[池袋] 胎児は相続人になれる?出生前の相続手続きと申告期限の注意点
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query_builder 2026/09/13 相続税

相続人となるはずの人がまだお腹の中にいるという場面は、決して珍しいものではないと考えられます。たとえば、夫が亡くなった時点で妻が妊娠しているようなケースや、被相続人の子がすでに亡くなっており、その配偶者が妊娠しているようなケースでは、相続税の申告や遺産分割をどのように進めればよいのか、通常の相続とは異なる悩みが生じやすいとされています。

この記事では、胎児の相続権に関する基本的な考え方から、遺言や代襲相続における胎児の扱い、出生を待つ間の遺産分割協議の進め方、相続税の基礎控除や申告期限との関係、出生後に必要となる遺産分割協議や相続放棄の実務、そして万一死産だった場合の見直しまで、実務上の注意点を順を追って整理していきます。相続人の中に胎児がいるかどうかで、その後の手続きの進め方が大きく変わってくる可能性があるため、家族の状況に照らしながら参考にしていただければと思います。

妊娠・出産という家族にとって大きな出来事と、相続という手続きが同じ時期に重なることで、精神的にも実務的にも負担が大きくなりやすい場面だと考えられます。落ち着いて一つずつ手続きを整理できるよう、あらかじめ全体像を把握しておくことが大切だと考えられます。

特に、被相続人の子がすでに複数いる状態でさらに胎児がいるケースや、被相続人の子が先に亡くなっており、その配偶者が胎児を身ごもっている代襲相続のケースなど、家族構成によって検討すべきポイントが変わってくる点にも注意が必要だと考えられます。

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胎児にも相続権が認められる基本的な考え方

相続が発生した時点で、まだ生まれていない子どもがいるという場面では、その子を相続人としてどう扱うかが問題になります。通常、私法上の権利義務の主体となる資格(権利能力)は出生によって初めて認められるとされていますが、民法では、相続に関する場面に限って、胎児について特別な扱いを定めているといわれています。

具体的には、民法第886条第1項において、胎児は相続については既に生まれたものとみなすと規定されているとされています。つまり、まだ出生していない段階であっても、その子は相続人としての地位を有するものとして扱われるということです。相続開始のタイミングがたまたま出生の前だったというだけで、その子が相続人になれないという結果は避けられていると考えられます。

この考え方の背景には、まもなく生まれてくるはずの子どもを相続人の範囲から除外してしまうと、その子にとって著しく不利益な結果になりかねないという配慮があるとされています。生まれるタイミングが数日違うだけで相続人になれるかどうかが左右されるのは不合理だという考え方が、この規定の根底にあるといわれています。

たとえば、被相続人に配偶者と、すでに生まれている子ども、そしてお腹の中の子どもがいるという家族構成であれば、法定相続分を考える上では、お腹の中の子どもも他の子どもと同じ立場の相続人として扱われることになると考えられます。相続人の人数が想定より1人多くなることで、各相続人の取得割合や、後で説明する相続税額の計算も変わってくると考えられます。

相続人の範囲や法定相続分を確定させる作業は、遺産分割や相続税の計算の出発点になるとされています。この土台の部分に胎児が関わってくると、通常の相続とは異なる進め方が必要になる可能性が高くなるため、家族の中に胎児がいることが分かった段階で、早めに全体の流れを把握しておくことが望ましいと考えられます。

なお、ここでいう胎児とは、法律上、相続開始の時点においてすでに母体内に存在していた子を指すと考えられており、相続開始後に新たに生じた妊娠については、この特別な扱いの対象にはならないと考えられます。相続開始の時期と妊娠の時期の前後関係を確認しておくことも、実務上のポイントの一つだといえそうです。

また、胎児は出生前の段階では戸籍にその存在が記載されるわけではないため、相続関係を書面上で確認する際には、母子健康手帳や医療機関の証明など、妊娠の事実を裏付ける資料をあわせて確認しておく必要が生じる場合があると考えられます。相続関係説明図を作成する際にも、胎児の存在をどのように記載するかについて、実務上の工夫が必要になることがあるといわれています。

被相続人が生前に、お腹の中の子の存在を知っていたかどうかにかかわらず、相続開始時点で懐胎していた事実があれば、胎児としての取り扱いを受けると考えられます。そのため、相続人の範囲を確定させる作業では、戸籍上明らかな家族関係だけでなく、妊娠の有無についても早い段階で確認しておくことが望ましいといえそうです。

実務上、相続人の調査は被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めることから始めるのが一般的だとされていますが、胎児の存在は戸籍だけからは分からないという点に注意が必要だと考えられます。配偶者や子など、身近な家族から直接状況を確認する作業が、胎児が関わる相続では特に重要になると考えられます。

「既に生まれたものとみなす」とはどういう意味か

「既に生まれたものとみなす」という表現は、胎児が生きて生まれてくることを前提として、相続開始の時点にさかのぼって相続人としての権利を認めるという意味だと理解されています。学説上は、こうした考え方が、出生という事実の成就を条件として権利能力を認める、停止条件付きの権利能力として説明されることが多いとされています。

