[池袋] 特別寄与料とは?相続人以外の親族の貢献に報いる制度#相続税#税理士#池袋
長年にわたり介護や看護に尽力しても、相続人でなければ遺産を受け取れないという状況が長らく課題とされてきました。こうした不公平感を和らげるために設けられたのが特別寄与料の制度です。この記事では、特別寄与料を請求できる人の範囲や要件、金額の決め方、請求できる期限、そして相続税との関係について、実務上の注意点を交えながら整理していきます。特別寄与者としての立場になり得るのか、また相続人としてどのような対応が求められるのか、双方の視点から確認しておくことが、相続手続き全体を円滑に進めるうえで役立つと考えられます。
目次
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特別寄与料制度が設けられた背景
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寄与分との違い
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対象となる「親族」の範囲
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特別寄与料を請求できる人の要件
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請求権者から除外される人
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労務の提供以外の貢献との違い
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特別寄与料の対象となる貢献の具体例
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介護・看護の労務提供の具体例
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事業の手伝いに関する留意点
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特別寄与料の金額はどのように決まるか
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当事者間の協議による決定
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協議が調わない場合の家庭裁判所への申立て
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特別寄与料を請求できる期限
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相続人を知った時から6か月
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相続開始の時から1年
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特別寄与料と相続税の関係
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相続税の課税対象になること
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二割加算の対象になる可能性
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特別寄与料を支払う相続人側の税務上の取り扱い
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相続税の計算上の取り扱い
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申告期限との関係で注意したい点
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特別寄与料をめぐる実務上の注意点
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生前にできる対策との比較
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専門家へ相談するタイミング
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特別寄与料制度が設けられた背景
特別寄与料の制度は、2019年7月に施行された相続法(民法)の改正によって新たに設けられたものとされています。それまでの民法では、被相続人の療養看護などに尽力した親族であっても、その人が相続人でなければ、遺産分割において貢献を評価してもらう法的な手段が用意されていませんでした。
典型例としてしばしば挙げられるのが、被相続人の長男の配偶者、つまり「息子の妻」が同居して長年介護を担っていたようなケースです。息子の妻は被相続人からみて相続人にはあたらないため、従来の制度では、どれほど献身的に介護を続けていたとしても、遺産分割の場で直接その貢献を主張することは難しいと考えられていました。
一方で、相続人自身の貢献については、従来から寄与分という制度が存在し、遺産分割協議の中で考慮される仕組みが整えられていました。特別寄与料は、この寄与分の考え方を相続人以外の親族にも一定の範囲で広げるものと位置づけられているようです。相続人間の実質的な公平だけでなく、相続人以外の親族が果たした貢献にも目を向けようとする趣旨が背景にあるとされています。
