担が生じることもあります。事業用の宅地等を保有している家庭では、この点も踏まえて、できる限り早期に遺産分割の方針を固めておくことが望ましいといえます。
さらに、申告期限から3年を経過してもなお遺産分割がまとまらない特別な事情がある場合には、一定の手続きを経ることで、その後の分割確定時に特例の適用を受けられる余地が認められる場合もあるとされています。長期化が見込まれる場合には、早めに専門家に相談し、必要な手続きを確認しておくことが重要です。
事業用の宅地等については、誰が事業を引き継ぐかという点が遺産分割の核心的な論点になりやすく、他の財産以上に話し合いが難航することもあります。生前のうちから後継者の意向を確認し、大まかな方針を共有しておくことが、申告期限内の分割確定につながりやすいと考えられます。
遺産分割が難航しそうな見通しがある場合には、早い段階で分割見込書の提出を前提とした申告方針を検討しておくなど、複数の対応策をあらかじめ想定しておくことが望ましいといえます。
未分割の状態が続くと、特例が適用されない前提での納税資金をいったん確保する必要が生じるため、金融機関からの借入れや、延納・物納といった他の制度との関係もあわせて検討しておくことが望ましい場合があります。資金面の見通しを立てておくことも、円滑な申告手続きにつながる要素の一つといえます。
未分割の場合は原則として特例を適用できない
相続税の申告期限までに宅地等の取得者が確定していない場合、原則として特定事業用宅地等の特例の適用を受けることができないとされています。特例の適用を受けるには、誰がその宅地等を取得し、事業を引き継ぐのかが確定している必要があるためです。
未分割のまま申告する場合には、特例を適用しない前提でいったん相続税額を計算し、納付する必要があるとされ、本来よりも重い税負担を一時的に抱えることになる可能性があります。資金の準備についても、この点を踏まえて検討しておく必要があります。
事業用資産が絡む遺産分割は、後継者の選定や事業継続の方針をめぐって意見が分かれやすい傾向があるとされ、早期の話し合いが特に重要になる分野といえます。
未分割のまま申告することが見込まれる場合には、納税資金の確保についても早めに検討しておくことが望ましいといえます。
資金繰りに不安がある場合には、早い段階で専門家に相談し、対応策を検討しておくとよいでしょう。
後継者候補の間で意見が対立している場合には、第三者である専門家に間に入ってもらい、話し合いを整理してもらうことも一つの方法と考えられます。
申告期限後3年以内の分割見込書の活用
申告期限までに遺産分割がまとまらない場合には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税の申告書とあわせて提出しておくことで、その後遺産分割が確定した際に、更正の請求によって特例の適用を受けられる余地が残されるとされています。
この書類を提出せずに未分割のまま申告してしまうと、後になって遺産分割が確定しても特例の適用を受けられなくなる可能性があるとされているため、未分割での申告が見込まれる場合には、忘れずに提出しておくことが重要です。
分割見込書を提出した後、実際に3年以内に遺産分割が確定した場合には、確定した日の翌日から4か月以内に更正の請求を行うことで、特例を適用した内容に基づく還付を受けられる場合があるとされています。
申告期限後3年を経過しても分割が確定しない場合には、別途「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出するなど、追加の手続きが必要になることがあるとされています。長期化が見込まれる場合には早めの確認が欠かせません。
分割見込書の提出や更正の請求の手続きは期限管理が重要になるため、スケジュールを一覧化しておくと、対応漏れを防ぎやすくなります。
訴訟や調停が長期化しているようなケースでは、手続きの見通し自体が立てにくいこともあり、その都度専門家に状況を共有しながら、必要な書類の提出時期を見極めていくことが望ましいと考えられます。
事業を廃止・転用した場合や賃貸に転用した場合の注意点
特定事業用宅地等の特例は、申告期限までその宅地等を保有し、事業を継続していることが要件とされているため、相続開始後に事情が変わり、事業を廃止したり、宅地等を賃貸用に転用したりした場合には、特例の適用を受けられなくなる可能性があるとされています。相続後の状況変化が特例の適否に直結する点は、見落とされやすい注意点といえます。