そのため、胎児が実際に生まれるまでの間は、相続人としての権利義務を自ら行使することはできないと考えられており、出生という事実が確定して初めて、相続開始時にさかのぼって相続人としての地位が確定するという整理が一般的なようです。この間、胎児のために誰かが代わりに権利を行使できるかという点についても、慎重な検討が必要になると考えられます。

なお、胎児に関するこうした特別な扱いは、相続以外の場面、たとえば不法行為に基づく損害賠償請求権などについても民法上定められているとされていますが、この記事では相続・相続税の場面に絞って解説していきます。

死産だった場合はどう扱われるか

民法第886条第2項では、胎児が死体で生まれたときは、前項の「既に生まれたものとみなす」という扱いは適用されないと定められているとされています。つまり、残念ながら死産となってしまった場合には、その胎児は相続人ではなかったことになると考えられます。

この点は、相続税の申告内容や遺産分割の前提にも影響する可能性があるため、出生の有無・時期を戸籍等で確認しておくことが実務上重要になると考えられます。特に、胎児がいることを前提に他の相続人の取得割合や税額を試算していた場合には、その前提が変わることになるため、詳しくは後の項目で改めて取り上げます。

医療機関から発行される死産証書や死胎検案書といった書類は、その後の戸籍の手続きや相続関係の確認において重要な資料になると考えられます。つらい状況の中ではありますが、こうした書類は大切に保管しておくことが望ましいといえそうです。

遺言による遺贈や代襲相続でも胎児は同様に扱われる

胎児が「既に生まれたものとみなされる」場面は、法定相続だけにとどまらないとされています。遺言によって財産を譲り受ける「遺贈」や、本来相続人となるはずだった人が先に亡くなっている場合の「代襲相続」でも、胎児が同じように考慮される場面があるといわれています。相続人の範囲を考える際には、こうした周辺の制度についてもあわせて確認しておくことが望ましいと考えられます。

民法第965条は、受遺者(遺言によって財産を受け取る人)について、胎児に関する第886条の規定を準用すると定めているとされています。これにより、遺言者が胎児を受遺者として指定していた場合、遺言の効力が生じた時点で胎児であっても、その後生きて生まれれば遺贈を受けられると考えられます。遺言の中で「生まれてくる孫に財産を譲る」といった趣旨の記載があるケースなどが想定されます。

また、民法第887条第2項が定める代襲相続についても、代襲の原因となる出来事が生じた後、相続開始の時までに生まれた子(その時点では胎児であった子)は、代襲相続人になり得ると整理されているとされています。つまり、本来相続人となるはずだった親がすでに亡くなっている場合に、その親の子として生まれてくる胎児も、代襲相続人としての地位を持ち得るということです。

たとえば、被相続人の子がすでに亡くなっており、その子の配偶者が妊娠しているという状況であれば、生まれてくる孫にあたる子が代襲相続人になり得ると考えられます。世代をまたいで胎児が関わってくるケースでは、相続人の範囲がより複雑になりやすいため、戸籍関係を丁寧に確認する作業が一段と重要になると考えられます。

このような世代をまたぐケースでは、被相続人の他の子(叔父・叔母にあたる立場の人)との関係にも配慮が必要になると考えられます。代襲相続人となる胎児がいることで、当初想定していた相続人の顔ぶれや取得割合が変わってくる可能性があるため、早い段階で関係者間の認識をすり合わせておくことが望ましいといえそうです。

このように、胎児をめぐる特別な扱いは、通常の法定相続の場面に限らず、遺言や代襲相続が関係するケースにも及ぶと考えられるため、家族構成や遺言の有無によっては、想定より広い範囲で胎児の存在を考慮する必要が生じることがあると考えられます。相続関係を確認する際は、遺言書の有無や内容もあわせて早めにチェックしておくことが望ましいといえそうです。

特に遺言が残されている場合には、遺言者がどこまで胎児の存在を想定して内容を作成していたかによって、解釈の余地が生じることもあると考えられます。遺言書に具体的な氏名の記載がなく「生まれてくる子」といった表現にとどまっている場合には、対象となる子の範囲を確認する作業が必要になることもあるといわれています。

遺贈や代襲相続が絡む場面では、法定相続だけのケースに比べて、相続人の確定作業や税額計算がより複雑になりやすい傾向があると考えられます。こうしたケースでは、戸籍関係の確認や遺言内容の解釈も含めて、早い段階から専門家に相談しておくことで、後になって前提が崩れるリスクを減らせると考えられます。

遺言執行者が指定されている場合には、胎児が関わる遺贈の扱いについても、遺言執行者と他の相続人との間で早めに情報を共有しておくことが望ましいと考えられます。出生の時期によって遺言の実行手順が変わってくる可能性もあるため、あらかじめ想定される流れを確認しておくと安心につながると考えられます。

遺言・遺贈における胎児の受遺者としての地位

遺言者が特定の人に財産を遺贈する内容の遺言を残していた場合、その対象者が胎児であっても、遺言の効力発生時に存在していれば受遺者になり得ると考えられています。実務上は、遺言書の文言や作成時の事情から、胎児を対象に含める意図があったかどうかを慎重に確認する必要があるとされています。