改正前には、こうした不公平感を和らげるために、相続人である配偶者の寄与分を柔軟に評価することで、間接的に息子の妻の貢献を反映させようとする実務上の工夫がとられることもあったといわれています。しかし、そもそも相続人自身に寄与がなければこの方法は使えず、限界があるとの指摘が以前からされていたようです。特別寄与料は、こうした従来の枠組みでは救済しきれなかった場面に対応するために設けられた、比較的新しい制度であるといえそうです。
なお、特別寄与料は遺産分割協議そのものの一部として処理されるものではなく、相続人に対する独立した金銭請求権として位置づけられている点も特徴とされています。遺産分割協議が難航している場合であっても、特別寄与料の請求自体は別の手続きとして進められる余地があると考えられますが、実務上は遺産分割の話し合いと並行して整理されることも多いようです。
特別寄与料の制度が導入されたことで、遺産分割協議の当事者以外の視点からも相続手続き全体を見直す動きが広がっているとの指摘もあるようです。相続に関わる可能性のある親族の範囲が実質的に広がったことにより、被相続人の生前から、誰がどのような形で日常的に関わっているのかを家族内であらかじめ共有しておくことの重要性が増していると考えられます。
また、特別寄与料の請求権は特別寄与者本人に与えられた権利であり、一身専属的な性質を持つと整理されることが多いようです。特別寄与者が請求を行う前に亡くなってしまった場合に、その相続人がこの権利を引き継げるかどうかについては見解が分かれる部分もあるとされ、実務上は個別の事情に応じた慎重な検討が必要になると考えられます。
相続人と特別寄与者との関係が普段から良好であれば、こうした制度をあえて使わずとも、話し合いの中で自然に配慮がなされることもあるかもしれません。もっとも、関係者が多い相続や、疎遠になっている親族が関わる相続では、こうした自然な配慮だけに頼るのが難しい場合もあるため、制度の存在自体を知っておくことには意味があると考えられます。
今後、特別寄与料の請求事例が積み重なっていくことで、金額の相場観や運用の実務がより明確になっていくことも考えられます。現時点では前例が限られている分野であることを踏まえ、個別の事情に応じた丁寧な検討が求められそうです。
寄与分との違い
寄与分は相続人自身が対象となる制度で、遺産分割協議の当事者として自らの取り分に反映させることができる仕組みとされています。これに対して特別寄与料は、相続人ではない親族が、相続人に対して金銭の支払いを請求するという形をとる点が異なると考えられます。特別寄与料はあくまで金銭の請求権であり、遺産そのものの取得や遺産分割協議への参加を意味するものではない点には注意が必要とされています。
また、請求の相手方にも違いがあるとされています。寄与分は遺産分割協議の中で他の共同相続人全員との関係で調整されるのに対し、特別寄与料は各相続人に対して個別に金銭を請求する形になるとされ、相続人が複数いる場合には、それぞれとの間で金額や支払いの合意を取り付けていく必要があると考えられます。
また、特別寄与料の負担者は相続人に限られており、受遺者(遺言によって財産を取得した相続人以外の人)は負担者に含まれないと整理されています。誰が負担するのかという点も、寄与分とは異なる特別寄与料特有の論点として押さえておくとよさそうです。
寄与分と特別寄与料のどちらの枠組みで検討すべきか迷うケースもあるため、自身が相続人にあたるかどうかをまず確認したうえで、適切な制度を選ぶことが出発点になると考えられます。
寄与分の請求は遺産分割協議の枠内で完結するのに対し、特別寄与料は協議が成立した後や、遺産分割とは別のタイミングでも請求を検討できる余地があるとされ、手続きの進め方にも違いが生じ得ると考えられます。
対象となる「親族」の範囲
特別寄与料を請求できるのは、被相続人の親族のうち相続人でない人とされています。民法上の親族とは、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族を指すとされ、先に挙げた息子の妻(被相続人の子の配偶者)のほか、甥や姪、いとこなども理論上は対象になり得ると考えられます。ただし友人・知人や内縁関係にある人など、親族に該当しない人は対象外とされている点は押さえておきたいところです。
姻族まで対象に含められた背景には、実際に被相続人の介護や看護を担うことが多い立場として、子の配偶者のような姻族が想定されていたことがあるといわれています。もっとも、親族に該当していても、実際に貢献の要件を満たしていなければ請求は認められないため、範囲に含まれることと請求が認められることとは別の問題として整理しておく必要がありそうです。
被相続人からみて複数の親族が同時に介護等に関わっていたようなケースでは、それぞれの貢献の程度に応じて、特別寄与料の請求額や、認められる金額に違いが生じることも考えられます。関係する親族が複数いる場合には、それぞれの役割分担を振り返っておくことも有用と考えられます。
親族の範囲に該当するかどうかは戸籍などで客観的に確認できることが多いため、請求を検討する段階で、自身の続柄をあらためて確認しておくと手続きがスムーズに進みやすいと考えられます。
特別寄与料を請求できる人の要件
特別寄与料を請求するためには、単に被相続人の親族であるというだけでは足りず、いくつかの要件を満たす必要があるとされています。民法の条文では「無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」ことが求められています。
まず「無償」であることが前提とされており、対価を得て介護や看護を行っていた場合には、原則として特別寄与料の対象にはならないと考えられています。有償の介護サービスやヘルパーとしての就労とは区別される制度だと理解しておくとよいかもしれません。
また「特別の寄与」といえる程度も問われるとされ、一般的な家族間の助け合いの範囲を超えるような、継続的かつ相応の負担を伴う貢献であることが想定されているようです。単発的な手伝いや、家族として通常期待される範囲内の関わりでは、特別の寄与とまでは評価されにくいと考えられます。