たとえば、後継者が見つからず、申告期限を待たずに事業を廃業してしまった場合や、事業用の建物を取り壊して更地のまま保有している場合には、申告期限時点で事業の用に供されているとはいえず、特例の要件を満たさなくなるおそれがあります。事業継続の見通しが立たない場合には、早めに専門家へ相談し、対応を検討しておくことが望ましいといえます。
また、事業用の宅地等の一部を、申告期限までの間に賃貸用の駐車場や賃貸物件の敷地に転用した場合には、その転用した部分については特定事業用宅地等ではなく、貸付事業用宅地等としての要件を満たすかどうかで別途判断されることになると考えられます。宅地等の一部だけを転用した場合には、面積按分による整理が必要になる点にも留意が必要です。
被相続人の死亡後、相続人がやむを得ない事情によって事業を継続できなくなるケースも現実には起こり得ます。こうした事情がある場合に特例の適用がどう扱われるかは、個々の状況によって判断が分かれ得るため、廃業や転用を検討する段階で、あらかじめ専門家に相談しておくことが望ましいと考えられます。
事業の継続が難しいと判断した場合であっても、申告期限までの対応の仕方によって、特例の適用可否や税額に差が生じることがあります。廃業や宅地等の処分を急いで決めてしまう前に、相続税への影響も含めて確認しておくことが大切です。
宅地等の利用状況に変化が生じた場合には、変化の時期や理由を記録に残しておくと、後日の説明や申告の際に役立つと考えられます。
相続開始後に相続人が体調を崩したり、想定していなかった事情が生じたりして事業継続が難しくなることも現実にはあり得ます。こうした不測の事態に備え、後継者候補が複数いる場合には、あらかじめ優先順位や代替案を話し合っておくことも、結果的に特例の適用要件を満たしやすくする一助になると考えられます。
申告期限までに事業を廃止した場合の考え方
相続後、申告期限を待たずに事業を廃止してしまった場合、原則として特定事業用宅地等としての要件である「申告期限まで事業を営んでいること」を満たさなくなり、特例の適用を受けられなくなる可能性が高いとされています。
後継者が決まらない、体調上の事情がある、経営状況が厳しいなど、廃業に至る事情はさまざまですが、いずれの場合であっても、廃業のタイミング次第で相続税額に大きな影響が生じ得る点は共通しています。
やむを得ず廃業を検討する場合には、廃業の時期を申告期限後にずらせないか、あるいは一時的にでも事業を継続できないかなど、複数の選択肢を専門家とともに検討しておくことが望ましいと考えられます。
廃業を決断する前に、相続税への影響を含めた試算を行っておくと、判断材料が増え、後悔の少ない選択につながりやすいといえます。
廃業の経緯や時期を記録しておくことは、申告内容の説明資料としても役立つ場合があります。
取引先への説明や在庫・設備の処分など、廃業に伴う実務対応にも一定の時間がかかることが多いため、相続開始後、できるだけ早い段階で見通しを立てておくことが望ましいと考えられます。
宅地等の一部を賃貸用に転用した場合の按分
事業用の宅地等の一部を、相続後に賃貸用の駐車場や貸店舗などに転用した場合には、転用した部分については貸付事業用宅地等としての要件を満たすかどうかで別途判断されることになるとされています。宅地等全体を一律に特定事業用宅地等として扱えるわけではない点に注意が必要です。
面積按分を行う際には、事業を継続している部分と転用した部分の面積を正確に測定し、それぞれの区分に応じた限度面積・減額割合を適用することになります。測量図や利用状況図を整理しておくと、按分の根拠を示しやすくなります。
転用の時期によっては、貸付事業用宅地等としての要件(相続開始前からの貸付けの継続など)を満たさない場合もあり、単純に区分を切り替えれば特例を受けられるとは限らない点にも留意が必要です。
宅地等の利用形態を変更する予定がある場合には、変更前に相続税への影響を専門家に確認しておくことが望ましいと考えられます。
利用形態の変更履歴を図面や写真で記録しておくと、後日の説明がしやすくなります。
相続税申告における実務上の注意点
特定事業用宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、小規模宅地等の特例に関する明細書のほか、事業を引き継いだことや宅地等を保有していることを示す各種の書類を添付する必要があるとされています。具体的には、遺産分割協議書の写しや、事業に関する届出書の写し、宅地等の登記事項証明書などが典型的な添付書類として挙げられます。