遺贈の内容が相続税の課税価格の計算にも影響するため、胎児が受遺者に含まれる可能性がある場合は、遺言書の内容とあわせて早めに専門家に確認しておくことが望ましいといえそうです。遺贈と法定相続分に基づく取得とでは、適用される非課税規定や税額計算の考え方が異なる場合もあると考えられます。

遺言者が胎児の存在を認識した上で遺言を作成していたのか、それとも遺言作成後に妊娠が判明したのかによっても、遺言の解釈をめぐる状況は変わってくると考えられます。作成時期と妊娠の時期を突き合わせて確認しておくことが、後のトラブルを避ける上で役立つと考えられます。

遺言書が公正証書によるものか自筆証書によるものかによっても、内容の確認や執行の進め方が変わってくると考えられます。いずれの形式であっても、胎児が関係する条項がある場合には、他の相続人との間で早めに内容を共有しておくことが望ましいといえそうです。

代襲相続人としての胎児の位置づけ

代襲相続が問題になる場面では、被代襲者(本来相続人となるはずだった人)がいつ亡くなったか、代襲原因がいつ発生したかという時系列の整理が重要になるとされています。その上で、相続開始の時点までに生まれた子(それ以前は胎児であった子)であれば、代襲相続人としての地位を持ち得ると考えられます。

代襲相続の可否によって法定相続人の数や各相続人の取得割合が変わってくるため、家族関係が複雑なケースでは、戸籍関係を丁寧にたどりながら相続人の範囲を確定させる作業が特に重要になると考えられます。世代が一つ下がることで、基礎控除や取得割合の計算も変わってくる点に注意が必要だといえそうです。

代襲相続人となる胎児がいるケースでは、被代襲者であった親のさらに親(被相続人から見た配偶者など)との関係もあわせて整理しておく必要があると考えられます。世代をまたぐ相続関係は、通常の相続よりも確認すべき戸籍の範囲が広がりやすいと考えられます。

代襲相続では、被代襲者の法定相続分をそのまま代襲者が引き継ぐという考え方が基本になっているとされています。胎児が単独の代襲相続人であれば被代襲者の相続分をそのまま、複数の代襲者がいれば人数に応じて按分することになると考えられます。

胎児がいる間は遺産分割協議を進めにくい

相続人の中に胎児が含まれる場合、遺産分割協議をいつ行うかという点が実務上の悩みどころになるとされています。遺産分割協議は、相続人全員が参加して合意する必要があるとされており、一部の相続人を除外して行った協議は、後になって効力が問題になり得ると考えられています。

胎児は出生前の段階では自ら意思表示を行うことができないため、協議に参加させることは事実上できないと考えられます。かといって、胎児を除外したまま他の相続人だけで遺産分割協議を成立させてしまうと、後日その効力が問題になる可能性があるといわれています。財産の名義変更などの手続きを進めた後になって協議のやり直しが必要になれば、相続人全員にとって大きな負担になりかねないと考えられます。

学説上は、胎児をどう扱うかについて、胎児を除外して協議を進める考え方や、胎児のために何らかの形で参加を認める考え方、そもそも胎児がいる間は分割そのものを控えるべきだという考え方など、複数の見方があるとされています。もっとも実務上は、こうした理論上の対立を避け、出生を待ってから遺産分割協議を行うという対応が一般的だとされています。

こうした考え方の違いが生じる背景には、胎児の権利をどこまで実質的に保護するべきかという価値判断の違いがあるとされています。実務上は、後から協議の有効性が問題になるリスクを避けるという観点からも、出生を待つという安全な選択が採られやすいと考えられます。

出生までの期間は、遺産は相続人全員(胎児を含む)の共有状態にあるものとして扱われると考えられます。そのため、預貯金の払戻しや不動産の処分など、遺産分割の結果を前提とする手続きについては、出生後まで待つか、相続人全員の同意が得られる範囲にとどめておくことが望ましいと考えられます。共有の状態が続く間は、財産の管理や処分について相続人間で慎重にすり合わせておく必要があると考えられます。

出生までの期間が数か月にわたることも珍しくないため、その間に必要となる当面の生活費や葬儀費用の支払いなどについては、遺産分割前の預貯金の払戻し制度など、遺産分割協議を経なくても対応できる別の制度の利用を検討することも一つの方法だと考えられます。こうした制度をあわせて把握しておくことで、出生を待つ間の資金面の不安を和らげられる場合があると考えられます。

また、遺産分割協議そのものは出生を待つとしても、その間に相続財産の内容を整理し、財産目録を作成しておくといった準備を進めておくことは可能だと考えられます。出生後にスムーズに協議へ移れるよう、あらかじめ財産の全体像を家族間で共有しておくことが望ましいといえそうです。

不動産の相続登記についても、遺産分割協議が成立するまでは、法定相続分に応じた共有名義での登記にとどめておくか、あるいは登記自体を出生後まで見送るといった選択肢が考えられます。相続登記の義務化に伴う期限についても、胎児がいることを理由に当然に猶予されるわけではないと考えられるため、あわせて確認しておくことが望ましいといえそうです。