実務上、こうした要件を満たすかどうかは、貢献の期間や頻度、被相続人の心身の状態、他に介護等を担う人がいたかどうかといった事情を総合的にみて判断されることになると考えられています。単発的または短期間にとどまる手伝いでは特別の寄与とまでは評価されにくいと考えられ、ある程度まとまった期間にわたり継続的に負担を負っていたことを示せるかどうかが、実務上のポイントの一つになりそうです。
要件を満たしているかどうかを自分だけで判断するのは難しい面もあるため、心当たりがある場合には、早い段階で専門家に相談し、これまでの貢献の内容を整理しておくことが望ましいと考えられます。
要件を検討する際には、貢献の内容が「療養看護その他の労務の提供」に該当するかどうかだけでなく、それによって被相続人の財産の維持又は増加という結果につながっているかどうかもあわせて問われるとされています。介護によって施設入所や外部サービスの利用費用が抑えられたといった事情は、財産の維持に資する要素として考慮されることがあるようです。
反対に、精神的な支えとなっていた、頻繁に顔を見せて安心感を与えていたといった、財産面には直結しにくい貢献については、特別寄与料の対象としては評価されにくい面があるとされています。あくまで財産の維持又は増加という観点からの評価が中心になる制度であることは、理解しておいたほうがよさそうです。
要件の該当性に迷うケースでは、まず貢献の内容を時系列で書き出し、いつからいつまで、どの程度の頻度で何を行っていたのかを整理してみることが、検討の第一歩になると考えられます。こうした整理を行う中で、特別の寄与といえる要素が具体的に見えてくることもあるようです。
要件の判断にあたっては、貢献を始めた経緯や動機についても、参考情報として考慮されることがあるといわれています。純粋な家族としての情愛から始めた行為であっても、結果として特別の寄与といえる程度に達しているかどうかが問われることになりそうです。
請求権者から除外される人
相続人はそもそも寄与分の制度で保護されうる立場にあるため、特別寄与料の請求権者からは除外されているとされています。また、相続放棄をした人、相続欠格に該当する人、廃除された人についても、特別寄与料を請求することはできないと整理されています。これらの人は相続人としての地位を失っている、あるいは初めから相続人になれない立場にあるためと考えられます。
この除外の趣旨は、相続人としての権利を失った人が、特別寄与料という別の枠組みを使って実質的に同じ利益を得ることを防ぐ点にあるといわれています。相続放棄を検討している場合には、特別寄与料の請求権にも影響が及ぶ可能性がある点をあわせて理解しておく必要がありそうです。
なお、相続放棄をした人であっても、相続放棄前に行った貢献自体がなかったことになるわけではありませんが、相続放棄をした時点で特別寄与料の請求権者からも外れることになるとされています。相続放棄を検討する際には、この点もあわせて考慮しておく必要がありそうです。
相続放棄をするかどうかを判断する際には、特別寄与料の請求権を失う可能性も含めて、総合的に損得を検討しておくことが望ましいと考えられます。
労務の提供以外の貢献との違い
特別寄与料の対象となるのは「労務の提供」による貢献に限られているとされ、被相続人に対して金銭や不動産などの財産を提供したことによる貢献は、原則として対象に含まれないと考えられています。財産の提供によって被相続人の財産の維持・増加に寄与した場合には、別途、贈与や消費貸借といった観点からの整理が必要になることもあるとされ、労務提供のケースとは切り分けて考える必要がありそうです。
たとえば、被相続人の自宅の改修費用を立て替えていたようなケースでは、特別寄与料としてではなく、不当利得や費用償還請求といった別の法律構成での回収を検討することになる場合もあるといわれています。どの枠組みで整理すべきかは事案ごとに異なるため、専門家に個別に相談したほうがよい領域だと考えられます。
相続欠格や廃除に該当するかどうかは、特別寄与料の請求場面に限らず相続全体に関わる重要な論点であるため、該当する可能性がある事情に心当たりがある場合には、早めに専門家へ相談し、全体像を整理しておくことが望ましいと考えられます。
財産の提供によるケースかどうか判断に迷う場合は、提供した金銭や物品の内容を一覧にまとめたうえで専門家に相談すると、整理がしやすくなると考えられます。
財産の提供と労務の提供が明確に区別しにくい事情がある場合には、双方の側面を時系列で整理した一覧表を作成しておくと、専門家への相談時に状況を伝えやすくなると考えられます。
特別寄与料の対象となる貢献の具体例
特別寄与料の対象として想定されている典型例は、被相続人の療養看護、つまり介護や看病にあたる労務の提供とされています。具体的には、在宅で長期間にわたり食事や排せつの介助を行っていた、通院の付き添いを継続的に担っていた、といったケースが挙げられることが多いようです。
また、療養看護に限らず、被相続人が営んでいた事業を無償で手伝い、その結果として事業用財産の維持や増加に貢献したと評価できるようなケースも、対象に含まれ得ると考えられています。この場合も、あくまで労務の提供という形をとっていることが前提とされている点は共通しています。
一方で、実際にどの程度の貢献であれば特別の寄与と認められるのかについては、明確な基準が法律上定められているわけではなく、個別の事情に応じて判断されることになると考えられます。介護の期間や頻度、被相続人の要介護度、他に介護を担う人がいたかどうかといった事情が総合的に考慮されるとみられています。
介護保険サービスなどの外部サービスを利用していた場合には、それらのサービスでは補いきれない部分をどの程度家族が担っていたかという観点も考慮されることがあるようです。訪問介護やデイサービスと役割分担をしながら、夜間の見守りや通院の付き添いなど、外部サービスではカバーしきれない部分を継続的に担っていたようなケースは、貢献の実態を示しやすい例として挙げられることがあります。