税務署による確認の場面では、宅地等が実際に事業の用に供され続けているかどうかが重視される傾向があるとされ、事業の実態を裏付ける資料(帳簿、請求書、契約書など)を整理しておくことが望ましいと考えられます。形式的な届出だけでなく、実態としての事業継続が確認できるようにしておくことが重要です。
また、相続開始前の事業開始時期や、宅地等の利用状況の変遷についても、税務調査の際に確認されることがあるとされています。3年以内新規事業用宅地等に該当しないかどうかを判断するための資料として、事業を開始した時期を示す書類をあらかじめ整理しておくとよいでしょう。
特定事業用宅地等の判定は、事業の実態、生計同一性、申告期限までの継続要件など、複数の要素が絡み合う分野であり、一般的な知識だけで正確に判断することが難しい場合も少なくありません。個人で事業を営んでいた家庭では、相続が発生する前の段階から、事業承継の方針とあわせて相続税の試算を専門家に依頼しておくことが望ましいと考えられます。
加えて、事業用宅地等の評価額そのものについても、路線価や倍率方式による評価に加え、貸宅地や借地権が絡む場合には評価がさらに複雑になることがあります。特例の適用可否とあわせて、宅地等自体の評価方法についても専門家の確認を受けておくことが望ましいでしょう。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内とされています。事業用宅地等が絡む相続では、遺産分割や必要書類の準備に時間がかかりやすい傾向があるため、できるだけ早い段階から準備を進めておくことが望ましいと考えられます。
最終的には、事業の存続を優先するのか、相続人間の公平を優先するのかなど、家族としての価値観も踏まえたうえで、税負担の試算と事業承継の方針をあわせて検討していくことが大切です。
個人で事業を営む家庭にとって、特定事業用宅地等の特例は税負担の軽減という側面だけでなく、事業を次の世代にどのように引き継ぐかという経営上の課題とも密接に関わっています。相続税の観点からの検討と、事業承継全体の計画とを切り離さずに進めていくことが、望ましい結果につながりやすいと考えられます。
申告書に添付する主な書類
特定事業用宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に小規模宅地等の特例に関する明細書を添付するほか、遺産分割協議書の写しや印鑑証明書、宅地等の登記事項証明書、事業を営んでいることを示す資料などをあわせて提出することが必要とされています。
未分割で分割見込書を提出する場合には、通常の添付書類に加えて、その旨を示す書類も必要になるとされています。どの書類が必要になるかは個々の状況によって異なるため、早めに専門家に確認しておくことが望ましいといえます。
書類の準備には時間がかかることも多いため、相続開始後できるだけ早い段階から、必要書類の一覧を作成し、順次収集を進めておくとよいでしょう。
登記事項証明書など有効期限が定められている書類もあるため、取得のタイミングにも注意が必要です。
必要書類の収集状況を一覧で管理しておくと、申告期限までの進捗を把握しやすくなります。
遠方の役所や法務局から書類を取り寄せる必要がある場合には、郵送での請求方法も含めて早めに手配しておくと、期限直前の慌ただしさを減らせると考えられます。
税務調査で確認されやすいポイント
特定事業用宅地等の特例を適用した申告については、税務調査の際に、実際に事業が継続されているか、生計同一性の要件を満たしているか、3年以内新規事業用宅地等に該当しないかといった点が確認されることがあるとされています。
特に、相続開始前後で事業の規模や内容に大きな変化があった場合には、実態として事業が継続されているといえるかどうかが問題になりやすいと考えられます。事業の継続状況を示す資料をあらかじめ整理しておくことが望ましいでしょう。
生計同一性についても、同居の有無だけでなく、生活費の負担状況などが確認されることがあるとされ、必要に応じて説明できるよう資料を準備しておくことが望ましいと考えられます。
税務調査で指摘を受けた場合に備え、事業の実態を示す資料は日頃から整理し、すぐに提示できる状態にしておくと安心です。
不明な点がある場合には、申告前の段階で専門家に相談し、疑問点を解消しておくことが望ましいといえます。
調査の際には、事業を実際に運営していることを示す写真や、取引の記録が残るやり取りなど、日常的な業務の中で自然に生まれる資料が役立つこともあるとされています。特別な資料を新たに作成するというよりも、日頃からの記録を大切にしておく姿勢が重要といえるでしょう。