賃貸物件や事業用資産など、日常的な管理判断が必要になる財産が含まれている場合には、遺産分割が確定するまでの間、誰がどのように管理を行うのかについても、相続人間であらかじめ取り決めておくことが望ましいと考えられます。共有状態が長引くほど、意思決定に全員の関与が必要になる場面が増えると考えられます。

なぜ出生前の遺産分割協議は難しいとされるのか

胎児には意思能力がなく、法律行為を単独で行うことはできないと考えられています。かといって、出生前の胎児のために法定代理人を選任できるかどうかについては、実務上慎重な見方が多いとされています。出生という不確定な事実を前提に、誰が胎児の利益を代弁するのかという点自体が明確でないためだと考えられます。

このように、出生前の段階では胎児の利益を代弁する立場を確定させにくいことから、無理に遺産分割協議を進めるのではなく、出生を待つという対応が選ばれることが多いと考えられます。出生を待つことは、結果として胎児の利益を守ることにもつながる対応だと考えられます。

出生を待たずに手続きを進めた場合のリスク

相続人全員の合意が必要な遺産分割協議において、本来含まれるべき胎児(出生後の子)を欠いたまま協議を成立させてしまうと、後日その協議の有効性が争われる可能性があるとされています。

不動産の名義変更や預貯金の解約など、遺産分割の内容を前提とした各種手続きについても、やり直しが必要になる場合があると考えられるため、胎児がいることが分かっている場合は、慎重に手続きの時期を検討することが望ましいといえそうです。

金融機関や法務局の窓口でも、相続人の中に胎児が含まれていることが分かれば、出生を待つよう案内されるケースが多いと考えられます。窓口での手続きを急ぐよりも、まずは出生を待つという方針を家族内で共有しておくことが望ましいといえそうです。

相続税の基礎控除と胎児の関係

相続税には基礎控除という仕組みがあり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算された金額までは、相続税がかからないとされています。この計算式に登場する「法定相続人の数」に胎児を含めるかどうかは、実務上悩みやすいポイントの一つだと考えられます。

胎児が生きて生まれてくれば、相続人の数が1人増えることになるため、基礎控除額もその分増えると考えられます。相続人が増えることで、法定相続分に応じた按分計算や、生命保険金・死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)にも影響が及ぶ可能性があるとされています。基礎控除だけでなく、非課税枠の計算にも同じ考え方が及んでくる点は見落としやすいポイントだと考えられます。

また、法定相続人の数は、相続税の総額を計算する際の累進税率の適用区分にも関わってくると考えられます。相続人が1人増えるだけで、各相続人が取得したとみなされる金額の水準が変わり、結果として相続税の総額そのものが変わることもあると考えられます。

このように、胎児の存在は基礎控除額だけでなく、非課税枠や税額全体の計算にまで影響が及ぶ可能性があるため、家族の中に胎児がいることが分かった段階で、概算でよいので相続税額への影響を試算しておくと、その後の見通しを立てやすくなると考えられます。財産の内容や相続人の構成によっては、胎児を含めるかどうかで税額が大きく変わることもあると考えられます。

もっとも、相続税の申告書を提出する時点で胎児がまだ生まれていない場合には、後述するとおり、その時点では胎児がいないものとして申告するという考え方が基本になっているとされています。出生前後で基礎控除額の考え方が変わり得る点は、あらかじめ理解しておく必要があると考えられます。

たとえば、相続人が配偶者と子2人という家族構成であれば、法定相続人の数は3人となり、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円になると考えられます。ここにお腹の中の子が加わって法定相続人の数が4人になれば、基礎控除額は3,000万円+600万円×4人=5,400万円となり、差額は600万円になると考えられます。このように、胎児1人の存在によって基礎控除額が数百万円単位で変わり得ることが分かります。

遺産の総額が基礎控除額の前後にあるようなケースでは、胎児を含めるかどうかで、そもそも相続税の申告や納税が必要かどうかという結論そのものが変わってくることもあると考えられます。財産の規模が基礎控除額に近い家庭ほど、胎児の存在が税額に与える影響は大きくなりやすいと考えられます。

同様に、生命保険金や死亡退職金の非課税枠についても、法定相続人の数が1人増えることで、それぞれ500万円分ずつ非課税枠が広がる方向に働くと考えられます。相続財産の中に生命保険金や死亡退職金が含まれている家庭では、この点も含めて税額への影響を確認しておくことが望ましいといえそうです。

相続税の総額は、法定相続人が法定相続分どおりに財産を取得したと仮定して各相続人の取得金額を算出し、それぞれに累進税率を当てはめて合計するという方法で計算されると考えられます。法定相続人の数が変われば、この仮定上の取得金額の水準も変わるため、基礎控除額の増減以上に、税率の適用区分を通じて税額全体に影響が及ぶこともあると考えられます。

「法定相続人の数」に胎児はどう影響するか

胎児が出生した後であれば、その子は当然に法定相続人の数に含まれると考えられます。相続人の数が増えることは、基礎控除額や非課税枠が広がる方向に働くため、相続税額全体にも影響が及ぶ可能性があるとされています。