貢献の実態を裏付ける記録が乏しい場合には、当時の状況を知る医療関係者やケアマネジャーなど、第三者からの証言が補完的な役割を果たすこともあるといわれています。可能であれば、介護に関わっていた期間中に、状況を客観的に把握している人がいたかどうかも振り返っておくと、後日の説明がしやすくなると考えられます。
また、貢献の内容が複数にまたがるケース、たとえば療養看護と事業の手伝いの両方を担っていたようなケースでは、それぞれの側面について別々に整理し、どの部分がどの程度財産の維持・増加に結びついたのかを説明できるようにしておくことが望ましいと考えられます。
なお、こうした具体例はあくまで一般的に想定されているものであり、実際に特別の寄与と認められるかどうかは、最終的には個別の事情を踏まえた総合判断によるとされています。似たような状況であっても、家庭裁判所の判断によって結論が異なることもあり得る点は理解しておいたほうがよさそうです。
具体例を検討する際には、被相続人本人の意思や希望がどのようなものであったかも、間接的な手がかりになることがあると考えられます。生前に感謝の言葉を伝えていたり、日記やメモにその旨を残していたりする場合には、貢献の実態を裏付ける材料になり得るとされています。
介護・看護の労務提供の具体例
介護保険サービスを利用しながらも、家族としてその補完的な役割を継続的に担っていたようなケースが典型例として挙げられます。具体的な貢献の内容や期間を裏付けるためには、介護日誌や通院時の記録、服薬管理の記録などを残しておくことが、後日の請求の場面で役立つ可能性があるとされています。
あわせて、通院に付き添った際の領収書や、介護のために仕事を休んだ記録、医療機関や介護施設の担当者とのやり取りの記録なども、貢献の実態を裏付ける材料として役立つ場合があるといわれています。日々の生活の中でこうした記録を意識的に残しておくことが、後になって特別寄与料を検討する際の助けになると考えられます。
介護の負担が特定の親族に偏っていたことを示すためには、他の親族がどの程度関わっていたか、あるいはほとんど関わっていなかったかについても、あわせて振り返っておくと、貢献の相対的な大きさを説明しやすくなると考えられます。
記録を残す際には、日付・内容・所要時間などの項目を簡潔に決めておくと、継続しやすく、後から見返す際にも把握しやすくなると考えられます。
事業の手伝いに関する留意点
家業を無償で手伝っていたケースでは、労務の提供という性質を保っているかどうかが一つの論点になると考えられます。給与に相当する対価を受け取っていた期間がある場合には、その部分については特別の寄与として評価されにくくなる可能性があるため、対価の有無や金額についても振り返っておく必要がありそうです。
特に、家族従業員として給与所得の扱いを受けていた期間と、無償で手伝っていた期間とが混在しているようなケースでは、どの期間のどの部分が無償の労務提供にあたるのかを整理しておくことが望ましいと考えられます。給与明細や確定申告の記録などをあわせて確認しておくと、実態を説明しやすくなる場合があるようです。
労務の提供と財産の提供が組み合わさっているようなケース、たとえば同居しながら生活費の一部を負担しつつ介護も担っていたような場合には、それぞれの要素を分けて整理し、特別寄与料として請求できる部分とそれ以外の部分とを区別しておく必要があると考えられます。
家業の手伝いについては、業務日誌や取引先とのやり取りの記録なども、貢献の実態を示す補助的な資料になり得ると考えられます。
事業承継が絡むケースでは、特別寄与料の論点と、自社株の評価や納税猶予といった事業承継特有の税務上の論点とが同時に問題になることもあるため、あわせて専門家に相談しておくことが望ましいと考えられます。
特別寄与料の金額はどのように決まるか
特別寄与料の具体的な金額について、法律上一律の算定式が定められているわけではないとされています。まずは特別寄与者と相続人との間の協議によって金額を決めることが想定されており、当事者同士の話し合いで合意ができれば、その金額で確定することになると考えられます。
協議にあたっては、実務上、被相続人の状態や介護に要した労力などを踏まえて金額を試算する方法が用いられることが多いようですが、最終的な金額は当事者間の合意や、後述する家庭裁判所の判断によって決まるものとされています。
相続人が複数いる場合には、それぞれの相続分に応じて特別寄与料を分担して負担することになるとされています。特別寄与者は、各相続人に対して個別に請求を行う形になると考えられ、相続人の一人だけに全額を請求できるわけではない点にも注意が必要です。
なお、特別寄与料の請求について、家庭裁判所の調停を経ることが法律上の要件とされているわけではなく、当事者間の協議が調わない場合には、直接、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を求める審判の申立てを行うことができるとされています。もっとも、実務上は遺産分割協議や調停の中で、あわせて話し合いが進められることも多いようです。
金額の目安を検討する際には、家事従事者の平均的な賃金水準や介護報酬基準額などを参考にしつつ、実際に費やした日数や時間を掛け合わせて試算する方法がしばしば用いられるとされています。ただし、こうした試算はあくまで出発点であり、被相続人との関係性や介護の負担の重さなど、数値化しにくい事情も含めて総合的に金額が調整されることが多いようです。
相続財産の全体額との関係にも留意が必要とされています。相続財産の額に比して著しく高額な特別寄与料を求めた場合には、家庭裁判所の審理において減額されることも考えられるため、請求する側としても、相続財産の規模とのバランスを意識した金額設定を検討しておくことが望ましいと考えられます。