一方で、出生前の段階でどのように扱うかについては、申告のタイミングによって考え方が分かれる部分があるとされているため、次の項目とあわせて整理しておく必要があると考えられます。相続人の数え方一つで、他の相続人が納める税額の水準が変わってくる点にも注意が必要だと考えられます。

養子がいる場合の法定相続人の数え方など、他の特殊な事情とあわせて胎児が関係してくるケースでは、計算がより複雑になりやすいと考えられます。複数の要素が重なる場合には、早めに専門家に試算を依頼しておくことが望ましいといえそうです。

出生前に申告期限が到来する場合の考え方

相続税の申告期限までに胎児が生まれていない場合には、その胎児がまだ存在しないものとして相続税の申告書を作成することになると考えられています。つまり、法定相続人の数にも、その時点では算入しない扱いになるとされています。

この場合、出生後に相続人となる子を含めて計算し直すと税額が変わる可能性があるため、出生後の手続きについてもあらかじめ見通しを立てておくことが望ましいと考えられます。申告時点と出生後とで前提が変わり得ることを、家族全員があらかじめ理解しておくことが望ましいといえそうです。

相続税の申告期限と胎児の出生を待つ場合の特例

相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があるとされています。胎児がいるからといって、この10か月という期間そのものが当然に延びるわけではないと考えられます。

出産の予定時期と相続税の申告期限がおおむね近い時期になることも少なくないと考えられます。妊娠が判明してから出産までの期間はおおむね10か月前後とされており、相続開始のタイミングによっては、申告期限とほぼ同じ頃に出産を迎える家庭も多いと考えられます。それでも、出産予定日が遅れるなどして、申告期限までに胎児が生まれないという事態も起こり得ると考えられます。

このような場合の取り扱いについては、一定の配慮がなされているとされています。基本的な考え方としては、申告期限までに胎児が出生していないときは、その胎児がいないものとして相続税の申告書を提出することになるとされています。つまり、申告期限が到来した時点での家族の状態を基準に、いったん申告と納税を行うという考え方が採られていると考えられます。

その上で、仮に胎児が生まれたものとして課税価格や税額を計算した場合に、相続や遺贈により財産を取得したすべての人について申告義務がなくなるようなケースでは、胎児以外の相続人などについて、胎児が生まれた日の後2か月の範囲内で申告期限の延長が認められる場合があるとされています。この特例は、あくまで胎児以外の相続人等の申告期限に関するものであり、生まれてくる子自身の申告義務とは切り分けて考える必要があると考えられます。

この延長の特例に該当するかどうかは、胎児を含めて計算した場合の課税価格や基礎控除額の水準によって左右されると考えられるため、財産の規模がそれほど大きくなく、胎児を1人加えることで申告義務そのものがなくなりそうなケースでは、早めにこの特例の適用可能性を確認しておくことが望ましいといえそうです。

一方で、財産の規模が大きく、胎児を1人加えて基礎控除額を増やしても、なお申告義務が残るようなケースでは、この期限延長の特例には該当しないと考えられます。この場合は、原則どおり申告期限までに、胎児がいないものとした内容でいったん申告と納税を済ませる必要があると考えられます。

このように、胎児がいる場合の申告期限の取り扱いは一律ではなく、財産の規模や相続人の構成によって結論が変わり得ると考えられます。相続開始後、なるべく早い段階で、胎児を含めた場合と含めない場合の両方について概算の税額を試算しておくと、期限が近づいてから慌てずに済むと考えられます。

申告期限が近づいてから慌てて対応するのではなく、出産予定日と申告期限の前後関係を早い段階で把握しておくことが重要だと考えられます。出産予定日が申告期限よりもかなり後になりそうな場合には、期限延長の特例が使えるかどうかをあらかじめ確認しておくと、見通しを立てやすくなると考えられます。

原則は「胎児がいないもの」として申告を行う

申告期限までに胎児が生まれていない場合、実務上は、その胎児を法定相続人に含めない前提で相続税の申告書を作成するという考え方が基本になっているとされています。

この場合、いったん胎児を含めない内容で申告と納税を済ませておき、出生後に必要な手続きを改めて行うという流れになると考えられます。財産の内容によっては、いったん多めに納税しておき、後日の手続きで調整するという流れになる場合もあると考えられます。

この段階での申告書には、胎児を除いた相続人の構成に基づく法定相続分や取得財産の内容を記載することになると考えられます。出生後に内容が変わることを見越して、計算の根拠となる資料は分かりやすく整理して保管しておくことが望ましいといえそうです。

胎児を除いた前提で申告・納税を済ませた後は、出生や遺産分割協議の成立を待って、必要に応じて修正申告や更正の請求を行うという流れに自然につながっていくと考えられます。次の項目では、この出生後の手続きについてさらに詳しく見ていきます。

出生後2か月以内への申告期限延長が認められるケース

胎児がいることを前提に計算すると基礎控除額が増え、結果として他の相続人について申告義務そのものがなくなるような場合には、それらの相続人の申告期限を、胎児が生まれた日の後2か月の範囲内で延長できる取り扱いがあるとされています。

この延長を受けるためには、税務署への申請などの手続きが必要になると考えられるため、該当する可能性がある場合は早めに専門家へ相談しておくことが望ましいといえそうです。申請のタイミングを逃さないよう、出産予定日が近づいてきた段階で一度確認しておくと安心につながると考えられます。

出生後に必要となる遺産分割協議と相続放棄の実務

胎児が無事に生まれると、その子は相続開始時にさかのぼって相続人としての地位を持つことになると考えられます。もっとも、生まれたばかりの子ども自身が遺産分割協議に参加して意思表示をすることはできないため、代わりに手続きを進める人が必要になるとされています。

通常、親権者である母(または父)が子を代理して法律行為を行うことになりますが、遺産分割協議のように、親権者自身も相続人であるケースでは、親権者と子の利益が対立する「利益相反」の状態になり得ると考えられます。親権者が自分に有利な内容で協議をまとめてしまうおそれがあるため、こうした場面ではそのまま親権者に代理させることが適切でないと考えられているようです。

このような利益相反が生じる場合には、親権者がそのまま子を代理して遺産分割協議を行うことはできず、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があるとされています。子どもが複数いる場合には、それぞれの子について別々の特別代理人を選任する必要が生じることもあると考えられます。

遺産分割協議だけでなく、相続放棄を検討する場面でも同様の利益相反が問題になり得ると考えられます。たとえば、母親自身は相続を承認しつつ、生まれた子については借金などの負債を引き継がせたくないという理由で相続放棄をさせたい場合、母親と子の利益が対立するとして、やはり特別代理人の選任が必要になるとされています。

被相続人にプラスの財産だけでなく借入金などのマイナスの財産もあるケースでは、生まれてくる子に負債を引き継がせることになってよいのかどうかを、出生前からある程度検討しておく必要があると考えられます。財産と負債の全体像を把握しておくことが、出生後の判断をスムーズにする助けになると考えられます。

一方で、母親自身も含めて相続人全員が同じように相続放棄をする場合には、利益が対立する場面とはいえないため、母親が法定代理人としてそのまま子の相続放棄の手続きを進められると考えられるケースもあるといわれています。いずれに該当するかは個々の事情によって異なるため、負債の状況や他の相続人の意向もあわせて、慎重な見極めが必要だと考えられます。

出生後の手続きは、遺産分割協議、相続放棄、そして相続税の申告や納税と、いくつもの手続きが短い期間に重なりやすいと考えられます。それぞれの手続きに関わる期限や必要書類が異なるため、出生前の段階から、出生後にどのような順番で手続きを進めるのかをある程度イメージしておくと、実際に子が生まれてから慌てずに対応しやすくなると考えられます。

特別代理人の候補者をあらかじめ検討しておくことも、実務上有効な準備の一つだと考えられます。親族の中から中立的な立場の人を選ぶケースもあれば、専門家に依頼するケースもあると考えられ、出生後の手続きをスムーズに進めるためには、こうした準備を出生前から少しずつ進めておくことが望ましいといえそうです。

特別代理人の候補となる人自身が相続人でないことや、他の相続人と過度に近い立場でないことなど、家庭裁判所が確認するポイントについても、事前にある程度把握しておくと、申立ての準備が進めやすくなると考えられます。候補者選びに迷う場合には、専門家に相談しながら検討するのも一つの方法だといえそうです。

こうした準備を進めておくことで、実際に子が生まれてからは、母子の健康状態にも配慮しながら、無理のないペースで手続きを進めやすくなると考えられます。手続きを急ぐあまり、産後間もない時期に大きな負担をかけてしまわないよう、家族全体で進め方を調整していくことが望ましいといえそうです。

親権者と子の利益相反はなぜ問題になるのか

遺産分割協議では、誰がどの財産を取得するかについて、相続人同士の利害が対立する場面が少なくないと考えられます。親権者自身も相続人である場合、子の取り分を減らして自分の取り分を増やすような内容で協議を成立させてしまう可能性が否定できないとされています。

このような事態を防ぐため、親権者と子の利益が対立し得る場面では、親権者に代わって子の利益を守る立場の人を選任する仕組みが設けられていると考えられます。特別代理人の選任は、子の住所地を管轄する家庭裁判所への申立てによって行うとされており、遺産分割協議書の案などをあわせて提出するのが一般的だといわれています。申立てから選任までには一定の期間を要すると考えられるため、余裕を持って準備を進めることが望ましいといえそうです。

生まれた子自身の相続放棄と熟慮期間

相続放棄をするかどうかを判断するための期間(熟慮期間)は、原則として自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内とされています。生まれたばかりの子については、出生した日を基準として、そこから3か月というのが基本的な考え方になっているとされています。

つまり、被相続人が亡くなった時点ではなく、子が実際に生まれた時点を起点として、あらためて3か月の期間が計算されると考えられます。負債の状況によっては相続放棄を検討する必要も出てくるため、出生後は早めに財産や負債の状況を確認しておくことが望ましいといえそうです。