金額の交渉が難航しそうな場合には、早い段階から専門家に間に入ってもらい、客観的な資料に基づいた試算を提示することで、話し合いがまとまりやすくなることもあるといわれています。感情的な対立を避けるためにも、第三者を交えた冷静なやり取りを心がけることが望ましいと考えられます。
金額を検討するにあたっては、地域における介護サービスの費用水準や、同種の家事労働に対する一般的な対価の考え方も参考にされることがあるようですが、地域差や時期による相場の変動もあり得るため、目安として参照する数値は最新の情報を確認しておくことが望ましいと考えられます。こうした水準はあくまで話し合いの出発点であり、最終的な金額を機械的に導き出す計算式ではない点にも留意が必要です。
当事者間の協議による決定
特別寄与者と相続人との協議がまとまれば、家庭裁判所を介さずに特別寄与料の金額を確定させることができるとされています。相続人が複数いる場合には、全員との間で金額や支払方法について合意を取り付けておくことが、後々のトラブルを避けるうえで望ましいと考えられます。
口頭での合意だけにとどめてしまうと、後になって金額や支払時期をめぐって認識の食い違いが生じるおそれもあるとされています。合意した内容は、金額や支払期限、振込先などを明記した書面として残しておくことが、双方にとって安心につながると考えられます。
特別寄与者が複数存在するようなケースでは、それぞれの請求内容や金額が互いに影響し合う可能性もあるため、関係者全員の状況を踏まえたうえで合意形成を進めることが望ましいと考えられます。
合意書を作成する際には、公正証書の形にしておくことで、後日の支払いをより確実なものにできる場合があるとされています。
協議が調わない場合の家庭裁判所への申立て
当事者間の協議が調わない場合や、そもそも協議に応じてもらえない場合には、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を求める申立てを行うことができるとされています。家庭裁判所は、寄与の時期や方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して金額を定めるとされ、最終的な判断には一定の時間がかかることも想定しておく必要がありそうです。
審理においては、貢献を裏付ける資料の有無が結論に影響を与える可能性があるといわれています。申立てから審判が確定するまでには数か月から1年程度を要することもあるとされ、相続税の申告期限との兼ね合いも含めて、余裕をもったスケジュールで対応を検討しておくことが望ましいと考えられます。
審判の申立てにあたっては、対象となる相続人全員を手続きの相手方とする必要があるとされ、誰を相手方とすべきかを事前に整理しておくことも実務上のポイントになると考えられます。
家庭裁判所への申立てを検討する場合には、あわせて弁護士費用など手続きにかかる負担についても事前に確認しておくと安心です。
審理の見通しが立てにくい場合には、暫定的なスケジュールを専門家とともに描いたうえで、必要に応じて相続税の申告手続き側の対応も並行して検討しておくことが望ましいと考えられます。
特別寄与料を請求できる期限
特別寄与料の請求には、期間の制限が設けられているとされています。具体的には、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内に請求する必要があり、これに加えて、相続開始の時から1年を経過したときは請求ができなくなるとされています。
この6か月と1年という二つの期間は、いずれか早い方が経過した時点で請求ができなくなる関係にあると理解されています。相続開始そのものを知らなかった場合でも、相続開始から1年が経過すれば請求権は失われることになるため、期限の管理には注意が必要とされています。
この期間は、遺産分割協議自体の期限とは別のものである点にも留意が必要です。遺産分割協議が長引いている間に、知らないうちに特別寄与料の請求期限だけが先に到来してしまうという事態も起こり得るため、貢献に心当たりがある場合には早めに専門家に相談することが望ましいと考えられます。
なお、遺留分侵害額請求についても、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年、相続開始の時から10年という期間制限が設けられているとされていますが、特別寄与料の期限はこれよりも短く設定されている点が特徴といえそうです。短期間で判断や行動を求められる制度であることを踏まえ、貢献の実態を整理する作業は、できるだけ早い段階から進めておくことが望ましいと考えられます。
期限の管理という観点では、特別寄与料の請求を検討し始めた時点で、まず相続開始日と、自身がいつ相続人を知ったといえるのかを書面などで整理しておくことが役立つとされています。曖昧な記憶に頼るのではなく、亡くなった日や、相続人と最初に連絡を取った日などを具体的に記録しておくと、後々の期限管理がしやすくなると考えられます。
加えて、相続人との関係が良好でない場合には、話し合いに時間がかかることも想定されます。期限が迫っている場合には、話し合いの結果を待たずに、念のため家庭裁判所への申立てを先行させておくという判断も、実務上はあり得る選択肢とされています。
期限が迫っていることに気づいた時点で、すでに証拠となる資料の収集が十分に進んでいないというケースも起こり得ます。時間的な制約がある中でも、優先順位をつけて必要な資料から集めていくといった、現実的な進め方を専門家と相談しながら検討することが望ましいと考えられます。
期限にまつわるトラブルを避けるためには、被相続人が亡くなった直後の段階で、相続手続き全体のスケジュールを一度整理しておくことが有効と考えられます。特別寄与料の期限を、遺産分割や相続税申告の期限とあわせて一覧化しておくと管理がしやすくなりそうです。
相続人を知った時から6か月
特別寄与者が、被相続人が亡くなった事実と、誰が相続人にあたるのかを知った時点から6か月という期間が起算点になるとされています。同居していた家族であれば、通常は相続開始とほぼ同時にこれらの事実を知ることになると考えられるため、実質的にはあまり長い猶予がないものと捉えておいたほうがよさそうです。
疎遠になっていた親族の相続で、相続人が誰であるかをすぐには把握できないような事情がある場合には、起算点の判断が問題になることも考えられます。こうしたケースでは、いつの時点で相続人を知ったといえるのかについても、専門家に確認しておくと安心につながりそうです。
この6か月の期間についても、次に述べる相続開始から1年の期間とあわせて除斥期間と整理されることが多いとされ、時効のような完成猶予・更新の仕組みは認められにくい性質を持つと理解されています。起算点の判断に迷いが生じた場合には、早めに専門家へ確認しておくことが望ましいと考えられます。
期限に関する認識のずれを防ぐため、相続開始日や相続人を知った日を書面やメールなどの形で記録しておくことも有効と考えられます。
相続開始の時から1年
相続人を知った時期にかかわらず、相続開始の時から1年が経過すれば、特別寄与料の請求はできなくなるとされています。これは除斥期間と整理されることが多く、時効のように中断や更新が認められにくい性質を持つとされているため、心当たりがある場合は早めの行動が求められると考えられます。
除斥期間は、当事者間で支払いを猶予する合意をしたとしても、期間の進行自体を止める効果は生じにくいと理解されています。相続人との話し合いが長引きそうな場合には、まず期限内に家庭裁判所への申立てを行っておき、その後も話し合いを継続するといった対応が現実的な選択肢になることもあるようです。
相続開始の事実を知らないまま1年が経過したとしても、原則として請求権自体が失われる点は変わらないと理解されています。長らく疎遠だった被相続人の相続に関わる可能性がある場合には、日頃から相続関係の状況を把握しておくことも一つの備えになりそうです。
除斥期間が迫っている場合には、内容証明郵便で請求の意思を明確にしておくことも、実務上の対応として検討されることがあるようです。
除斥期間の管理にあたっては、カレンダーへの登録やリマインダーの設定など、日常的に使い慣れたツールを活用して、期限を見落とさないよう工夫しておくことも実務上の工夫の一つと考えられます。
特別寄与料と相続税の関係
特別寄与料を受け取った特別寄与者には、相続税の課税関係が生じるとされている点も見落とせないポイントです。税法上、特別寄与料は被相続人から遺贈によって取得したものとみなして相続税の課税対象に含める取り扱いがなされているとされています。
特別寄与者はもともと相続人ではないため、通常の遺産分割とは別枠で相続税の申告義務が生じることになると考えられます。特別寄与料を受け取ったこと自体に気づかずに申告が漏れてしまうと、後日、加算税などの負担が生じる可能性もあるため、特別寄与料を受け取った場合には早めに専門家へ相談することが望ましいとされています。
さらに、相続税額の計算にあたっては、被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人が財産を取得した場合に相続税額が2割加算される制度が設けられているとされています。特別寄与者の続柄によっては、この2割加算の対象になる可能性がある点にも注意が必要です。
また、特別寄与者は相続人ではないため、遺産分割協議の内容や基礎控除額の計算そのものに直接関わる立場ではないと整理されています。もっとも、特別寄与料として金銭を取得する以上、相続税の申告書には、通常の相続人とは別の欄で特別寄与料に係る事項を記載する必要があるとされ、申告書の作成にあたっては注意深い確認が求められそうです。
特別寄与料に関する相続税の申告実務は、比較的新しい取り扱いであることもあり、事案ごとに細かな確認が必要になる場面が少なくないとされています。特別寄与者が複数の相続人からそれぞれ異なる時期に金銭を受け取ったような場合には、受け取った時期や金額を整理したうえで、申告内容に漏れがないかを確認しておくことが望ましいと考えられます。
また、特別寄与料の額が最終的に確定するまでの間、相続人・特別寄与者のいずれの立場であっても、申告や納税のスケジュールに影響が及ぶ可能性があります。関係者間で情報を共有しながら、税務上の手続きを進めていくことが重要になりそうです。
特別寄与料をめぐる税務上の取り扱いは、今後の実務の蓄積によって、より具体的な指針が整理されていく可能性もあるとされています。現時点では個別の事案ごとに慎重な確認が求められる分野であるという前提で、専門家に相談しながら進めることが望ましいと考えられます。
相続税に関する取り扱いは税制改正によって変更される可能性もあるため、実際に特別寄与料を受け取る見込みがある場合には、その時点での最新の制度内容を専門家に確認しておくことが望ましいと考えられます。
相続税の課税対象になること
特別寄与料は、法律上は相続人に対する金銭請求権という形をとりますが、税務上は被相続人から取得した財産とみなされ、相続税の課税対象に含まれるとされています。特別寄与料を受け取ったにもかかわらず、遺産分割とは無関係だと考えて申告の必要性に気づかないケースもあり得るため、注意が必要と考えられます。
特別寄与者は、被相続人の相続人や受遺者とは異なり、通常は相続開始の時点で直ちに相続税の申告義務が生じるわけではなく、特別寄与料の額が確定したことを知った日の翌日から10か月以内に申告を行うこととされています。金額が確定するまでは申告の起算点自体が到来しないと整理されているため、確定時期を見誤らないよう注意が必要と考えられます。
合意書には、特別寄与料の金額や支払期限のほか、分割払いとする場合の各回の金額や支払方法、遅延した場合の対応なども記載しておくと、後日の認識の食い違いを防ぎやすくなると考えられます。可能であれば、専門家に内容を確認してもらったうえで取り交わすことが望ましいとされています。
特別寄与料を受け取った後は、確定申告とは別に相続税の申告が必要になる場合がある点を、あらためて意識しておくことが大切と考えられます。