相続放棄の手続きは、子の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出して行うとされています。他の相続人がすでに相続放棄をしているかどうかによって、生まれた子が相続人となる範囲も変わってくると考えられるため、家族全体の状況を踏まえて判断する必要があると考えられます。

相続放棄をするかどうかの判断には、被相続人の財産と負債の全体像を正確に把握することが欠かせないと考えられます。出生後、限られた期間の中で判断を迫られることになるため、出生前の段階からある程度の調査を進めておくと、いざというときに落ち着いて判断しやすくなると考えられます。

出生後の修正申告・更正の請求の実務

胎児がいないものとしていったん相続税の申告を済ませていた場合、出生後には、その内容を見直す手続きが必要になることがあると考えられます。具体的には、税額が不足していた場合には修正申告、逆に納めすぎになっていた場合には更正の請求という手続きが想定されます。

また、未分割の状態で法定相続分に従って申告していたケースでは、出生後に遺産分割協議が成立した時点で、その内容にあわせて各相続人の相続税額を計算し直す必要が生じると考えられます。分割の結果によって配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、各種特例の適用の有無が変わることもあるとされています。

更正の請求については、原則として遺産の分割が行われた日の翌日から4か月以内に行う必要があるとされているため、期限の管理には注意が必要だと考えられます。出生や遺産分割の成立といった出来事が重なる時期は、家族にとって慌ただしい時期でもあるため、手続きの期限を見落とさないよう、あらかじめスケジュールを整理しておくことが望ましいと考えられます。

更正の請求は、当初の申告内容を減額修正する手続きであるのに対し、修正申告は増額修正を自主的に行う手続きだと整理されています。出生後の状況によっては、一部の財産については更正の請求、別の財産については修正申告が必要になるといったように、複数の手続きが同時に必要になる場合もあると考えられます。

特に、当初申告の時点で「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出していたかどうかによって、後から配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けられるかどうかが変わってくる場合があると考えられます。未分割のまま申告する見込みがある場合には、この書類の提出も含めて、当初申告の段階から出生後の見通しを織り込んでおくことが望ましいといえそうです。

小規模宅地等の特例は、遺産が未分割のままでは原則として適用を受けられないとされており、出生を待って遺産分割協議を成立させた後に、更正の請求を通じて適用を受けるという流れになることが多いと考えられます。特例の適用を前提に将来の税額を見込んでいる場合には、分割が確定するまでの間はあくまで見込みの数字であるという点を踏まえておく必要があると考えられます。

出生と遺産分割協議の成立が同時期に重なることも多いと考えられますが、それぞれの手続きに設けられた期限は別々に管理する必要があると考えられます。どの手続きがいつまでに必要になるのか、家族だけで抱え込まずに専門家と一緒にスケジュールを組み立てておくと、抜け漏れを防ぎやすくなると考えられます。

なお、当初申告の際にすでに納めていた税額と、出生後に確定した内容に基づく税額との差額によっては、延滞税や加算税といった負担が生じる可能性も考えられます。もっとも、こうした附帯税の要否は個別の事情によって判断が分かれる部分もあるとされているため、心配な場合は早めに専門家に確認しておくことが望ましいといえそうです。

修正申告や更正の請求にあたっては、当初申告で使用した財産評価の資料や、遺産分割協議書、戸籍関係の書類などを改めて整理し直す必要があると考えられます。出生前後で書類の整理方法を分けて管理しておくと、後から見直す際の手間を減らせると考えられます。

税額が変わる場合の修正申告・更正の請求

出生前の申告内容と、出生後の実際の相続人構成や遺産分割の結果とを比較して、納めるべき税額が増える場合には修正申告、減る場合には更正の請求を行うという整理が基本になっていると考えられます。

どちらの手続きが必要になるかは個々の事情によって異なるため、出生や遺産分割協議の成立といった節目ごとに、専門家に確認しておくことが望ましいといえそうです。当初申告で用いた資料と、出生後の状況を照らし合わせながら、差分を丁寧に確認していく作業が必要になると考えられます。

遺産分割確定後の更正の請求と期限管理

いったん法定相続分で申告していた後に遺産分割協議が成立した場合、その分割内容に基づいて更正の請求を行うことで、各種特例の適用を受けられるようになるケースがあるとされています。

この更正の請求には期限が設けられているとされているため、出生後に遺産分割協議を行う際は、成立した日付を明確に記録し、期限内に手続きを行えるよう準備しておくことが重要だと考えられます。

更正の請求が認められると、当初納めていた税額の一部が還付される場合があると考えられます。手続きには相応の時間がかかることも想定されるため、期限ぎりぎりではなく、遺産分割協議が成立した時点でなるべく早く着手することが望ましいといえそうです。

更正の請求書には、遺産分割協議書の写しなど、分割内容を裏付ける書類をあわせて添付する必要があると考えられます。出生後に特別代理人を交えて成立させた協議書は、後の更正の請求でも重要な資料になるため、大切に保管しておくことが望ましいといえそうです。

死産だった場合の見直しと実務上の総合的な注意点

残念ながら胎児が死産となってしまった場合、民法第886条第2項の規定により、その胎児は相続については既に生まれたものとみなすという扱いを受けないことになると考えられます。つまり、その子は相続人ではなかったことになるとされています。

すでに胎児がいるものとして相続税の申告や遺産分割の準備を進めていた場合には、相続人の範囲や法定相続分が変わることになるため、内容の見直しが必要になると考えられます。具体的には、法定相続人の数が変わることで基礎控除額や非課税枠の計算が変わり、結果として各相続人の税額にも影響が及ぶ可能性があるとされています。納めすぎとなっていた場合には更正の請求、不足していた場合には修正申告のいずれが必要になるかを個別に検討する必要があるといわれています。

死産という事実が判明する時期によっては、すでに出生を前提とした遺産分割協議が成立していたり、相続税の申告を済ませていたりするケースもあり得ると考えられます。こうした場合には、いつの時点にさかのぼって内容を見直す必要があるのかを、個々の事情に沿って慎重に整理する必要があると考えられます。

また、胎児の存在を前提に遺産分割の話し合いをすでに進めていた場合や、胎児を受遺者とする遺言が残されていた場合には、死産という事実によって、その前提そのものが崩れることになると考えられます。話し合いの内容や遺言の解釈をあらためて見直す必要が生じる可能性もあるといえそうです。

このように、相続人の中に胎児が含まれるケースは、通常の相続手続きに比べて考慮すべき事項が多くなる傾向があるとされています。相続税の申告期限は原則として変わらない一方で、遺産分割協議は出生を待つのが一般的とされており、両者のスケジュールをどう整合させるかが実務上の課題になると考えられます。加えて、相続放棄や代襲相続、遺贈といった周辺の制度にも胎児が関わってくる可能性があるため、全体像を把握した上で手続きを進めることが望ましいと考えられます。

相続人に胎児がいることが分かった時点、そして実際に出生や死産といった結果が判明した時点は、いずれも相続税の申告や遺産分割の進め方を見直す節目になると考えられます。それぞれの段階で早めに専門家へ相談し、必要な手続きや期限を確認しながら、デリケートな家族の事情にも配慮して進めていくことが望ましいといえそうです。

ここまで見てきたように、胎児がいる相続では、民法上の相続人としての地位の確認から、遺産分割協議や相続放棄における代理の問題、相続税の基礎控除・申告期限の特例、そして出生後や死産の場合の修正申告・更正の請求まで、通常の相続よりも多くの段階を踏む必要が生じる可能性があると考えられます。一つひとつの段階を整理しながら、抜け漏れのないように進めていくことが大切だといえそうです。

また、こうした手続きの多くは、法律面の判断と税務面の判断の両方が絡み合っていると考えられます。遺産分割や特別代理人の選任といった法律面の手続きと、相続税の申告や更正の請求といった税務面の手続きとで、相談先が分かれることもあると考えられるため、双方の専門家が連携して対応できる体制を整えておくと、手続き全体がスムーズに進みやすくなると考えられます。

死産により相続人の範囲が変わることの影響

死産となった場合、その子を相続人に含めない前提で、改めて相続人の範囲や法定相続分を確定させる必要があると考えられます。相続人の数が変わることで、基礎控除額や各相続人の取得割合の計算もやり直しが必要になるとされています。

特に、胎児がいることを前提に遺産分割の話し合いを進めていた場合には、協議の内容そのものを見直す必要が生じる可能性もあると考えられます。代襲相続が関係するケースでは、相続人の範囲そのものが変わってしまうこともあると考えられます。

遺贈の対象として胎児が指定されていた場合には、死産により遺贈の効力そのものが生じなかったことになると考えられます。その結果、当該財産は遺言の他の条項や法定相続分に従って扱われることになると考えられ、関係者間で認識をすり合わせておく必要があると考えられます。

代襲相続人となるはずだった胎児が死産だった場合も同様に、その世代の代襲相続人がいなかったことになると考えられます。相続人の範囲がさかのぼって変わることになるため、他の親族を含めて相続人の再確認が必要になる場合もあると考えられます。

このように死産が判明した後の見直し作業は、財産面だけでなく相続人の構成そのものに及ぶことがあるため、通常の修正申告や更正の請求よりも確認事項が多くなりやすいと考えられます。手続きを一つずつ丁寧に進めていくことが望ましいといえそうです。

家族間での情報共有と記録を残すことの大切さ

胎児の出生予定日や、実際に生まれた日、死産であった場合の事実関係などは、その後の相続税申告や更正の請求の期限計算に直接関わってくると考えられます。これらの情報は、戸籍謄本などの書類とあわせて、家族間で正確に共有しておくことが望ましいとされています。

また、遺産分割協議書や特別代理人選任の申立て書類など、手続きの過程で作成した書類は、後日の税務手続きでも必要になる場合があるため、大切に保管しておくことが望ましいと考えられます。

家族の誰か一人だけが情報を抱え込むのではなく、他の相続人ともあわせて状況を共有しておくことで、後になって「聞いていなかった」といった行き違いを防ぎやすくなると考えられます。専門家に相談する際も、こうした記録が整理されていると、状況の説明や確認がスムーズに進みやすいと考えられます。

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