特別寄与料を受け取った時点で使い道を決めてしまう前に、まず税負担がどの程度生じるのかを把握しておくことが、資金計画を立てるうえでも重要になると考えられます。
二割加算の対象になる可能性
相続税額の2割加算は、被相続人からみて一親等の血族及び配偶者以外の人が財産を取得した場合に適用されるとされています。息子の妻のような立場は一親等の血族にも配偶者にも該当しないため、特別寄与料についても2割加算の対象になり得ると考えられ、想定していたよりも税負担が大きくなる可能性がある点は理解しておく必要がありそうです。
この2割加算は、孫が養子縁組によって相続人となった場合や、兄弟姉妹が相続人となった場合など、他の立場についても問題になることがある制度とされています。特別寄与料に限らず、相続財産を取得する人の続柄によって税負担が変わり得るという点は、あわせて理解しておくとよいかもしれません。
合意にあたっては、相続人全員の関与状況も確認しておく必要があるとされています。一部の相続人とだけ合意をしても、他の相続人との関係では請求権が残ったままになる可能性があるため、対象となる相続人全員との関係を整理しておくことが望ましいと考えられます。
2割加算の有無によって手取り額が大きく変わることもあるため、事前に専門家へ試算を依頼しておくことが安心につながると考えられます。
特別寄与料を支払う相続人側の税務上の取り扱い
特別寄与料は、これを支払う相続人の側にも税務上の影響を及ぼすとされています。相続人が特別寄与者に対して特別寄与料を支払った場合、その金額は、相続人が取得した相続財産の価額から控除できる取り扱いがなされているとされています。
この控除の考え方は、実質的に債務控除に近い性質を持つものと整理されることが多いようです。特別寄与料の負担が確定した相続人は、自身が取得した相続財産の価額から、実際に負担することになった特別寄与料の額を差し引いて相続税額を計算することになると考えられます。
もっとも、特別寄与料の金額や負担割合が確定する時期は、遺産分割協議の状況や、家庭裁判所の判断が必要になるかどうかによってまちまちであるとされています。当初の相続税申告の時点で金額が確定していない場合には、後から修正申告や更正の請求といった手続きが必要になることもあり得るため、申告期限との関係にも注意が必要です。
相続人が複数いる場合の負担割合についても留意が必要とされています。特に取り決めがなければ、各相続人が法定相続分に応じて特別寄与料を負担することが基本になると整理されているようですが、遺産分割協議の中で負担割合について別段の合意をすることも考えられます。誰がどの割合で負担するのかによって、各相続人の相続税額の計算結果も変わってくるため、早い段階で認識をそろえておくことが望ましいと考えられます。
相続人が特別寄与料を分割で支払う旨を合意した場合の税務上の取り扱いについても、一括で支払った場合と異なる点がないか、個別に確認しておくことが望ましいとされています。支払いの時期や方法によって、控除できる時期や金額の考え方が変わってくる可能性もあるため、合意内容を書面化する際には、こうした点もあわせて専門家に確認しておくと安心につながると考えられます。
相続人の一部だけが特別寄与料の支払いに応じ、他の相続人が争っているようなケースでは、負担額が確定するまでの間、関係者全員の申告や納税に影響が及ぶ可能性もあるとされています。こうした場合には、できるだけ早期に解決を図ることが、全体の手続きを円滑に進めるうえでも望ましいと考えられます。
相続人自身が特別寄与者としての立場を兼ねることは制度上想定されていませんが、相続人の配偶者や子など、身近な親族が特別寄与者となる場面は今後も一定数生じ得ると考えられます。相続人としても、こうした立場の親族がいないかどうかを、早い段階で確認しておくことが望ましいといえそうです。
相続人側としても、特別寄与料の負担が生じる可能性をあらかじめ想定しておくことで、遺産分割協議や納税資金の準備を計画的に進めやすくなると考えられます。想定外の負担が申告直前に判明するという事態は、できるだけ避けたいところです。
相続税の計算上の取り扱い
特別寄与料を負担することになった相続人は、その負担額を自らが取得した相続財産の価額から控除して相続税を計算する取り扱いになるとされています。相続人が複数いる場合には、各相続人がそれぞれ実際に負担した金額に応じて控除を行うことになると考えられ、負担割合をあらかじめ明確にしておくことが望ましいといえそうです。
なお、この控除は個々の相続人が取得した財産の価額を計算する際に反映されるものであり、相続税の基礎控除額そのものを変動させるものではないとされています。基礎控除額はあくまで法定相続人の数によって決まる仕組みであり、特別寄与料の存在によって基礎控除額が増減することはないと整理しておくとよさそうです。
家庭裁判所への申立てにあたっては、貢献の内容や期間を裏付ける資料をできるだけ整理したうえで提出することが望ましいとされています。資料が十分に整っていない段階でも、まずは専門家に相談し、どのような資料を追加で準備すべきかを確認しておくとよいと考えられます。
控除の適用を受けるためには、特別寄与料の支払いを裏付ける書類を保管しておくことが、申告時の説明を容易にすると考えられます。
控除の対象となる金額が複数年にまたがって支払われるようなケースでは、各年の負担額をどのように扱うかについても、あらかじめ専門家に確認しておくと、後の申告作業がスムーズになると考えられます。
申告期限との関係で注意したい点
相続税の申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内とされていますが、特別寄与料の協議や家庭裁判所の手続きがこの期限内に終わらないことも想定されます。金額が確定しないまま申告期限を迎える場合には、いったん見込みで申告したうえで、金額確定後に修正申告や更正の請求を行うといった対応が必要になる場合があるとされ、早めに専門家へ相談しておくことが望ましいと考えられます。
特別寄与料の負担が未確定であることが、小規模宅地等の特例のように申告期限までの遺産分割の状況が関係してくる他の特例の適用可否に影響を与えるかどうかについても、事案ごとに個別の確認が必要になると考えられます。特別寄与料と他の税務上の論点が絡み合う場面では、全体を見渡した検討が欠かせないといえそうです。
審判の結果に不服がある場合には、即時抗告といった不服申立ての手段が用意されているとされていますが、手続きにはさらに時間を要することになります。見通しを立てにくい部分もあるため、早期の相談を通じて全体のスケジュール感を把握しておくことが望ましいと考えられます。
申告期限に間に合わない可能性がある場合には、早めに所轄の税務署や専門家に相談し、取り得る対応を確認しておくことが望ましいと考えられます。
特別寄与料をめぐる実務上の注意点
特別寄与料は、相続人でない親族の貢献に光を当てる制度として設けられたものですが、実際の請求にあたってはいくつかの実務上の課題があるとされています。まず、貢献の内容や程度を客観的に証明することが容易ではないという点が挙げられます。長期間にわたる介護であっても、記録が残っていなければ、その実態を後から示すことが難しくなる可能性があります。
また、相続人との関係性によっては、特別寄与料の請求そのものが、相続人間、あるいは特別寄与者と相続人との関係を悪化させる要因になり得るという指摘もあるようです。金銭の請求という形をとる以上、感情的な対立につながりやすい面があることは踏まえておく必要があるかもしれません。
こうした課題を踏まえると、特別寄与料の請求に頼るのではなく、生前の段階で貢献に報いる方法を検討しておくという選択肢も考えられます。たとえば、被相続人が遺言によって特定の人に財産を遺す旨を定めておく、あるいは生前贈与を活用するといった方法が、代替的な手段として挙げられることがあります。
被相続人自身が、日頃から介護等を担ってくれている親族の存在を認識している場合には、家族間であらかじめ話し合いの機会を持ち、将来の財産の分け方についての考えを共有しておくことも、後々のトラブルを防ぐうえで有効な場合があるとされています。特別寄与料という制度があること自体を、家族の中で早めに知っておくことにも一定の意味がありそうです。
特別寄与料の制度そのものを知らないまま相続手続きが進んでしまい、後になって請求できる立場だったことに気づくというケースも起こり得るとされています。相続が発生した際には、相続人だけでなく、介護や看護に尽力してきた親族がいないかどうかを、早い段階で確認しておくことが、制度を適切に活用するうえで欠かせないと考えられます。
家族の状況は一様ではなく、誰がどの程度の負担を担ってきたかについての受け止め方も、相続人と特別寄与者との間で異なることが少なくないとされています。感情的な行き違いを避けるためにも、まずは事実関係を客観的に整理したうえで、専門家を交えて冷静に話し合いを進めることが望ましいと考えられます。
制度の趣旨を踏まえると、特別寄与料はあくまで最終的な救済手段として位置づけられているとみることもできそうです。日頃から家族間で介護や貢献に対する感謝の気持ちを言葉や形にして伝え合い、率直な対話を重ねておくことが、こうした制度に頼らずに済む円満な相続につながる土台になるとも考えられます。
生前にできる対策との比較
特別寄与料はあくまで相続開始後に請求する制度であり、金額が確定するまでには時間や手間がかかる可能性があります。これに対して、被相続人が生前に遺言を作成し、貢献してくれた親族に財産を遺す旨を明記しておけば、相続開始後の請求という手続きを経ずに、意向を反映させやすくなると考えられます。生前贈与を組み合わせる方法も選択肢の一つとされています。
遺言を作成する際には、財産を遺す理由をあわせて付言事項として記しておくことで、他の相続人の理解を得やすくなる場合があるといわれています。また、生命保険の受取人を貢献してくれた親族に指定しておくといった方法も、特別寄与料に頼らずに感謝の意を示す手段として検討されることがあるようです。
相続開始の事実をすぐに知り得ない事情がある場合、たとえば疎遠だった被相続人の訃報を後から人づてに知ったようなケースでは、いつの時点を起算点とすべきかが実務上の論点になることもあるとされています。こうした特殊な事情がある場合には、早めに専門家へ確認しておくと安心につながると考えられます。
生前対策を検討する際には、特別寄与料の存在を前提としたうえで、遺言の内容が実情に即したものになっているかを見直すことも一案と考えられます。
専門家へ相談するタイミング
特別寄与料の請求を検討する場合には、請求期限が比較的短く設定されていることもあり、被相続人が亡くなった後、できるだけ早い段階で専門家に相談しておくことが望ましいと考えられます。相続税の申告との関係を含めて全体像を整理しておくことで、期限内に必要な対応を取りやすくなると考えられます。
特別寄与料をめぐる論点は、請求できるかどうかという法律面の判断と、相続税の申告にどう反映させるかという税務面の判断の両方にまたがっているとされています。状況に応じて、法律面と税務面のそれぞれの専門家と連携しながら進めていくことが、結果的にスムーズな解決につながりやすいと考えられます。
相続人の側で、特別寄与者からの請求を受ける可能性を認識している場合には、6か月・1年という期限を踏まえて、いたずらに話し合いを引き延ばすことのないよう配慮することも、円滑な解決につながる要素の一つと考えられます。
相談先を決めかねる場合には、まず身近な専門家に全体像を相談し、必要に応じて他の専門家を紹介してもらうという進め方も現実的と考えられます。
複数の専門家に相談する際には、それぞれから得た情報に食い違いがないかを確認しながら、全体として一貫した方針を組み立てていくことが望ましいと考えられます。